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認知症の新しい常識

緑慎也/著

792円(税込)

発売日:2021/02/17

書誌情報

読み仮名 ニンチショウノアタラシイジョウシキ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-610895-2
C-CODE 0247
整理番号 895
ジャンル 家庭医学・健康
定価 792円
電子書籍 価格 792円
電子書籍 配信開始日 2021/02/17

これだけは知っておきたい! ■誰でもPCで無料検査が可能に ■免疫治療、超音波治療とは ■承認を目指す2つの特効薬

2025年には65歳以上の日本人の5人に1人、約700万人が患うことになると予想される認知症。決定的な治療薬、治療法がないとされる中で、私たちは人の記憶を奪うこの残酷な病気とどう向き合えばいいのか。最も患者数が多いアルツハイマー型の性質、その原因、治療薬の最前線、画期的な治療法、病気を防ぐ生活習慣や食習慣、食材、なってしまった場合の対処法……あらゆる角度からこの病気の新しい常識に迫る。

目次
はじめに
第1章 アルツハイマー型認知症とは何か
段取りができなくなる実行機能障害や近い時間軸から失われていく記憶障害。患者数は、2025年には730万人に達すると予想されている。
第2章 原因――ここまでわかったメカニズム
病気の原因はアミロイドβと呼ばれるタンパク質。この物質がある程度脳に溜まると、様々な形の記憶障害が現れる。
第3章 創薬――見えてきた光明
アミロイドβを減らす治療薬の開発を目指す、製薬会社の挑戦は続く。また、予防や事前検査などの分野でも新たな研究が実りつつある。
第4章 最新治療法――免疫から超音波まで
新たに注目される、ミクログリアなどの免疫系物質。一方、アルツハイマー病を循環器疾患に見立てる新アプローチも。
第5章 生活習慣と食習慣――睡眠から体型まで
認知症を促すのは、「一時的な徹夜」か「長期的な短時間睡眠」か? そのほか口腔衛生、食の傾向、運動の仕方など、ベストの選択を考える。
第6章 食材の新常識――野菜、果物、魚、カレー
ノビレチンを多く含む柑橘類、DHAを含む青魚……。予防効果があるとされる食材を一挙公開!
第7章 折り合いの付け方――あなどらず、悲観せず
「認知症は神様からの贈り物」「認知症は不幸ではない」――。この病を穏やかに受け入れる方法はあるのか。
おわりに

インタビュー/対談/エッセイ

認知症克服への実践的ノウハウ

緑慎也

 人に近況を聞かれ、認知症に関する本を執筆中と答えると「実は私の祖父が認知症かもしれなくて」とか「母親が認知症で実家に毎週帰って介護しているんだけど」といった反応がしばしば返ってきた。我々の生活を一変させた新型コロナだが、その感染者が知り合いにいると耳にする機会より、はるかに多かった。それもそのはずで、日本における新型コロナ感染者は累計で、約42万人(2021年2月現在)、認知症患者は約600万人で、まさに桁違いに多い。2025年には700万人に達すると予測されている。
 そのうち6、7割はアルツハイマー型認知症の患者だ。今、その根本治療薬の候補が重大な局面を迎えている。昨年7月に、米食品医薬品局(FDA)に申請されたアデュカヌマブの承認可否の判断が今年6月に下される予定なのだ。
 アデュカヌマブは数奇な運命をたどってきた。2019年3月に効果が十分でないとして臨床試験が中止されたものの、新たなデータ解析の結果により一定の効果が見られたと同年10月に発表され、2020年7月にFDAへの承認申請にこぎ着けた。今年3月7日までと設定された審査期間で承認される見込みは高かったが、昨年11月にFDAが開催した外部専門家による諮問委員会で有効性に関する否定的な見解が出され、事態は暗転。ところが今年1月29日、FDAは審査終了目標を6月7日に設定すると発表した。単に期間を延長するのみならず、新たな臨床試験データも審査の対象に加えられたことから、再び承認への期待が高まっている状況だ。もし承認されれば、アルツハイマー型認知症に対する世界初の根本治療薬の誕生である。
 本書では、アデュカヌマブ敗者復活の舞台裏や、後を追う他の候補薬について解説している。今回の取材を通して、筆者は、研究者たちの長年の努力により認知症、特にアルツハイマー型認知症を克服できる見通しがかなり明るくなってきていると感じた。
 まだ確実な治療薬、治療法は存在しないが、打つ手がないわけではない。認知症は、高血圧、糖尿病、脳卒中、がん、心臓病と同様、生活習慣に強く関連して高齢期に現れる症状である。認知症を避けるために気をつけるべきポイントは何か。すぐにも実践できるノウハウも紹介した。
 しかし、たとえ画期的な認知症薬ができても、時が経てば、いつしか薬の効き目に限界が来て、認知機能の衰えは深刻化する。そのとき必要になるのは、認知症と共存するという視点だ。最後の章では、当事者、介護経験者などの声を通じて、認知症との向き合い方について考えた。
 コロナ危機がもたらしたニューノーマル(新常態)に合わせ、今こそ認知症の常識をアップデートすべきだ。

(みどり・しんや 科学ライター)
波 2021年3月号より

薀蓄倉庫

「一時的な徹夜」か「長期的な短時間睡眠」か

 睡眠不足になると、認知症の原因となる脳内のアミロイドβの量が増えるので、当然認知症リスクは高まるのですが、「一時的な徹夜」か「長期的な短時間睡眠」か、どちらがより悪いのかというと、秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授の三島和夫氏は、「長期的な短時間睡眠」と考えています。また、平日の睡眠不足を休日に解消しようとするのもよろしくないそうで、「寝だめで解消されるのは眠気だけで、脳内の老廃物やストレスホルモンの除去、代謝系や自律神経系へのダメージ軽減は図れません」ということなのでご留意されたし。「手書き」か「パソコンタイピング」か、「ヴィーガン食」か「肉食」か、などなど、本書では様々な生活習慣と認知症の関連についても考察しています。

掲載:2021年2月25日

担当編集者のひとこと

「認知症の権威」が発症して分かったこと

 本書は新薬の開発の状況や、どんな食事・生活習慣が認知症の予防に役立つかなど、様々な角度から認知症に迫っていますが、「なってしまったらどうするか」に関しては、「認知症の権威」、聖マリアンヌ医科大学名誉教授の長谷川和夫さんの言葉を紹介しています。2017年10月に認知症を発症したことを自ら明らかにしたことについて、「認知症の専門医だって認知症になるんだから、誰もが認知症になると伝えたかった」と話す長谷川さんは、「認知症の方は、早めに気付くか見つけてあげるかして、適切な治療を受けることが重要」「今を一生懸命生きることが一番大事」と強調しています。最後にはここにたどり着くのかと思います。

2021/02/25

著者プロフィール

緑慎也

ミドリ・シンヤ

1976(昭和51)年大阪府生まれ。科学ライター。出版社勤務後、月刊誌記者を経てフリーに。科学技術を中心に取材・執筆活動を続ける。著書に『消えた伝説のサル ベンツ』、共著に『ウイルス大感染時代』『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』など。

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