山本由伸 常識を変える投球術
858円(税込)
発売日:2023/02/17
- 新書
- 電子書籍あり
肘は曲げない、筋トレはしない、スライダーは自ら封印……。「規格外の投手」はどのように生まれたのか?
肘は曲げない、筋トレはしない、得意球のスライダーは自ら封印――。いまや日本球界最高の投手に登り詰めた山本由伸は、あらゆる面で「規格外れ」である。そもそも身長178センチ、体重80キロとプロとしては肉体的に恵まれていない山本が、どうしてここまでの成長を遂げたのか。ブリッジややり投げを取り入れたトレーニングの理由や独特の思考法、そして目指す未来まで、野球に精通したライターが徹底解読する。
書誌情報
読み仮名 | ヤマモトヨシノブジョウシキヲカエルトウキュウジュツ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 朝日新聞社/写真提供、ゲッティ イメージズ/写真提供、新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610985-0 |
C-CODE | 0275 |
整理番号 | 985 |
ジャンル | 実用・暮らし・スポーツ、スポーツ・アウトドア |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 858円 |
電子書籍 配信開始日 | 2023/02/17 |
蘊蓄倉庫
筒香嘉智との関係
山本由伸はプロ1年目の2017年のオフから、柔道整復師の矢田修氏の元で、「BCエクササイズ」という独自のトレーニングを続けているのですが、このトレーニングを山本に先駆けて続けていた野球選手がいます。筒香嘉智です。BCエクササイズは大変かつ地道な内容で、試みる野球選手も少なくありませんが、継続しているのは筒香や山本を含めて、ごくわずか。山本にとって、7つ年上で後輩のために協力を惜しまない筒香の存在は大きかったようで、本書の中でも「筒香さんが近くにいたから(トレーニングを)頑張れたっていうのも一つあります」と証言しています。
掲載:2023年2月24日
担当編集者のひとこと
野球が好きな人にだけおすすめします
オリックス・バファローズの絶対エース、山本由伸が現在、日本プロ野球で最高の投手であることは間違いありません。2年連続でパリーグの投手5冠(勝利数、防御率、奪三振数、勝率、完封数)を獲得しただけでなく、先発投手としての最高の勲章である沢村賞とリーグMVPも2年連続で受賞しています。チームも日本一となり、年俸も来シーズンでは球団史上最高額と見られる6億5千万円にまで到達しています。
3月に行われるWBCを戦う日本チーム(通称侍ジャパン)でもエースと言える山本ですが、実はあらゆる面で「規格外」と言える投手です。
現在の主流の投げ方は、肘をたたんでテイクバックを小さくするもの(ダルビッシュ有が典型例)ですが、山本は肘をほとんど曲げません。これは時に「アーム式」などと呼ばれて、従来の常識ではあまり評価されない投げ方です。
また、大流行の筋トレもやっていません。現在のプロ野球の投手は、筋トレで身体を大きくし、投げる球のスピードを上げて、肘がそれに耐えられなくなったらトミージョン手術を受けて復活する、までがセットになっている状態ですが、山本のアプローチは全くことなります。やり投げやブリッジを取り入れた「BCエクササイズ」と呼ばれる独特のトレーニングを地道に続け、特定の部位ではなくトータルとしての身体の鍛錬を意識しており、肘には過剰な負担をかけない。筋トレはせずとも筋量は増大しており、肉体のバージョンアップも続いています。
そもそも、山本は身長178センチ、体重80キロと、平均でも身長が180センチを超えているプロ野球選手としては小柄な部類に入ります。それでも圧倒的な成績をあげ続けているのは、この独特のトレーニングに加え、彼の思考法にもあります。
山本の投球術のバージョンアップは今も続いており、3月のWBCおよび来シーズンを見据えた現在のキャンプでは、左足をほとんど上げない投球フォームを採用しています。本書の第四章のタイトルは「『何か変』なピッチングフォーム」となっていますが、従来の常識で言えば、この投球フォームも何か変。でも、本書を読んで、山本の考え方を知った後だと、「なるほど、そういうことか」「そういう考え方だから、こんどは足の上げ方が変わったんだな」と納得できます。
自分の感覚を何とか外在化しようとして発せられる山本の言葉は決して分かりやすくありませんが、野球を知り尽くす著者の中島さんが、「こういうことか」とすこしずつ彼の思考と行動に迫っていきます。「野球が大好きな一般人代表」の著者が、超一流選手の言葉の背後にあるものを探るプロセスじたいが極上のエンタメになっている、という本です。
ここまで読んだ方にはお分かりの通り、野球に興味がない人が読んでもまったく意味がない本ですが(笑)、野球好きなら必ず刺さる本です。こういう蘊蓄話が大好物の野球好きなら、居酒屋トークのネタ数時間分にはなるでしょう。
ご興味がある方は、ぜひご一読ください!
2023/02/24
著者プロフィール
中島大輔
ナカジマ・ダイスケ
1979年埼玉県生まれ。上智大学卒。スポーツ・ノンフィクション作家。著書『中南米野球はなぜ強いのか』で第二十八回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に『野球消滅』『プロ野球 FA宣言の闇』など。プロからアマチュアまで野球界を広く取材している。