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フィンランドの教育はなぜ世界一なのか

岩竹美加子/著

902円(税込)

発売日:2019/06/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

テストも偏差値も受験もない。それで勉強ができるって、どういうこと!? その秘密、教えます。

人口約五五〇万人、小国ながらもPISA(一五歳児童の学習到達度国際比較)で、多分野において一位を獲得、近年は幸福度も世界一となったフィンランド。その教育を我が子に受けさせてみたら、入学式も、運動会も、テストも、制服も、部活も、偏差値もなかった。小学校から大学まで無償、シンプルで合理的な制度、人生観を育む独特の授業……AI時代に対応した理想的な教育の姿を示す。

目次
はじめに
世界一の教育はシンプルだった/ウェルビーイングという概念
第一章 フィンランドで親をやるのは楽だった
出産は手ぶら、ベビーカー連れは運賃無料/家族保育やベビーシッターの助け/朝食、昼食、おやつが出るフィンランドの保育園/東京の保育園は親が忙しい/保育園は生涯学習の一環/保育料の無償化、保育士の給与/女性の社会進出は70年代頃から/入学式はない/テストもない/服や髪についての校則はない/禁止された体罰/運動会やクラブ活動はない/教科書検定制度もない
第二章 フィンランド式「人生観」の授業と道徳
日本の「道徳」/「人生観の知識」という科目/価値と規範の意味/道徳(moral)と倫理(ethics)/道徳は発達する/どうやって、私はそれが正しいと判断できるか/子どもには様々な権利がある/12歳から始まる様々な権利/権利と義務=ルール/学校では法律が遵守される/思想と言論の自由、一人で解決できない時/知るとは何か/人はどう生きるべきか
第三章 フィンランドはいじめの予防を目指す
男児と女児では異なる、いじめの実態/キヴァ・コウル(KiVa Koulu)というプログラム/大人が言ってはいけない言葉/ネット上のいじめには、法律と警察も視野に入れてアドバイス/あなたは、一人ぼっちではない/いじめは関わり合いのスキルの問題/なぜいじめたのか/いじめは法的な問題/「道徳」でいじめはなくなるか
第四章 フィンランドの性教育
起点は自分の心身と向き合うこと/日本の義務教育では性交を教えない/愛すること、共に生きること/性暴力とは何か、起きた時の対処策/どう生きるかは、自分が決める/権力とお金が性を歪める/性教育は70年代から
第五章 フィンランドはこうして「考える力」を育てている
学習する義務はあるが、学校に行く義務はない/ホームスクールという選択/普通高校と職業学校/高校の時間割は自分で作る/舞踏会とパレード/全国一律ではない高校の卒業試験/高校卒業は一大イベント/大学と応用科学大学/親の経済力に関係なく高等教育が受けられる理由/無理がない学習ローンの返済/大学の仕組み/学生も大学の運営に参加/どうやって仕事をみつけるのか
第六章 フィンランドの「愛国」と兵役
兵役義務/愛国教育と独立の歴史/軍隊での生活/「兵士の誓い」/日当や諸手当/シビルサービスという選択肢/エホバの証人の兵役義務免除/トータルな拒否/女性の任意兵役/エリサベト・レーンという政治家/国防婦人組織ロッタ・スヴァールド/廃止と再評価/フェミニストの意見/北欧の兵役事情/国防の目的
第七章 フィンランドの親は学校とどう関わるのか
非加入を許されなかった日本のPTA/弁護士の必要性/フィンランドの保護者組織「親達の同盟」/加入率は10%程度/活動は強制ではなく「提言」/会費のある、なし/負担の軽い組織/前身は家庭養育協会/いじめ対策にも積極的/障がいのある子、移民の子らへの支援/子どもと親の声を聞く/行政に影響を与えるための活動/学校ストライキ/学校の役員会/登録と法人化/「子どものため」とは何か
第八章 フィンランドの母はなぜ叙勲されるのか
母の日が導入されたわけ/白軍と赤軍の溝/模範的な母に与えられる勲章
おわりに
主要参考文献等

書誌情報

読み仮名 フィンランドノキョウイクハナゼセカイイチナノカ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-610817-4
C-CODE 0237
整理番号 817
ジャンル 教育学、語学・教育
定価 902円
電子書籍 価格 858円
電子書籍 配信開始日 2019/06/21

蘊蓄倉庫

いじめ予防のプログラム

 フィンランドには、いじめとそのメカニズムに関する長年の実証的な研究に基づいた、キヴァ・コウルというプログラムがある。防止、介入、モニタリングの3つの段階を設けて、それぞれで何をすべきかを具体的に示している。いじめのない関係は、人間関係のスキルの一端として学ぶことができるという考えだ。
 いじめられた子どもに向かって、大人が言ってはいけない言葉として「私もいじめられたけど、特に悪い影響はなかった」「自分を守らなくちゃね」「いじめは精神や人格を鍛える」「あれはいじめではなく、遊びやからかい、ふざけだ」などがあげられ、法律と警察も視野に含めた対応の仕方もアドバイスされている。
 実際にフィンランドの学校ではいじめが減少していると報告され、現在はスウェーデン、イギリス、スペイン、ニュージーランドなど諸外国でも導入されている。

掲載:2019年6月25日

担当編集者のひとこと

ないないづくしの教育

 テストもない、受験もない、塾もない、それどころか入学式も、始業式も、運動会もないし、制服や、服装や髪型に関する校則、部活もない。教育費は、学費はもちろん給食費やノート代などもすべて無料。もちろんPTAもないし、教科書や教材は学校に置きっ放しでOK――これがPISA(15歳児童の学習到達度国際比較)で多分野において1位を獲得する、フィンランドの学校教育現場だと聞いた時は、日本人の多くは驚くのではないだろうか。だが英語に限らず語学教育やAIの導入はしっかりと行われており、性教育やいじめ問題にも真正面から取り組んでいる。そのフィンランドは2019年、幸福度においても2年連続で世界一となった。教育に必要なものって何だろう――親、学校現場のみならず、人が人を育てることの意味を考えるための必読書。

2019/06/25

著者プロフィール

岩竹美加子

イワタケ・ミカコ

1955(昭和30)年、東京都生まれ。早稲田大学客員准教授、ヘルシンキ大学教授を経て2019年6月現在、同大学非常勤教授(Dosentti)。ペンシルベニア大学大学院民俗学部博士課程修了。著書に『PTAという国家装置』、編訳書に『民俗学の政治性』等。

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