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女系図でみる日本争乱史

大塚ひかり/著

792円(税込)

発売日:2019/09/14

  • 新書
  • 電子書籍あり

壬申の乱も、応仁の乱も、関ヶ原合戦も、戊辰戦争も、み~んな身内の争いだった! 日本史の謎を鮮やかに解き明かす。

みんな身内の争いだった——母親が誰かに注目した「女系図」を丹念に読み解けば、日本史のややこしい部分がすべてクリアに見えてくる。なぜ中大兄皇子は長い間天皇に即位しなかったのか、応仁の乱の本当の原因は何だったのか、徳川慶喜はなぜ戦わずして降伏したのか。乙巳の変(大化の改新)、新羅親征、壬申の乱、平将門の乱、関ヶ原合戦、戊辰戦争等、日本の転機となった争乱の見方が一変する一冊。

目次
第一講 いっの変と大化の改新――天皇の妻子が増える時
危機的状況ではね上がる天皇妃の数/争乱の陰に結婚あり 物部戦争/大事の助けにはまず結婚 乙巳の変〜大化の改新/中大兄は朝鮮人?
第二講 新羅しらぎ親征――中大兄はなぜすぐに即位しなかったのか
男装の妊婦将軍・神功皇后/戦う女帝・斉明天皇/中大兄が即位できなかったわけ/皇祖母尊と皇后を奉じることの意味
第三講 壬申じんしんの乱――持統天皇の革新性
持統天皇は織田信長?/渡来人ネットワーク/夫・天武の存在/卑母に礼を尽くすな/ いびつな系図/敵に変わりうるからこそ結束する
第四講 美押勝みのおしかつの乱――女系で栄え、女系で滅ぶ
仲麻呂の栄華と没落/道鏡登場/“王を奴と成すとも”
第五講 くすの変と母子処罰三事件――卑母腹と廃太子
桓武朝前後に多い母子セットの処罰の謎/三事件の焦点は母/遷都と征夷で権威付け/平城京遷都の薬子
第六講 平将門の乱と前九年・後三年の役――婚姻が招いた大争乱
結婚がきっかけだった/実家より妻方が大事/関係者すべてが親類/前九年の役・後三年の役も婚姻絡み
第七講 保元の乱と源平合戦――悪口あっこうとお下がり妻
中世にルーツをもつ「お前の母ちゃん、でべそ」/源平合戦におけるメンタル攻撃“悪口”/“叔父子”/保元の乱と三人の母/天皇・上皇が妻を臣下に与える意味
第八講 承久の乱――本当に女の戦いだったのか?
すべてが女絡みの承久の乱/朝廷を牛耳る卿二位/討幕か義時追討か/北条氏は政子を神格化?/歴史を変えた政子の大演説/南北朝動乱の根に亀山院の好色
第九講 応仁の乱――相続の転換期が生んだ大乱
室町時代は相続形態の大転換期/相続争いが招いた応仁の乱/女系図で大きくなった山名宗全/日野家を将軍家の外戚にした女/女系図ネットワーク
第十講 関ヶ原合戦・大坂の陣――淀殿悪女説の出所
ポイントは織田家の女/養子利用の婚姻で勢力拡大/関ヶ原合戦時、淀殿と北政所に対立はあったか/女が和議交渉した大坂の陣
第十一講 戊辰戦争――女系図が恨みの連鎖をほどく
今に伝わる戊辰戦争の影響/関ヶ原合戦と戊辰戦争……憎悪と恨みの連鎖/慶喜降伏の理由「予は有栖川宮の孫なるぞ」/近づく朝廷と将軍/孫同士は夫婦
あとがき
参考原典・主な参考文献

書誌情報

読み仮名 オンナケイズデミルニホンソウランシ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610831-0
C-CODE 0221
整理番号 831
ジャンル 歴史・地理
定価 792円
電子書籍 価格 792円
電子書籍 配信開始日 2019/09/27

蘊蓄倉庫

徳川慶喜と明治天皇

 戊辰戦争において、徳川慶喜はなぜ鳥羽・伏見の戦い後、兵を置き去りにして江戸へ逃げ帰ったのか、という謎があります。
 慶喜の母は有栖川宮の娘で吉子女王。徳川において、天皇家の血筋を継いだ初めての将軍、しかも正妻腹は家康、家光以外は慶喜だけと、大変に特殊な将軍でした。そして明治天皇の正妃は、慶喜の妻の義妹でした。
 後年、孫同士が結婚した慶喜と明治天皇は、酒を酌み交わしたそうです。明治天皇は「やっと今までの罪滅ぼしができた、慶喜の天下を取ってしまったが、今日は酒盛りをしたら、互いに浮世のことで仕方が無いと行って帰った」と伊藤博文に語ったといいます。
 明治天皇の「罪」の意識は慶喜が身内だったからこそ。慶喜は武家というよりも公家に近い立場だったのだと思うと、戊辰戦争の謎の一つがするりととけた気がします。

掲載:2019年9月25日

担当編集者のひとこと

結婚! 結婚! 結婚!

 初代神武から50代の桓武までの天皇の妻の数を、グラフ化した表を見て驚きました。8人以上の妻を持つのは、著者が指摘するように、その治世において大きな事変が起きている天皇ばかりなのです。桓武にいたっては妻の数が26人(27人、30人説もあり)ですから、どれだけ不安定な治世であったのかが窺い知れます。新政権を打ち立てると権力基盤が脆弱なため、いつ旧勢力下の人々に足をすくわれるやも判りませんから、それを抑えるには旧勢力の娘と婚姻を重ねるのが不可欠であると著者は指摘しています。
 天智と天武、兄弟である彼らの系図も異様です。娘と息子を娶せること5組、天武自身、兄の天智の娘四人までを娶り、そこに生まれた皇子をさらに天智の娘と結婚させる。そうまでして結びつきを強めたのは、容易に敵に変わりうることを実感していたからで、やがてくる壬申の乱を何とかして防ぎたかったからなのでしょう。
 驚きの系図、図表による究極の見える化で、日本史の分岐点となった幾多の争乱の謎が次々に明らかになります。

2019/09/25

著者プロフィール

大塚ひかり

オオツカ・ヒカリ

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。『ブス論』、個人全訳『源氏物語』全六巻(以上、ちくま文庫)、『本当はエロかった昔の日本』(新潮文庫)、『女系図でみる驚きの日本史』『女系図でみる日本争乱史』『毒親の日本史』(以上、新潮新書)、『くそじじいとくそばばあの日本史』(ポプラ新書)、『ジェンダーレスの日本史』(中公新書ラクレ)など著書多数。趣味は年表作りと系図作り。

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