違和感の正体
858円(税込)
発売日:2016/05/16
- 新書
- 電子書籍あり
国会前デモ、反知性主義批判、道徳教育、安心・安全――。「正義」のカラ騒ぎ! 瞠目の本格社会評論。
メディアや知識人によって語られる今どきの「正義」、何かがおかしい。どうも共感できない。デモ、教育、時代閉塞、平和、震災など、現代日本のトピックスをめぐり、偉大な思想家たち――網野善彦、福澤諭吉、吉本隆明、高坂正堯、江藤淳――らの考察をテコに、そんな「違和感」の正体を解き明かす。善悪判断の基準となる「ものさし不在」で、騒々しいばかりに「処方箋を焦る社会」へ、憂国の論考。
後序/主要参考文献
書誌情報
読み仮名 | イワカンノショウタイ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610667-5 |
C-CODE | 0210 |
整理番号 | 667 |
ジャンル | 社会学、ノンフィクション |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 792円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/06/17 |
蘊蓄倉庫
本書の結びに、「人は秩序を取り戻そうとする生き物」という言葉があります。5年前の大震災を思い起こせば、家庭も職場も社会も、大なり小なりその通りでした。戦後日本に大きな影響を与えた政治学者・丸山眞男は、一九一七年のロシア革命が成功したのは、水道や電気、交通など社会インフラが普及していなかったからで、革命であれ戦争や災害であれ、平時を持続させたいという文明人の欲望はもはやとどめようがない、と説いています(片山杜秀『国の死に方』より)。災害のたびに繰り返される被災関連のニュースが、非常時からたちまち平時を基準とした内容になるのも、その一端なのかもしれません。
担当編集者のひとこと
批評の復権
平和を守れ、安心・安全な社会を――こうしたスローガンに異を唱えるのは難しいものです。しかし問題は、戦争も天災も人間社会から消え去ったことがないという現実です。だからこそ、誰も否定しようのない「正義」を叫ぶのではなく、「できることなら」という前提から、様々な現実とどう向き合えばいいかを考え抜く。それが本書の目的です。
著者はかつて福島第一原発の事故を受け、避難生活を余儀なくされました。喪失感を抱きながらも、秩序を取り戻そうとする生活と思索から紡ぎ出された8編の論考は、いずれも議論の本質を突く迫力にあふれています。自らの「違和感」に躓きながら、先人の思想をひもとき、時代への処方箋を見出そうとする批評家の登場です。
2016/05/25
著者プロフィール
先崎彰容
センザキ・アキナカ
1975年、東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒。東北大学大学院文学研究科博士課程を修了、フランス社会科学高等研究院に留学。2024年5月現在、日本大学危機管理学部教授。専門は倫理学、思想史。主な著書に『ナショナリズムの復権』『違和感の正体』『未完の西郷隆盛』『維新と敗戦』『バッシング論』『国家の尊厳』などがある。