山奥ビジネス―一流の田舎を創造する―
858円(税込)
発売日:2022/10/15
- 新書
- 電子書籍あり
「デフレ? 少子化? 悲観するな! 日本の田舎こそ成長のフロンティアだ」冨山和彦氏推薦。
人口減? 地方消滅? 悲観する必要はない。日本には「山奥」という豊かなフロンティアがある。「なにもない田舎」も、地域資源を再発見し、角度を変えて眺めれば、宝の山に変わるのだ。ハイバリュー・ローインパクト(高付加価値で環境負荷が低い)なビジネスを山奥で営む事例や、明快なコンセプトで若い世代やユニークな事業を呼び込んでいる自治体事例を紹介し、「一流の田舎」を創るストラテジーを提示する。
主要参考文献
書誌情報
読み仮名 | ヤマオクビジネスイチリュウノイナカヲソウゾウスル |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610971-3 |
C-CODE | 0234 |
整理番号 | 971 |
ジャンル | ビジネス・経済、ビジネス実用 |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 858円 |
電子書籍 配信開始日 | 2022/10/15 |
蘊蓄倉庫
岐阜から北海道に移転した酒蔵
最近の地方創生ではクラフトビールの製造がブームになっていますが、これは日本酒の酒蔵の新規参入が事実上不可能になっていることも背景の一つにあります。逆に言うと、日本酒の酒蔵が新規に出来るのは非常にまれで、希少性があります。
そんな中、北海道東川町は公設民営の酒蔵を作って運営を公募し、岐阜県から酒蔵を移転させることに成功しました。その移転を決めた三千櫻酒造には、酒蔵の更新に費用がかかること、冬場に蒸したコメの温度が想定よりも下がらなくなってきたことなどの事情がありましたが、より積極的には「大雪山系のきれいな伏流水を使えること。観光地にもかかわらず北海道には日本酒の酒蔵が少なく、ブルーオーシャンに思えたこと」という理由もありました。実際に三千櫻酒造は、移転後に生産量を2・5倍にすることが出来たそうです。
掲載:2022年10月25日
担当編集者のひとこと
「消滅可能性の高い自治体」で展開される高付加価値ビジネス
本書の「山奥」とは、人が住んでいない山奥ではなくて、かつて銀山や炭鉱、林業などで栄えていた地域を指します。そのほとんどが、いわゆる「消滅可能性の高い自治体」です。本書は、人口が減少した地域において、どんなビジネスを呼び込み、どう地域を活性化していくかを示唆する内容となっています。
もちろん、人口減の中でもそこそこ頑張っている自治体やビジネスはたくさんあるわけですが、著者が重視したのは「ハイバリュー&ローインパクト」と「SLOC(Small, Local, Open, Connected)という側面です。前者は、価値が高い剤・サービスを生み出しながら環境や土地への負荷を低くしていること、後者は文字通り「小さくて、ローカルで、オープンで、繋がっている」という要素です。そうした観点から、老舗の酒蔵が中心になって町を活性化させている熊本県山都町、世界一のジェラート職人が店を構える石川県能登町、職人やアーティストが集結して新しいムーブメントを起こそうとしている北海道岩見沢市美流渡地区、「写真の町」というコンセプトで交流人口を増やし続けている北海道東川町などの事例が紹介されていきます。
編集をしている中で、個人的に興味深かったのが、山梨県の小菅村。ここは「多摩川の源流」に位置しており、村全体をホテルに見立てた「NIPPONIA小菅 源流の村」というホテルがあります。さらに、「タイニーハウス」と名付けられた「疑似断捨離体験」の出来る、環境負荷の低い家での宿泊も可能。渋谷から本社を移転してきたブルワリーや、森の中で長大なジップスライドを体験できるアドベンチャー施設もあるそうで、これから行くチャンスをうかがうことにします(笑)。
著者の藻谷さん自身は横浜出身なのですが、MBA留学→会社勤め→起業を経て、20年前に長野県の山奥に移住しています。起業した会社は長野でも経営し続け、現在はすでに事業譲渡してしまいましたが、いまでも「経営エッセイスト」という肩書きで執筆、講演活動を続けられています。つまり、ご自身も「山奥ビジネス」の実践者でもあります。
本書の編集を通じて、いろいろと知らない事例を知ることが出来て、個人的には非常に勉強になりましたし、潜在的な「観察対象」地域も増えました。
よろしければ、皆さんもぜひご一読ください。
2022/10/25
著者プロフィール
藻谷ゆかり
モタニ・ユカリ
1963年横浜市生まれ。東京大学経済学部卒、ハーバードビジネススクールMBA。会社員、起業を経て経営エッセイスト。2002年、家族五人で長野県に移住。著書に『衰退産業でも稼げます』『六方よし経営』など。