米韓同盟消滅
858円(税込)
発売日:2018/10/17
- 新書
- 電子書籍あり
アメリカ激怒! 韓国の本音は「南北共同の核保有」だ。半島情勢「先読みのプロ」が隣国の実情を冷徹に診断。
北京・天安門上で自ら望んで独裁者に囲まれた朴槿恵。人権無視の北朝鮮の核開発を幇助する文在寅。二人の大統領に共通するのは、国際情勢を自国の都合で手前勝手に解釈した、国力に見合わない「妄想外交」だ。反米反日自我肥大を昂進させている韓国の「中二病」的世論の支持を得ても、その帰結は「米韓同盟の消滅」と「中国の属国」への回帰に他ならない――。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。
書誌情報
読み仮名 | ベイカンドウメイショウメツ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610785-6 |
C-CODE | 0222 |
整理番号 | 785 |
ジャンル | 政治・社会、政治・社会 |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 814円 |
電子書籍 配信開始日 | 2018/10/26 |
蘊蓄倉庫
韓国でも使う「中二病」
韓国ではしばしば、日本で流行りの言葉を輸入して使うことがありますが、「中二病」という表現も定着しています。念のために言っておくと、「中二病」とは中学二年生前後の背伸びしがちな言動や全能感、自我肥大などの症状を指します。韓国は国民国家として青年期にある、と見ている保守系新聞の記者が、最近の熱に浮かされたような韓国の世論を「中二病」と形容しています。
掲載:2018年10月26日
担当編集者のひとこと
韓国は北朝鮮の非核化を望んでいない
今年は米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢が大きく動きました。本書の著者は、こうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって、実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解きます。
2017年、米国には北朝鮮の非核化と米韓同盟の解体を引き替えようと考えるトランプ大統領が登場しました。同じ年に韓国にも、この同盟が諸悪の根源と考える文在寅大統領が登場。米韓両国の思惑は一致しました。
これは偶然ではありません。21世紀に入った頃から韓国では、中国の台頭を受け「中国を敵とするな」「外交は米中等距離で行け」が常識になりました。2015年には北京の天安門で当時の朴槿恵大統領が「抗日戦争勝利70周年」のパレードを「独裁者」たちに囲まれて鑑賞したりもしました。韓国では、「北朝鮮の同胞と仲良く出来るのに、軍を駐屯させたい米国が邪魔をしている」との認識や、反米的な世論が強くなっています。
実際、各種の世論調査で米国に対する信頼感の低下、中国や北朝鮮に対する信頼感の増加が観測されています。今年4月、文在寅大統領と金正恩委員長が初めて会談した際、北朝鮮を信頼していた人の比率は、「会談前」の14・7%が「会談後」には64・7%(!)に急増しています(本書41頁、世論調査会社「リアルメーター」の数字)。
また、少し前ですが、2014年3月の峨山政策研究院の韓国人の意識調査では、「韓米同盟よりも中国との関係強化」と考える人の比率が31・7%、「中国との関係よりも韓米同盟」と考える人が53・4%と、「いい勝負」と言えるところまで来ています。
韓国が中国も北朝鮮も敵にしないなら米韓同盟の存在意義はない。米国も韓国世論の変質には気づいています。同盟を失った韓国は中立を唱えるでしょうが、実際には中国の属国へと回帰していく可能性が極めて高い。そうなると、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになるのです。
韓国が「西側」にいることが常識となっている人にとっては、「米韓同盟消滅」など考えにくいでしょうが、本書では他にも、綿密な韓国観察に基づいて驚くような「独自の見方」を披瀝している箇所が多々あります。
例えば、本書では「韓国は北朝鮮の核開発を幇助している」「韓国の本音は南北共同の核保有だ」との見方を紹介しています。
韓国は2020年からミサイル潜水艦を順次配備していく予定になっています。これは、「北朝鮮の核ミサイル潜水艦を沈めるため」と説明されたりしますが、本当かどうかは疑わしい。対潜能力を向上したいなら原潜よりも水上艦艇の整備の方が有効だからです。
また、ミサイル潜水艦の推進力に原子力を使う構想もあります。原潜は通常動力型と比べて長時間の潜行が可能です。敵の先制攻撃を受けて、核ミサイルで反撃するには格好の兵器。実際、原潜を持つ国はすべて核保有国なのです。
保守派はともかく、現在の文在寅政権を支える左派は、北の核が「南を向いている」とは思っていない。むしろ、これから配備される原潜に北の核ミサイルを搭載すれば立派な「民族和解」の所作になる、と思っているフシがある。そう考えれば、金正恩委員長から何の具体的な提案も引き出していない文在寅大統領が「金委員長はトラスト・ミーと言っていた」などと、国際社会に空証文を披瀝して見せるのも納得できるのです。
著者の鈴置さんは長年、日経ビジネスオンラインで「早読み 深読み 朝鮮半島」を連載されています。その時々の朝鮮半島情勢を「身もフタもない筆致」で描く同連載を、私もずっと愛読していました。「いつかは原稿を書いて貰いたいな」と思っていたのですが、ご自身の本はずっと日経BPから出し続けておられたので、「入りこむ余地なしかな」と思っていたところ、今年の三月に日経新聞を退社されたとのことで、新潮社からの出版が可能となりました。ありがたいことです。
朝鮮半島が中立化して中国の属国になるにせよ、南北共同で核保有して「自立」を目指すにせよ、そうした変化は日本にも計り知れない影響を及ぼします。ここに記した見方に、「本当か?」「そんなことがありうるか?」「トンデモ説じゃね?」と思う方も多いと思いますが、長年韓国を観察し、その国民と世論の動向を知り尽くした著者の描く隣国の姿を、とくとご覧頂きたいと思います。
2018/10/26
著者プロフィール
鈴置高史
スズオキ・タカブミ
1954(昭和29)年愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員、香港特派員、経済解説部長などを歴任し2018年に退社。2002年、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書に『米韓同盟消滅』など多数。