ホーム > 書籍詳細:毒親の日本史

毒親の日本史

大塚ひかり/著

924円(税込)

発売日:2021/03/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

親子の愛憎が歴史を作る! 最強の母が息子を虚弱に――持統天皇。出世第一の父で娘が鬱――藤原不比等。用済みの子や孫を抹殺――北条氏。

親子関係は一筋縄ではいかない。古代天皇に平安貴族、戦国武将から僧侶まで、あっちもこっちも「毒親」「毒子」だらけ。子捨て、子殺しや性虐待は勿論のこと、きょうだいの殺し合いを招いたり、子の恋文を世間にさらしたり。父親に見殺しにされたヤマトタケル、子を母に殺された建礼門院徳子、実家にいびられ続けた小林一茶等々、系図上では、はかなく頼りない親子の縦一本線に込められた愛憎が、日本史に与えた影響を読む。

目次
はじめに 親子の愛憎が歴史を作る
第一章 毒親育ちの「ずるさ」 神功皇后と応神天皇
第二章 聖君伝説の陰に隠された「毒親」 仁徳天皇の真実
第三章 「成り上がり」と「落ちぶれ」が生む毒親 楊氏と武則天
第四章 毒々しい母と虚弱な息子 持統天皇と草壁皇子
第五章 鬱になった天皇妃 藤原不比等と宮子
第六章 「史上初」女子たちのプレッシャー 光明皇后と孝謙(称徳)天皇
第七章 娘を政治の道具にして繁栄 平安貴族の毒親たち
第八章 『源氏物語』に描かれたリアル毒親 教育虐待、子の自殺未遂
第九章 やり過ぎる母(一) 息子のラブレターをさらす『蜻蛉日記』道綱母
第十章 やり過ぎる母(二) 息子のための訴訟日記だった『十六夜日記』阿仏尼
第十一章 子を呪う親 我が子との主導権争いの果てに先立たれた後白河院
第十二章 『平家物語』の毒母・毒祖母(一) とぢと祇王、磯禅師と静御前
第十三章 『平家物語』の毒母・毒祖母(二) 二位の尼と建礼門院徳子
第十四章 子も孫も使い終われば抹殺 北条氏の最強最悪な毒親たち
第十五章 仏教界は要らない子の巣窟だった? 父に捨てられた弁慶、子を見捨てた親鸞
第十六章 子を使い捨てる親たち ヤマトタケル、護良親王
第十七章 毒親がもたらすきょうだい殺し 信長、秀吉
第十八章 性虐待をする毒親 光源氏、秀吉、白河院
第十九章 ひいきする母、スポイルする毒乳母 徳川家光と弟・忠長の悲劇
第二十章 近松作品は毒親カタログ ばらばらの家族へ復讐した毒子
終章 小林一茶の毒人生 毒親育ちを生き抜いて
参考原典・主な参考文献

書誌情報

読み仮名 ドクオヤノニホンシ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 288ページ
ISBN 978-4-10-610900-3
C-CODE 0221
整理番号 900
ジャンル 歴史・地理
定価 924円
電子書籍 価格 924円
電子書籍 配信開始日 2021/03/17

薀蓄倉庫

毒親を生む「成り上がり」と「落ちぶれ」

 毒親はなぜ毒親となるのでしょうか。著者はエリオット・レイトンの『親を殺した子供たち』を参考に、「落ちぶれ」と「成金」、その激しい階級移動がもたらすストレスが毒親を生む温床となることを指摘しています。その例としてあげるのが、日本の歴史にも大きな影響を及ぼした、中国史上唯一の女帝・武則天です。近年、その治世は安定しており、身分にかかわらず人材登用が行われ、男女平等を目指していたことなどから再評価もされていますが、ながらく、その権勢のために、夫である皇帝の他の后や政敵ばかりか、子や親族まで殺した悪女とされていました。その激しい性格は、彼女の生い立ち抜きには語れないといいます。武則天の母の楊氏は隋王室の流れをくむ名門の令嬢でした。それが、身分の低い成り上がりである武氏へ後妻として入り、夫である武氏が亡くなると、先妻腹の息子たちは、後妻の楊氏や彼女の生んだ娘、武則天らに辛くあたったといいます。「落ちぶれママ」である楊氏は、娘の武則天のために高官に働きかけたり、気に入らないことがあれば娘に告げ口したり。子の出世や手柄を自分のものとするそれは、子の幸せのためではなく、自分の欲望を満たすためであり、まさに毒親の典型でした。

掲載:2021年3月25日

担当編集者のひとこと

親子きょうだい、殺しあうのが当り前?!

 遺産相続は少ないほど揉めるそうですが、日本の争乱のほとんどが「親子きょうだい」による権力争い=相続争いであることを前作『女系図でみる日本争乱史』で喝破した著者が、「親子関係」に注目して日本史をとらえなおしたのが本書です。登場するのは、仁徳天皇や藤原不比等、後白河院に北条氏、弁慶、親鸞、信長、秀吉に徳川家光と歴史上の著名人ばかり。それが、子捨て、子殺し、孫殺し、性虐待に、きょうだい仲を裂いたりと、「毒親」問題だらけだったことに驚きました。現在とは人権意識も異なりますし、儒教の影響も強かったとはいえ、あまりといえばあんまりな例ばかりです。それは時代が違うとはいえ、当事者にとってもそうだったようで、本書で紹介されている源実朝(鎌倉幕府三代将軍)の歌には、哀しみを通り越して、痛みすら感じられます。そんな「毒親問題」に、どう立ち向かえばよいのか。そのヒントとなるのが最後の小林一茶の章です。読後、不思議な明るさを感じるのは「生きてるだけで丸儲け」と思えるからかもしれません。

2021/03/25

著者プロフィール

大塚ひかり

オオツカ・ヒカリ

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。『ブス論』、個人全訳『源氏物語』全六巻(以上、ちくま文庫)、『本当はエロかった昔の日本』(新潮文庫)、『女系図でみる驚きの日本史』『女系図でみる日本争乱史』『毒親の日本史』(以上、新潮新書)、『くそじじいとくそばばあの日本史』(ポプラ新書)、『ジェンダーレスの日本史』(中公新書ラクレ)など著書多数。趣味は年表作りと系図作り。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

大塚ひかり
登録

書籍の分類