
森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―
792円(税込)
発売日:2021/06/17
- 新書
- 電子書籍あり
補助金、新税、現実離れした制度etc. このままでは「宝」の持ち腐れだ。ウッドショックに揺れる現場から鋭く問う!
日本の森林は多様性、豊かさともに世界がうらやむような資源である。しかし、国はその活かし方を理解できていない。全国一律の補助金でコントロールする発想、素晴らしい伝統木造をないがしろにする制度、合理性に欠けるバイオマス発電推進、そして国民が知らぬ間に導入される新税……。これでは宝の持ち腐れが進む一方ではないだろうか。国内外に足を運び、考え続けてきた研究者だからこそ書ける切実なメッセージ。
大工棟梁の技能の伝統構法も世界に誇れるものなのに……。
思想も哲学もない日本の建築基準法は一体どこを目指しているのか。
闇雲な大規模化を目指す前に足元にある知恵を見直すことがチャンスを生む。
バイオマスは、エネルギーを使う現場から考える。
いまでも価値ある木は存在しているはずなのだが……。
豊かな資源で海外へ、将来へ打ち出す戦略を。
この価値を高める製材業と林業の復活を。
日本は何よりもまず死傷事故を減らすこと。
本質的な改革と成長は、おのれの意欲と意志で動き出すことから。
書誌情報
読み仮名 | シンリンデニホンハヨミガエルリンギョウノガカイヲクイトメヨ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610909-6 |
C-CODE | 0261 |
整理番号 | 909 |
ジャンル | サイエンス・テクノロジー |
定価 | 792円 |
電子書籍 価格 | 792円 |
電子書籍 配信開始日 | 2021/06/17 |
薀蓄倉庫
生産性より安全性
農業、漁業、林業は自然の中で働くという面だけ見れば「素敵」という感じがするかもしれません。しかし自然相手だけに危険も伴います。『森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―』(白井裕子・著)によれば、日本林業の生産性は高くないが、それ以上に問題なのは安全性だ、といいます。近年でも事故で亡くなる方が年間40人前後いらっしゃるのです。著者が受けたチェーンソーの講習では、「20歳から還暦まで40年働くと、25人のうち1人は亡くなる」と言われたとのこと。同書を読むと、普段私たちが知ることができない日本の森林や林業の抱える問題点を知ることができます。
掲載:2021年6月25日
担当編集者のひとこと
林業の現場は大変なことになっている
自分の体にエネルギーが放っておいても貯まっていた年齢の頃は、「自然豊かな場所に出向いてリフレッシュする」といった話を聞いても、あまりピンと来ませんでした。新しい商業施設とかテーマパークとかの方が面白いじゃないの、というくらいの気持ちでした。
しかしだんだん、貯めようとしてもエネルギーが容易には貯まらない年齢になっていくにつれて、自然でリフレッシュうんぬんがよくわかるようになってきました。「森林浴」なんてオカルトというか、気のせいみたいなものかと思っていたら、そうじゃないのだということも。
遊びでたまに行く森林はとても心地よいのですが、日本の林業の現場がどうなっているかというと、そんな呑気なものではない、ということが本書を読むとよくわかります。
せっかく価値のある木が、日本には数多くあるにもかかわらず、それを活かすことができなくなっている。林業の現場では毎年、多くの人が命を失っている。国は多額の補助金をつぎこんでいるが、事態の改善にはつながっておらず、むしろ悪い方に進めているかのようでもある。こんなに大変なことになっているのか、と驚く方が多いはずです。
国土の約7割を占める森林が抱える重大な問題をぜひ多くの方に知っていただきたい、と思います。これは国民全員にかかわる問題だからです。
2021/06/25
著者プロフィール
白井裕子
シライ・ユウコ
慶應義塾大学准教授。早稲田大学理工学部建築学科卒。稲門建築会賞受賞。ドイツ・バウハウス大学に留学。早稲田大学大学院修士課程修了。株式会社野村総合研究所研究員、早稲田大学理工学術院客員教授などをつとめる。工学博士。一級建築士。著書に『森林の崩壊』。