ホーム > 書籍詳細:独身偉人伝

独身偉人伝

長山靖生/著

814円(税込)

発売日:2021/10/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

ココ・シャネル/小津安二郎/ゴッホ/マザー・テレサ/ニュートン/アンデルセン/ジェイン・オースティン/立原道造/カント/ナイティンゲール/津田梅子……世界を変えた「おひとりさま」それぞれの流儀とは。

非婚や少子化は国家の将来にとっては難題だが、個人の生き方とは別の話だ。恋多き人生を全うした男女もいれば、世を正しく導くため、あるいは社会を作り変えるという使命感とともに単身を貫いた人もある。エリザベス一世、マザー・テレサ、ニュートン、カント、津田梅子、小津安二郎……直接の子孫こそなくとも、偉大な事績を遺した「おひとりさま」19人の言行と信念から見えてくる、本当の「自分らしさ」とは。

目次
まえがき
第一章 恋多き人生を全うする カサノヴァ/モーパッサン/ココ・シャネル
モテすぎて生涯独身/自分も他人も楽しむ流儀/珍しいほどの伊達男/知力と腕力と大胆さ/“旅する王権”の時代/バロック的でロココ調な生き方/放蕩作家の身も蓋もない結婚観/ハーレクイン・ロマンス以上の恋の数々/芸術家との交流、広がる人脈/デザインこそが命であり、子供
第二章 憧れゆえに思いを遂げられない アンデルセン/立原道造
愛の対象を理想化するあまり……/辛い現実を美しいファンタジーに/無邪気にして果敢な挑戦/人魚姫に投影された恋の悲しみ/かなわぬ恋が創作の原動力に/乙女チックなほどの口語自由詩/呆れるほど清らかな関係/最後の一線、微妙な距離/「別離がいまは大きな愛の形式」
第三章 世を正しく導くために コルベ神父/マザー・テレサ/エラスムス
独身こそ道徳的で倫理的/異教徒の魂を救済するために/ナチスによる逮捕、餓死牢での死/「全てを捨て、もっと貧しい人々の間で働け」/俗物にも共感できる聖職者/現実世界を生き抜く処世術/「正しい戦争」より「妥協の平和」を
第四章 自然と人間の真理を探求する ニュートン/カント
孤独な者、創造者の道を行く/母の不在が与えた欠落感/ペスト流行がもたらした大発見/女性よりも化学の方が好き/晩年は錬金術と神秘主義に傾倒/「美貌の女性より持参金の多い女性を」/秩序ある生活、深遠なる思考/生と学問に固執する濃い情念
第五章 芸術と自由の精神を求めて ダ・ヴィンチ/ミケランジェロ/ゴッホ
野蛮すれすれの欲望/知識欲旺盛な美少年/学芸・美術・技術一体の「真善美」/権力者たちと創作活動/優れた技能と鼻っ柱の強さ/ダ・ヴィンチへの強烈な対抗意識/大作に挑み続ける並外れた体力と根気/「最後の審判」が生まれるまで/寛容より厳格、自由より勤勉の時代へ/芸術的ボヘミアンを生んだ近代/失恋、孤独、宗教への傾斜/生活苦、繰り返される奇妙な恋愛/自分の「好き」にハマったゴッホ流
第六章 女性ならではの社会の変え方 ナイティンゲール/津田梅子
働くこと自体が男社会との戦い/社交界デビューと「階級からの逸脱」/労働は卑しく、慈善は気高い?/看護婦を専門職として確立/「クリミアの天使」、医療改革を断行/女王、内閣、国民の賞賛/見栄っ張りで怠け者の男たち/患者としても最高峰の人格者/日本で最初の女子留学生/二十歳にして生涯独身を予期/縁談を拒み、女子教育の道へ/スローガンより地道な実践
第七章 君主でありながら子孫を残さず エリザベス一世/上杉謙信
子孫をもうけなかった君主/信仰よりも後嗣獲得を優先/父王の乱倫、混迷する王位継承/結婚をはぐらかすことが戦略的有利/国政安定のために“恋愛”を“友情”に戻す/「ヴァージン・クイーン」と寵臣たち/野心家ローリー、見栄っ張りエセックス伯/周囲を狂わせる王権の輝き/私利私欲にこだわらない人格者/義のための独身、家名のための模索
第八章 常に自分らしくありたい ジェイン・オースティン/小津安二郎
経済的自立と平穏を保持するために/中流階級の形式的態度への批判/釣り合いのとれた結婚の難しさ/伴侶選びから身を引き、観察者に/家業を捨てて映画の世界へ/「女優は商品、お前らは丁稚」/戦後も続いた密かな相思相愛/手をふれるより、眺めていたいひと/映画と人生を統御する
あとがき
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 ドクシンイジンデン
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610925-6
C-CODE 0223
整理番号 925
ジャンル ノンフィクション
定価 814円
電子書籍 価格 814円
電子書籍 配信開始日 2021/10/18

薀蓄倉庫

数字では測れないこと

 パンデミックに見舞われた昨年、日本人の婚姻数は年間52万件と戦後最少を記録、100万件を超えていた1970年代の半分程度になりました。当然ながら、出生数もまた84万人と、200万人を超えていた当時の半分以下にまで低下しています。さらに重ねると、この間、国民の平均年齢は28歳から48歳へと上昇、平均寿命も15年ほど伸びました。国として少子高齢化では世界のトップランナーですが、そのぶん自己実現にかけられる時間が長くなったと捉えることも可能でしょう。もちろん、何をもって自己実現と考えるかは人それぞれです。

掲載:2021年10月25日

著者プロフィール

長山靖生

ナガヤマ・ヤスオ

1962年茨城県生まれ。鶴見大学大学院歯学研究科修了。評論家、アンソロジスト。近代文学、SF、ミステリー、映画、アニメなど幅広い領域を新たな視点で読み解く。日本SF大賞、日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞(いずれも評論・研究部門)を受賞。著書多数。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

長山靖生
登録

書籍の分類