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マスクをするサル

正高信男/著

792円(税込)

発売日:2021/04/19

  • 新書
  • 電子書籍あり

パンツ以来の歴史的変化。認知、コミュニケーション、性意識……霊長類学者による画期的社会論!

マスク着用の標準化(デファクト)は、すでに受け入れざるを得ない社会の現実だ。しかし、誰もが顔の半分以上を蔽い隠すという習慣は、動物間の認知とコミュニケーション、さらにはヒトの性にかかわる意識をも、大きく変えてしまうかもしれない。コロナ禍の象徴・マスクは人類史上、パンツにも匹敵する行動変容をもたらすのか。霊長類学と人類学、社会学や文学など多様な視点から考える、ポスト・コロナ文化論の試み。

目次
はじめに
I マスクをするサル ポスト・コロナの新しい感性
レディー・ガガの奇抜なマスク/マスクの2タイプ/クラフト=エビング『性的精神病理』/お金の起源を遡る/フェティシズムを超えて
II マスクと女らしさ 陰部を隠すという歴史的決断
剥き出しの唇?/「恥ずかしい」はヒトに特有/脳の発達と途方もない犠牲/生理による生存リスク/心理と行動の変調/認知機能の亢進/陰部を隠すことの始まり/陰毛の性的シグナル化
III マスクは異性を誘引するか? 口唇部とコミュニケーション
コミュニケーション偏重社会/社交不安障害とマスク/フェイスツーフェイスへの誤解/身体延長物としてのマスク/隠された部位への興味/日本人の文化的土壌/アベノマスク・リメイクの示唆
IV マスクと男らしさ 顔面装飾・形質置換、髭の進化史
昼行性ゆえの視覚情報/サルの顔面装飾と種の認知/ダーウィンが考えた髭理論/異性獲得のための同性間競争/ザハヴィのハンディキャップ理論/高齢者の髭は智恵の証?/「長老」はなぜ消えたのか/大谷刑部頭巾の神秘性/着衣の色と選手のパフォーマンス
V 乱婚から一夫一婦制への人類史 サルとヒトの性行動
「野蛮」「未開」「文明」の三段階/チンパンジーの乱婚生活/ニホンザルの中間戦略/ヒトはチンパンジーとニホンザルの中間/“緩い乱婚”生活/「自由な性の交歓」への羨望と困惑/人口の増大、食料の確保/新石器革命と定住革命/持続的な社会関係の形成/誰がどれだけ「ありついているか」/一夫一婦制の導入/隠すから神秘的で魅力的?
VI 性の解放と人類の動物化 社会的交換・抑圧・不倫
社会的交換の発生/接触を避ける沈黙交易/板状土偶は豊穣の象徴/「マスク美人」という想像力/性の解放と性的スキャンダル/性の抑圧がないことの不幸
VII デファクト化するマスク 新たな共同体の感性
曖昧になった生活の二面性/「ハレ」と「ケ」の区分/「愚」であることの意味/動物化する性行動/デュルケーム「聖と俗」の実体/オルテガの予見「専門主義の野蛮」/無名の者たちの群れの解体のために
あとがき
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 マスクヲスルサル
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610904-1
C-CODE 0236
整理番号 904
ジャンル 政治・社会
定価 792円
電子書籍 価格 792円
電子書籍 配信開始日 2021/04/19

担当編集者のひとこと

目は口ほどにものを言わない? マスクのデファクト化への困惑と展望と

 マスク着用が標準と化した生活も、はや1年半になろうかとしています。この間、初めて会う人の数は激減、よしんば出会って名刺を交換して少々話をしたとしても、しばらく日がたつと、その面差しはほとんど思い出せないのだから困ったものです。
 目は口ほどにものを言う、とはいいますが、長年、霊長類学(俗称サル学)を専門としてきた著者によると、本来的に動物同士というのは正面から目を合わせることはなく(あるとすれば相当の緊張感をはらむ、つまり喧嘩を売るようなものだとか)、目元ではなく口元やその動きによって相手の感情を察知しているというのです。
 顔半分以上を覆ってしまうことで、生きていく上で不可欠な認知とコミュニケーションを大きく阻害するマスクという存在、それは歴史上、ヒトが腰周りを布で覆いかくしたことにも匹敵するやもしれず、ひいてはかつてパンツがそうであったように、人類の性意識にまで影響を及ぼすかもしれない――霊長類学と人類学から社会学や文学まで、様々な分野の視点から考える、大胆なポストコロナ文化論の試みです。

2021/04/23

著者プロフィール

正高信男

マサタカ・ノブオ

1954(昭和29)年大阪府生まれ。霊長類学・発達心理学者、評論家。大阪大学人間科学部行動学専攻卒、同大学院人間科学研究科博士課程修了。京都大学霊長類研究所教授を2020年に退官。『ケータイを持ったサル』『いじめとひきこもりの人類史』など著書多数。

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