
学者は平気でウソをつく
792円(税込)
発売日:2016/02/17
- 新書
- 電子書籍あり
臓器を診て患者を診ない医者、金持ちばかり味方する経済学者、教育現場を知らない教育学者、何にでもコメントする社会学者……。信じる者は、バカを見る!
学者の言うことを、真に受けてはいけない。データの改竄や人為的ミスがなくても、「画期的な発見」の大半はのちに覆される運命にあるのだから――。医学、教育学、経済学等々、あらゆる学問の「常識」を疑い、学問との上手な距離の取り方を模索する。学問という名の宗教に振り回されず、正しい選択をして生きるために必要な思考法と、健全な猜疑心の持ち方とは? 「学者のウソ」をメッタ切りにする、痛快な一冊!
書誌情報
読み仮名 | ガクシャハヘイキデウソヲツク |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610654-5 |
C-CODE | 0247 |
整理番号 | 654 |
ジャンル | 社会学 |
定価 | 792円 |
電子書籍 価格 | 792円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/05/27 |
蘊蓄倉庫
1990年代に脳ブームがはじまって以来、日本のマスコミには脳科学者という肩書の人が大勢登場しています。けれども、きちんと実験を行って脳のハードを研究している、本当の意味での脳科学の専門家が、その中にどれだけいるかは疑問だ、と著者は言います。
彼らの中には、心理学はいかがわしいもので、脳科学こそが科学であるかのように言う人がいます。ただし、心理学は歴史も古く、実験件数も多いため、再現性がある理論がほとんどです。なかでも実験心理学は、実験結果が命。
一方、脳科学は仮説の学問です。生きている人間の脳を解剖することは倫理的にできず、PETなどの画像を用いた実験も費用がかかりすぎるため、大規模なデータ収集はできていません。つまり、データに基づいている分だけ心理学の方が“科学的”と言えるのです。
なお、脳のソフトについていま最先端の研究をしているとされているのが「認知科学」。心の働きと脳の働きを情報科学の方法論を用いて明らかにしていくもので、いわば脳のプログラムを解き明かそうという学問です。
テレビで脳科学者を名乗っている人でも、話の内容はほとんどこの認知科学であることが珍しくないとか。それでも脳科学だと言うのは、今のところ、日本ではそのほうがありがたがられるからだろう、というのが著者の見立てです。
担当編集者のひとこと
学者は宿命的にウソをつく
本書でいう「学者のウソ」には、大きく分けて二種類あります。
ひとつは、データの改竄や研究不正などの意図的なウソ。事実と異なるという意味では、悪意のないミスも(不正の意図がなかったとすれば、割烹着のリケジョによる「世紀の大発見」も)、ここに含んでいいでしょう。
そしてもうひとつは、発表された時点では一流学術誌に掲載されたような「画期的な研究」です。著者によれば、そうした学説の8割くらいは新たな発見によって否定される、すなわちウソになる、と言います。すべての学問は発展途上にあり、その意味において、学者はウソをつく宿命にあるわけです。
そんな学問を、それが学問だという理由だけでありがたがっていると損をする、というのが本書の主題です。健康について、お金について、私たちのごく身近なところにも、学者のウソは潜んでいます。そうした誤った「常識」を正しく疑い、可能な限りの情報を集めて自己責任で判断し、必要とあらば潔く方向転換する――。著者は、そんな姿勢を提唱しています。
2016/02/25
著者プロフィール
和田秀樹
ワダ・ヒデキ
1960年生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、高齢者専門の精神科医。著書に『80歳の壁』など多数。