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「承認欲求」の呪縛

太田肇/著

902円(税込)

発売日:2019/02/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

「認められたい」が破滅を招く! パワハラ、隠蔽、過労死……不幸への転落を防ぐ画期的提言。

SNSで「いいね!」をもらうことに全身全霊を傾けてしまう人がいる。職場で表彰されたために「もっとがんばらねば」と力んでしまい、心身を蝕(むしば)む人がいる。エリートであるがゆえにプレッシャーを感じて、身を滅ぼした人もいる……すべての原因は「承認欲求」の呪縛だった。誰しもがもつ欲求の本質を深く探り、上手にコントロールする画期的な方法を示す。人間関係の向上や組織での成果アップに変換するヒントが詰まった一冊。

目次
まえがき
第一章 「承認欲求」最強説
一 人は認められると、これだけ変わる
一輪の花が新人を変えた/実証された承認の効果/[内発的モチベーションのアップ]/[自己効力感の向上]/[評価・処遇への満足]/[勉強への関心と不安]/[成績の向上]/[離職の抑制]/[その他の効果]
二 承認欲求が最強の理由
「承認欲求は最強」という声/承認欲求はなぜ最強か
三 「病」の前兆
認められるためのストーリーづくり/「健全」な家庭の不幸/認められるため本能的にリスクを冒す/ほんとうの「大病」はもっと先に
第二章 認められたら危ない
一 「認められたい」が「認められねば」に変わるとき
MVPが次々と離職/「ホメホメ詐欺」になぜだまされる?/SNSも気づいたら「承認依存」に/学生の三人に一人が「呪縛」を経験/場合によっては叱るより、ほめるほうが危険/「承認欲求の呪縛」をもたらす期待/「慣れたらプレッシャーは克服できる」はウソ/もがけばもがくほど深みにはまる「アリ地獄」/ジンクスの裏にプレッシャーあり
二 認められた人の不幸
「夢の実現」の次に待っている修羅場/「勝って当然」の重圧と闘った高梨沙羅、稀勢の里/清原和博の栄光と挫折/亀田大毅、キャラを演じたがゆえの転落/演じているキャラが一人歩きする怖さ/ミシュラン三つ星がもたらした悲劇/だれでも、いったん得た評価は手放せない
三 なぜ承認にとらわれるのか
承認を失うと、やる気、自信が消え、成績も下がる/失うときの価値は、得るときの価値より何倍も大きい/助けを求めるくらいなら、いじめられるほうがマシ/「大事な試合の前に故障」は正常な自己防衛/若者に嫌われる「期待しているよ」/メダリストを苦しめた「走れメロス」の心境/有名人、成功者は別世界の人か?
第三章 パワハラ、隠蔽、過労死……「呪縛」の不幸な結末
一 ブラックバイト、過労死……認められたゆえの悲劇
電通事件が残した教訓/過労死、過労自殺……共通する人物像とは/「働き方改革」が進まない理由/「呪縛」をもたらすのは制度に原因?/ブラックバイトの正体/「承認欲求の搾取」という問題/うつや「ひきこもり」に共通する特徴/「メランコリー親和型」うつと日本人/「燃え尽き」の背後にも承認への期待が/呪縛を引き起こす三つの要素
二 エリートを苦しめる三つの不幸
目立つ、高学歴社員の挫折/高止まりしている期待に応えられぬ自分/受験秀才を襲う「ハイパー・メリトクラシー」/期待を下げられぬエリートたち
三 エリートはこうして犯罪に走る
組織を隠れ蓑にした個人の犯罪/エリートによる犯罪の特徴/エリートの「大衆化」/広がる期待と能力のギャップ/エリートの自我を守る共同体型組織/森友・加計問題にあらわれた官僚の自尊心/企業不祥事は避けられた/「プレッシャーがあった」は言い訳?/事件になると自殺者がでる理由
四 管理のパラドックス―不祥事はなぜ繰り返されるのか?
スポーツ界、あいつぐ暴力・パワハラと「承認欲求の呪縛」/パワハラの陰に指導者の屈折した承認欲求が/日本型組織に巣くうハラスメント体質/なぜ、同種の不祥事が繰り返されるのか/強まる依存、薄れる責任感/共同体のなかでは機能しない内部通報制度
第四章 「承認欲求の呪縛」を解くカギは
一 「期待」に潰されやすい日本人
呪縛に陥りやすいのは、「日本の風土病」/プレッシャーからの逃げ場がない
二 期待の重荷を下ろすには
プレッシャーをかけないリーダーの配慮/「お前はバカだから」のねらい/後退するための「階段」をつける/お金でしがらみを断つ/「承認人」を前提に政策の転換を!/毒にも、薬にもなる賞金/希望降格制度の効用
三 自己効力感を高め、組織への依存を小さくするには
自己効力感を高めるのに不可欠な「異質性」/実力、業績を知るための正しいフィードバックを/効果的な「ほめ方」とは/フォロワーからの承認を引き出す仕組みも/成功体験+承認で成果をあげた中学校
四 問題を相対化するには
白鵬を楽にさせた王貞治からの助言/「失敗体験」の大切さ/連覇の重圧を克服する「楽しさ」――帝京大ラグビー部、岩出監督/「男性でないと……」「女性のほうが……」は錯覚/「もう一つの世界」をもつ/「SNS依存症」はリアルな世界で解決を/組織による囲い込みはむしろマイナスに
五 組織不祥事をなくすには
決め手は一人ひとりのプロ化/内部通報制度もプロなら使える/官僚や大企業社員をプロ集団に変えるには
あとがき
引用文献

書誌情報

読み仮名 ショウニンヨッキュウノジュバク
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-610800-6
C-CODE 0234
整理番号 800
ジャンル ビジネス・経済
定価 902円
電子書籍 価格 858円
電子書籍 配信開始日 2019/02/22

蘊蓄倉庫

「承認欲求」は善か悪か?

 仕事や生活のモチベーションともなる「承認欲求」が、時には、大きな社会問題を誘発することがあります。
 実際、SNSでの不適切動画から、隠蔽、不正、いじめ、うつ病、過労死・過労自殺、企業や役所での不祥事などを引き起こしています。
 そこで、あなたの「承認欲求」の危険度をチェックしてみましょう。
 以下のような症状がある人は、すぐに本書をお読みください。
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 □ 自分のSNSに、絶対「いいね!」が欲しい
 □ 周囲には嫌われたくない
 □ 仕事で「もっとがんばらねば」と思っている
 □ 職場での慣習がまず最優先である
 □「期待しているから」と言われ、満悦する
 □ 自分の個性をもっと尊重してほしい
 □ 職場でも家庭でも大きな責任を感じる
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「承認欲求」の処方箋は本書に示されています。

掲載:2019年2月25日

担当編集者のひとこと

不幸への転落を防ぐには

 SNSで拡散した不適切動画がニュースになったり、官庁、企業の隠蔽や不正、スポーツ界のパワハラ騒動などが次々と起きています。
 それらの悪因は「承認欲求」にあると、著者の太田肇氏は本書で述べています。
「承認欲求」は、誰にでもある「ほめられたい」「認められたい」という、仕事や生活でのモチベーションになる、人間にとって最強の欲求です。
 しかし、肥大化し、歪み、強迫的になると、「承認欲求の呪縛」にとらわれてしまい、取り返しのつかない事件やスキャンダルを引き起こしてしまうそうです。
 太田氏は、「組織と個人」や「承認欲求のメカニズム」を長年調査、研究してきた社会学者。この欲求を深く分析し、上手にコントロールすれば、組織の健全化、仕事の業績アップ、人間関係の向上、そして、組織の不祥事を防ぐことができるそうです。
 太田氏が特に力を注ぎ、全身全霊で書下ろされた本書について、「著者からの言葉」を以下に紹介します。

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<著者からの言葉>
 「承認欲求」は、人間の欲求のなかで最強だといっても過言ではありません。
 私は長年にわたり承認欲求の「光」の部分に注目し、それが人の成長を促しモチベーションや仕事の成果を高める原動力になっていることを企業、学校、病院等の実証研究で明らかにしてきました。
 ところが一方で、承認欲求には濃い「影」の部分が存在することにも気づいていました。こういうと多くの人は成人式での乱行や、SNSへの変態動画投稿などを連想するかもしれません。
 しかし、もっと深刻なのは、普通の人が無意識のうちにとらわれていく「承認欲求の呪縛」です。調べてみると子どもから大人まで、実に多くの人がこの呪縛に陥っていることが判明しました。認められたことがきっかけでウツや不登校になったり、欠勤・退職に追い込まれたりする例も少なくありません。さらに、それは個人の問題にとどまらず、組織や社会をも蝕みます。
 私がこの問題に強い危機感を抱き、世の中に警鐘を鳴らそうと思ったのは、昨今大きな社会問題になっている職場やスポーツ界のパワハラ、過労死・過労自殺、役所や大企業の組織的不祥事などがいずれも「承認欲求の呪縛」と深く関わっているとわかったからです。
 これらは特別な人たちだけが関係する問題ではなく、だれでも一定の条件がそろえば当事者になるリスクを抱えています。
 なぜわが国では「承認欲求の呪縛」が起きやすいのか、しかもますます深刻になっていくのか。呪縛が生じるメカニズムを明らかにするとともに、多くの事例を用いながら効果的な対策を示しました。
 人間の心のなかに潜む、承認欲求という巨大な“モンスター”。その正体を暴き、制御する術を論じたのが本書です。
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 ぜひ、ご一読をおすすめします。

2019/02/25

著者プロフィール

太田肇

オオタ・ハジメ

1954年兵庫県生まれ。同志社大学政策学部教授(大学院総合政策科学研究科教授を兼任)。経済学博士。専門は組織論、人事管理論、モチベーション論。個人を生かす組織・社会について研究。著作に『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)『同調圧力の正体』(PHP新書)など。

太田肇・公式ホームページ (外部リンク)

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