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NHK受信料の研究

有馬哲夫/著

858円(税込)

発売日:2023/02/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

「みなさまのため」なんて大ウソ! 吉田茂が“犯人”だった――。GHQ関係者らの貴重な証言も盛り込み、巨大メディアのタブーに挑む。

「NHKの公共性、客観性を保つために受信料は必要だ」――日本人の多くはこんなプロパガンダを信じ込まされている。しかし、世界を見れば広告収入で運営されている公共放送は数多い。実は、戦後の受信料とは、GHQの意向に反して、吉田茂総理と通信官僚らがNHK支配の道具として存続させたものだ。放送法制定に携わったGHQ側の貴重な証言を盛り込みながら、巨大メディアのタブーに斬りこむ刺激的論考。

目次
序章 BBCに起こることはNHKにも起こる
BBC許可料は廃止に/テレビ許可料制度/BBCではNetflixに対抗できない/イギリス人は見ていないBBCに許可料を払いたくない/BBCよりも見られていないNHK/人々はテレビを見る習慣がない/放送ではなくインターネットに時間を使っている/日本も文化的属国になる/受信料規定に胡坐をかいている
第1章 NHKがついてきたウソ
「公共放送」のウソ/BBCの公共性/政府の意向に左右される/民放は不公正か/交付金の力/スイス公共放送の公共性/莫大な貯金/私設無線電話施設者/受信料規定の論理的破綻
第2章 NHKは私設無線電話施設者
「民放さん」という蔑称/電波は国のもの/公共放送の理想/受信届けと契約義務は別物/協会との契約は任意/政府は受信料徴収にどうかかわっていたのか/協会は政府に支配されていた/国策機関/プロパガンダ機関に/軍国主義時代の聴取料徴収
第3章 NHKのGHQへの抵抗が生んだ受信料の矛盾
GHQは協会をプロパガンダに利用した/GHQによる協会の「民主化」/逓信省の抵抗/放送法の意図/受信自由制転換の可能性/寄付制というプラン/協会は受信料強制徴収を主張/協会のネットワークは私財/協会は強制徴収に固執した/みなし契約という欺瞞
第4章 吉田総理のあくなき抵抗
放送委員会が電波監理委員会に/民政局次長リゾーの主張/マッカーサー書簡/放送法制史上最大の汚点・受信料規定/GHQは受信料強制徴収を認めなかった
第5章 電波監理委員会の廃止
GHQは民放設立を支援/電波監理委員会はテレビ基準を決定した/電波監理委員会廃止の経緯/政府による協会支配/現行放送法への大改悪/委員会廃止の理由をどう説明したか
第6章 受信料判決は違憲である
正当性がない受信料規定/受信料判決の時代錯誤/2017年受信料判決/多くの国々で公共放送は広告を流している/イラネッチケー訴訟/若者たちはネットテレビへ/協会は動画配信に受信料を課すことができない
終章 メディア公社設立構想
NHK国際放送はいらない/国際広報はYouTubeで行うべし/国内の政府広報もYouTubeでいい/災害情報もネットのほうが有用/カーボンニュートラルの観点/「メディア公社」設立の勧め/放送と番組制作の分離/「日本版FCC」創設の勧め
あとがき
註釈

書誌情報

読み仮名 エヌエイチケージュシンリョウノケンキュウ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610984-3
C-CODE 0230
整理番号 984
ジャンル 社会学、マスメディア、思想・社会
定価 858円
電子書籍 価格 858円
電子書籍 配信開始日 2023/02/17

蘊蓄倉庫

吉田茂はなぜ受信料制度にこだわったのか

 一部の政党の意見は別として、また本当に払っていいと思っているかどうかは別として、テレビを持つほとんどの国民はNHKに受信料を払っています。公共放送だから仕方ない、と。
 しかし実は別に世界標準でも何でもありません。オーストラリア、イタリア、フランス、韓国などは公共放送でありながら、広告収入を得ている国もあります。
 戦後、強制的に受信料を徴取できる制度を強く求めたのは、吉田茂総理でした。このようにすることで、国家が放送に関与しやすくなることを狙ったのです。
 メディアの自由を重視するGHQとそれに対抗する吉田茂や官僚たちの暗闘が、当事者の証言もまじえて本書では描かれています。

掲載:2023年2月24日

担当編集者のひとこと

言われてみれば

 NHKに受信料を払う大前提は「公共放送」だから、というものです。
 しかし、では「公共放送」とは何か。あるいは「公共性」とは何か。
 改めて問われてみると、意外と難しいことに気づかされます。

「CMを流していないから公共性がある」というのは答にならないでしょう。そもそも世界に目を向ければ、公共放送だけれどもCMを流している局が結構あります。

「客観的で公平な報道」をNHKが志しているのはよくわかりますが、ではNHKだけがそういう志を持っているかといえばそうではありません。民放でも同じ考えのはずです。
 災害の時に役立つ、というのも同様で、ひとたび大災害が起きれば民放も災害情報を発信します。しかも被災者の多くは現在、テレビではなくスマホで情報を得るはずです。

 本書は、受信料制度の成立の経緯を見つつ、この根源的な問いに答えていきます。戦後、受信料制度を推進した吉田茂総理らの思惑を知ることで、メディアの見え方も一変するのではないでしょうか。

2023/02/24

著者プロフィール

有馬哲夫

アリマ・テツオ

1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『日本人はなぜ自虐的になったのか』など。

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