人間の経済
836円(税込)
発売日:2017/04/15
- 新書
- 電子書籍あり
経済思想の巨人、未来へのラスト・メッセージ。
富を求めるのは、道を聞くため――それが、経済学者として終生変わらない姿勢だった。「自由」と「利益」を求めて暴走する市場原理主義の歴史的背景をひもとき、人間社会の営みに不可欠な医療や教育から、都市と農村、自然環境にいたるまで、「社会的共通資本」をめぐって縦横に語る。人間と経済のあるべき関係を追求し続けた経済思想の巨人が、自らの軌跡とともに語った、未来へのラスト・メッセージ。
「レールム・ノヴァルム」
東西冷戦の立役者
モンペルラン・ソサエティ
ミルトン・フリードマン
選択する自由
シカゴ大学事件
市場原理主義の蔓延
リーマン・ショックの本質
ケインズ=ベヴァリッジの時代
ベヴァリッジ報告書
医療と乗数効果
NHSの難局
Kill-RatioとDeath-Ratio
人生は短し、医術は長し
日本の医療危機の構図
社会的自由ということ
福沢諭吉の信念
ジョン・デューイの教育哲学
私の学校計画
ヴェブレンの『大学論』
大学の作られ方
「種馬」と「敵」
『好きになる数学入門』への思い
「環境」と「経済」の関係
エネルギー消費大国の横暴
排出権取引の反倫理性
近代文明から自然の摂理へ
生物多様性
私と農村の思い出
空海の満濃池
経済は人間のために
富を求めるのは道を聞くため
書誌情報
読み仮名 | ニンゲンノケイザイ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610713-9 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 713 |
ジャンル | ビジネス・経済 |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 792円 |
電子書籍 配信開始日 | 2017/04/21 |
薀蓄倉庫
数十年後も読まれるロングセラー
1960年代の日本では、自動車の普及とともに交通事故が激増。ピークの1970年には年間事故死者数が1万6000人(近年は4000人前後で推移)を超え、「交通戦争」として社会問題になりました。1974年刊行の『自動車の社会的費用』は、交通事故による人的損失や公害、道路の建設維持コストなどを多角的に分析した名著で、今なお版を重ねています。
国内外に数多い教え子の一人、経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏は、「ヒロ(宇沢氏)の話は30年後ぐらいにわかる」と評していたそうですが、自然環境への負荷に加えてドライバーの高齢化やインフラの老朽化が社会問題となる昨今、それだけ射程の長いテーマと向き合っていたことを物語っています。
掲載:2017年4月25日
担当編集者のひとこと
「富を求めるのは、道を聞くため」
公害や成田闘争など戦後経済の「負」の部分と向き合い続けた著者は、高度成長のプランナーだったエコノミスト・下村治氏と並んで「陽の下村、陰の宇沢」とも称されました。最晩年までTPP反対の先頭に立つなど、学究と行動を兼ね備えた経済学者として多くの著作をのこしましたが、鋭い論理と熱のこもった文章には独特の魅力があります。
そんな著者にインタビューを重ねたのは、リーマン・ショックさめやらぬ2009年から翌年にかけてのこと。しばしばお酒を交えてのユーモアたっぷりの話しぶりは、何時間向き合っていても飽きない、これまた不思議な魅力がありました。
出来上がった原稿の校訂に取り掛かっていた2011年、東日本大震災の直後に病に倒れ、2014年秋に他界。本書の刊行まで少し間があきましたが、世界的に経済も政治も混迷する時代、氏の経済思想はいっそう重要な意味を持っているように思います。
「富を求めるのは、道を聞くため」――人間社会の未来へ込めたラストメッセージです。
2017/04/25
著者プロフィール
宇沢弘文
ウザワ・ヒロフミ
(1928-2014)1928年鳥取県生まれ。経済学者。東京大学理学部数学科卒。シカゴ大学や東京大学などで教鞭をとる。主な著書に『自動車の社会的費用』『社会的共通資本』『地球温暖化を考える』『宇沢弘文著作集』(いずれも岩波書店)など。1997年に文化勲章受章。2014年に他界。