「面白い」のつくりかた
836円(税込)
発売日:2019/09/14
- 新書
- 電子書籍あり
斬新なアイデアはこう生み出す――画期的アウトプット術! この本は信頼出来る。マキタスポーツさん絶賛。
ウケるプレゼンをしたい。斬新な企画を考えたい。人の心をつかみたい。誰もがそう思うけれども、そう簡単にはいかないもの。どうすれば「面白い」と思ってもらえるのか。ポイントはどこにあるのか。「安易な共感を狙うな」「アイデアは蓄積から生まれる」「人と会う前に学習せよ」──長年、ひたすら「面白い」を追求してきた著者がそのノウハウ、発想法を惜しげもなく披露した全く新しいアウトプット論。
参考文献
書誌情報
読み仮名 | オモシロイノツクリカタ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610830-3 |
C-CODE | 0276 |
整理番号 | 830 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 836円 |
電子書籍 配信開始日 | 2019/09/27 |
インタビュー/対談/エッセイ
「面白い」には理由がある
誰もが「面白い」ものを欲している。面白い本や映画、番組、体験、小話など。ビジネスの世界でも、企画やアイデア、プレゼンなどあらゆる場面で面白さは求められる。にもかかわらず、
「そもそも“面白い”って何?」
という根本的な問いについて語られることはない。考えてみれば実に不思議な現象だ。
私の本業はテレビ番組制作だが、会議や打ち合わせで皆口々に「もっと面白くならないかな~」などと言う。だが実は、面白いとは何なのか、よく分からないまま、それぞれが感覚的に、闇雲に面白さを追い求めている。
「そりゃ、面白いって人それぞれだから……」と、貴方は思うかもしれない。確かに、個人の好みや主観による。故に「定義できない」と考える。
しかし、世の中には歴として「面白いもの」と「面白くないもの」が存在する。例えば、すぐに忘れてしまう作品もあれば、何年経っても心に残る作品もある。いつも退屈な話をする上司もいれば、大観衆を前に魅力的なプレゼンを披露するCEOもいる。その違いは一体、何なのか。
私は、様々な番組制作や執筆活動を続けながら、「面白いとは何なのか?」について考えを巡らせ、一つの結論にたどり着いた。それは、
「面白いとは“差異”と“共感”の両輪である」
という一文にまとめられる。共感はよく耳にする言葉だろう。では、差異とは何か。辞書には「違い」とあるが、私の場合はもう少し広い概念を指す言葉として用いている。
まさに“盲点”の命題「面白いとは何か?」をきっかけに、企画やアイデア、リサーチ、演出、構成、マネジメントについて根本から見つめ直した本書。改めてその疑問に立つと、「面白い」を生む方法論も見えてくる。
例えば、面白い企画やアイデアは、ある日突然、天から何かが下りてくるように思いつくものだと捉えてはいないだろうか。だが、実際には「アイデアは組み合わせによって生まれるもの」なのだ。
演出とは何か。実はエンタメ業界に限らず、一般の人も日常的に演出している。「演出とは状況設定である」と捉えれば、あらゆる人に関係する。
構成(ストーリーテリング)は、物事を効果的に伝える根幹だ。構成の良し悪しによって、面白さも一変する。「物語をつむぐ」というと大袈裟に聞こえるが、構成の本質は「何をどういう順番で語るか」。そう捉えれば、効果的に構成を練るやり方も自ずと導き出せるのだ。
巷では、すぐに役立ちそうなノウハウを列記したビジネス書が人気だ。しかし、最も着実で成果が期待できる思考や技術は、物事を根本から見つめ直し、本質を捉える方法以外にない。そして、それこそが「面白い」を生む近道となるのだ。
(ささき・けんいち TVディレクター/ノンフィクション作家)
波 2019年10月号より
蘊蓄倉庫
著者の佐々木さんはNHKエデュケーショナルで、主にドキュメント番組を制作してきた人です。硬派な番組を作ってきたからこそ、どうしたら「面白い」と思って見てもらえるかを考えてきました。テレビの場合、面白くなければすぐにチャンネルを変えられてしまう。だからこそ、より「真剣」に面白いを追求されてきた。紹介されているのは「こうすれば面白いと思ってもらえる」といった小手先の技術ではなく、仕事の姿勢や仕事への考え方を抜本的に見直していく方法。だからこそ、ビジネスに携わる人であれば、誰でも参考になるヒントがちりばめられています。
掲載:2019年9月25日
担当編集者のひとこと
「面白い」のつくりかた
書籍を読んだ小社営業部の人間が「営業部の人間、全員に読んでもらいたい」と話していました。
テレビのディレクターである佐々木さんが「面白い」について書いている本なのに、なぜ「営業部の人が関心を持つのか……」と思われるかもしれません。
それは、この本が単に「何が面白いのか」「どうすれば面白くなるのか」といったテクニックではなく、仕事に向き合う姿勢を抜本的に問い直しているからです。
一般的には、「そうそう、そうなんだよね~」と人々から共感を呼ぶものが「面白いものだ」と思われがちです。
著者はそこに疑問に投げかけます。共感もさることながら、差異(違い)が大切なのではないのかと。
人は「驚き」や「ギャップ」、「意外性」、「落差」といった“差異”にこそ、関心を持つのではないかと注目するのです。
たとえば、こんな例をあげています。アップル社がiPodを世に出した時、この製品は後発機でしかなく、機能面では特に新しいものはなかった。ただ、明らかに差異が二つあり、それはシンプルさとデザイン性だった。これがユーザーの心を動かし、大ヒットへと導いたのだと。
つまり、作り手がいかに差異を設定するかで、人の心を動かせるか、「面白い」と思ってもらえるかが変わってくると著者の佐々木さんは喝破します。
「面白い」とは共感できるもの、自分が関心があるものだと漠然と思っていた自分にとっても、この佐々木さんの分析は「なるほど、そうか」と衝撃的でした。
このように、ふだん何気なく仕事をしていている中で、それが当たり前のやり方だと思ってスルーしてしまうようなことに、佐々木さんは「それでいいのか、それで面白くなるのか」と疑問をつきつけてきます。
営業部の人間が関心を持ったのも、そんな佐々木さんの仕事への姿勢に共感して、仕事のやり方に違い(差異)に驚いたからに違いありません。
テレビのディレクターが書いた本なので、クリエイティブ系以外のビジネスマンには無縁の本かといえば、決してそんなことはありません。「そうそう、俺の業界でもこういうことある」「こういうところで、自分は仕事を流しているのかもしれない」と、多くのビジネスマンに共感と差異を感じてもらえる本になっていると考えています。
2019/09/25
著者プロフィール
佐々木健一
ササキ・ケンイチ
1977(昭和52)年、札幌市生まれ。早大卒業後、NHKエデュケーショナル入社。ディレクターとしてドキュメンタリー番組などを企画・制作し、国内外で多数受賞するかたわら、ノンフィクション作品を執筆。主な番組は『ケンボー先生と山田先生 辞書に人生を捧げた二人の男』、『哲子の部屋』、『Dr.MITSUYA 世界初のエイズ治療薬を発見した男』、『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズ「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」「硬骨エンジニア」、『ボクの自学ノート』など。主な著書に『辞書になった男』(日本エッセイスト・クラブ賞)、『神は背番号に宿る』(ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『雪ぐ人』、『「面白い」のつくりかた』がある。