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昭和史の本質―良心と偽善のあいだ―

保阪正康/著

836円(税込)

発売日:2020/04/17

書誌情報

読み仮名 ショウワシノホンシツリョウシントギゼンノアイダ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 222ページ
ISBN 978-4-10-610857-0
C-CODE 0221
整理番号 857
ジャンル 歴史・地理
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2020/04/24

権力者の横暴、大人たちの偽善……昭和は何を間違えたのか。

「国民の九割強は良心を持たない」――芥川龍之介の言葉を裏付けるかのように、時流におもねる偽善は、軍人にかぎらず政治家や知識人、多くの大人たちにも見てとれる。三百万を超える犠牲者を出したあの戦争、敗戦とともに始まった戦後民主主義……日本人は、いったいどこで何を間違えたのか。近現代の名作に刻まれた一文を手掛かりに多彩な史実をひもとき、過去から未来へと連鎖する歴史の本質を探りだす。

目次
まえがき
一 昭和の戦争とは何だったのか
――自己ハ過去ト未来ノ一連鎖ナリ(夏目漱石)
親の為か、自己の為か、子の為か/空虚な国家像の時代/己のために/生きた政治家/戦争を知らない旧派の歴史観
二 日本の政治家には二つの顔がある
――森林太郎として死せんと欲す(森鴎外)
昭和八年=ファシズム元年の永井荷風/恥をかく自伝、感動させる自伝/歴史の中の虚像と実像/議会自体が「院外団」化した歴史
三 戦争は国民の支援がなければ起こりえない
――国民の九割は良心を持たぬ(芥川龍之介)
良心など特権階級の遊び道具/河井栄治郎の度胸あるファシズム批判/ほとんどは日和見的その日暮らし/日本人である限り、お辞儀せよ
四 今日の小利を捨て明日の大利を得る
――吾生の曙はこれから来る(島崎藤村)
時代の目まぐるしい変化/目先の利益を追った昭和十年代/高見順『敗戦日記』の光景/近代日本のつぶやき「ヒヤヒヤ」
五 〈時代〉に生きるか、〈歴史〉に生きるか、逃げるか
――山椒魚は悲しんだ(井伏鱒二)
社会が制御不能に陥るとき/「権力の移動なき革命」の時代/ベルツが怒った自国の倫理観/モラルなき岩屋、逼塞する良心
六 つまりは、誰のための戦争だったか
――お父さんを呼び返して来い(菊池寛)
空襲指揮官へのゾンビ叙勲/無数の「お父さん」たちの死/明治維新から百五十年/呼び返すなら高橋是清
七 知識人の喧嘩にはひと味の苦みを
――性慾をつくるのには骨が折れた(武者小路実篤)
人類造物者の悪戯心/堕落学生とハイカラの都市構図/インテリ青年の神経衰弱/芯のある奇言奇行とユーモア
八 江戸期と近代精神には深い溝がある
――小夜更けぬ。町凍てぬ(泉鏡花)
現実が全てという国/自然主義文学の奴等が……/四文字熟語の夢幻リズム/「都市アリ地獄伝説」
九 「歴史」の中に位置する自分を裁く
――誰か私に代って私を審いてくれ(横光利一)
近衛文麿と大杉栄/タマに化けたホトケ/「私は私の私となった」/「四人称」で歴史の裁きを
十 「聖」を求めて「俗」の天下へ
――風立ちぬ、いざ生きめやも(堀辰雄)
手を見て人を見た時代/『皇軍史』に見る腐敗と堕落/成り行きファシズム/芥川の精神的な貴族性
十一 歴史には予兆となる動きがある
――女の背は燦爛とした(谷崎潤一郎)
日本的な美風の衰退/変容するデモクラシー/「もっと本気になって!」/ポストモダン思想の躓き
十二 時代は夫婦像によって作られる
――夫婦は厄介なものである(獅子文六)
国家主義者の「恋愛などできるか」/文芸復興と人情美談/林髞の人生二回結婚説/平塚らいてう、封建制との戦い
十三 農村の弱さは生きるための知恵だった
――夜の底が白くなった(川端康成)
トンネルを抜けた先の風景/昭和ファシズムというスリル/華族に憧れた軍人たち/農本主義が訴えた都市と農村の対立
十四 「お母さーん」は歴史への異議申し立てだった
――女性は太陽であった(青鞜社)
捕虜イコール死という構図/青鞜社の意識と度胸/人文書とは無縁の軍事指導者/米騒動に見る地方主婦の逞しさ
十五 現人神は二度、人間の感情を見せた
――すめろぎは人間となりたまひし(三島由紀夫)
昭和史最大のテーマ/昭和天皇の変節への怨嗟/神に率いられた神兵の聖戦/建前と本音を許さない赤心
十六 言論人は時代とどう関わるか
――天地は万物の父母。人は万物の霊(仮名垣魯文)
スローガンとしての民主主義/番頭経営と家督の教え/人間の変わり身の早さ/皮肉と諧謔の精神
十七 民主主義とは逃げることである
――思い思いの方向に足を早めて去った(吉村昭)
騙されながら生きる/頭山満にたかった人々/「死ぬまで戦え」という道徳律/私たち世代はすぐ逃げた
十八 戦後の、裸の王様たちよ
――体がゆらゆらするのを感じた(開高健)
進歩的知識人の偽善/「噴水のような哄笑の衝動」/回避性タイプの横行/客観的判断から主観的願望へ
十九 国家意思そのものの涙で現実を知る
――私は何故か涙ぐんだ(泉鏡花)
生きとし生けるものへの感傷/近代への異議申し立てとしての自死/二・二六蹶起書から削られた一文/自称天皇の証明者の涙
二十 主観と客観、国家にも二つの死がある
――痰一斗糸瓜の水も間にあはず(正岡子規)
逃れられない記憶/「戦」を死語とした国民性/禁酒運動と共同体のしきたり/先達の残した文化的遺産
あとがき

著者プロフィール

保阪正康

ホサカ・マサヤス

1939(昭和14)年北海道生まれ。ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。『東條英機と天皇の時代』『五・一五事件』『あの戦争は何だったのか』『昭和の怪物 七つの謎』『ナショナリズムの昭和』(和辻哲郎文化賞)、「昭和史の大河を往く」シリーズなど著書多数。

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