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官邸官僚が本音で語る権力の使い方

兼原信克/著 、佐々木豊成/著 、曽我豪/著 、高見澤將林/著

946円(税込)

発売日:2023/03/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

国家戦略かくあるべし。安倍官邸のインサイダーが証言する「政治主導」の舞台裏。

総理大臣には働いてもらわなければならない。それも最初から、全力で。しかし、巨大タンカーのごとき日本政府を操るにはコツが必要だ。政治家の意思で、霞が関は動かせるのか。そして「本物の有事」に直面した時、政治は自衛隊などの実力部隊をコントロールできるのか。歴代最長の安倍政権で内政・外政・危機管理の各実務トップを務めた官邸官僚が参集し、適切な権力行使のための「官邸のトリセツ」を公開する。

目次
はじめに
第一章 官邸主導の虚実
「政治主導」がうたわれた平成の政治改革
総合調整機能を期待されるようになった内閣官房
「君の最大のミッションは法案を潰すことだ」
天皇型総理と将軍型総理
危機の様態の変化が政治主導を求めた
「強すぎる官邸」を官僚は嫌がるのか
役人を排除した民主党政権
北澤防衛大臣の功績
組織と人の相互作用
権力の本質
内閣人事局によって、官邸の人事権は強くなったのか
将軍室と幕閣
トップダウンとボトムアップ
第二章 危機管理への対処
危機管理監、対策室設置の効果
プッシュ型支援
「そんなことはもういい!」と言える人が出てくるか
権力の本能としての修正能力
実力部隊をきちんと動かせるか
飲み会はけっこう大事です
役人みたいな政治家が増えた
海上自衛隊と海上保安庁の関係
第三章 安全保障の司令塔としての官邸
総力安全保障
自衛隊は動けるが、その周辺は怪しい
権力は「大魔神」
自民党議員から民主党幹部に伝えられたメッセージ
「有事を前提とした適法性」を議論すべし
警察に残るカンボジアPKOのトラウマ
尖閣国有化、小笠原へのサンゴ密漁船
日本の総理に「ヤルタ会談」ができるか
常設の統合司令部を
陸海空の総隊司令官が官邸に来なかった理由
自衛隊の演習に閣僚を参加させよ
「国民が死ぬかも知れない」というリアリティ
第四章 予算編成、財政、通商問題
予算編成は総合調整
日本の国会議員には「財政均衡派」がいない
海保の予算増を実現させた官邸官僚の一言
円安で実質的に「使いで」が減っている防衛費
国家戦略的な観点から財政問題を語れ
自衛隊が戦うのは「3回の表」まで?
防衛費を2倍にするなら、防衛省の研究開発費を1兆円に
「予算の中身の議論」ができるようになるか
政治主導がうまくいったTPP交渉
日本の交渉団は「ホテル負け」していた
EUとの経済連携協定もうまくいった理由
甘利大臣の功績
第五章 インテリジェンス
インテリジェンスを使わない日本政府
対外諜報庁を設置せよ
国家安全保障局が情報の流れを変えた
政府クラウドはAWSにするのがいい?
セキュリティクリアランスの必要性
1万人規模のサイバー軍を
第六章 メディアと戦略コミュニケーション
政治メディアの制度疲労
政治記者は政治家の指南役だった
政治記者のキャリアパスに変化
官邸の戦略的コミュニケーション
第七章 内閣官房と内閣府の役割分担
問題は海と宇宙
「軍事をやりたがらない」宇宙コミュニティ
沖ノ鳥島に空港は作れるか
学術会議の問題

書誌情報

読み仮名 カンテイカンリョウガホンネデカタルケンリョクノツカイカタ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 272ページ
ISBN 978-4-10-610989-8
C-CODE 0231
整理番号 989
ジャンル 政治
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2023/03/17

蘊蓄倉庫

国際交渉の「ホテル負け」

 日本はしばしば「国際交渉ベタ」と言われますが、その理由には「ホテル負け」という事情があります。大きな国際交渉はホテルを一棟借りして行いますが、その料金が高く、日本の旅費法ではなかなか払えない。だから日本の交渉団は、メインのホテルを離れて郊外のちょっと安いホテルに泊まり、毎朝バスに乗って会場に駆けつけるということになりますが、そうすると本会議の後の根回しや合従連衡に加われないわけです。
 日本が流れを作ったTPPの交渉ではこの点を考慮し、旅費法の例外として上限を撤廃できるよう財務大臣の承認を事前に取り付けたそうです。

掲載:2023年3月24日

担当編集者のひとこと

岸田総理必読! 「官邸のトリセツ」を大公開。

 国際情勢が急速にきな臭くなっています。ウクライナに侵略したロシア、台湾への野望を隠さない中国、ミサイル実験を続ける北朝鮮など、既存の国際秩序に挑戦する勢力に取り巻かれている日本の状況はとりわけ厳しく、政府も向こう5年間で43兆円という、従来とはレベルの違う防衛支出を決定しました。

 一方、国内では2022年に出生数が80万人を割るなど予想を遙かに超えるペースで少子化が進んでおり、少子高齢化が止まりません。政府債務の残高はすでにGDPの2倍を優に超えていますが、こうした状況ではこれまで以上に適切な歳出管理が必要になります。要するに「政治のイニシアティブ」が従来よりも遙かに重要になっているのです。

 しかし、日本政府は巨大なタンカーのようなもの。そう易々と操縦できるものではありません。政府を動かす政治家、とりわけ総理大臣には、就任当初から全力で働いて貰わなければなりませんが、権力を動かすには「コツ」がいるのです。

 本書の著者のうち三人は、歴代最長を記録した安倍政権の官邸で、実務各分野のトップにあたる「内閣官房副長官補」を務めました。外務省出身の兼原氏が外政、財務省出身の佐々木氏が内政、防衛省出身の高見澤氏が安全保障と危機管理という役割分担になります。

 安倍政権は、集団的自衛権の部分的行使を容認した平和安全法制、アメリカが離脱して瀕死だったTPPをTPP11として再生させての締結、二度の消費税増税など多くの実績を残しましたが、それがなぜ可能だったのか。また、その安倍政権でも実現できなかった課題とは何なのか。インサイダーの視点で語っています。平成以降の日本政治を見続けてきた朝日新聞編集委員の曽我氏も加え、「官邸のトリセツ」を残すつもりで座談会を試みました。

2023/03/24

著者プロフィール

兼原信克

カネハラ・ノブカツ

1959年山口県生まれ。同志社大学特別客員教授。東京大学法学部を卒業後、1981年に外務省に入省。フランス国立行政学院(ENA)で研修の後、ブリュッセル、ニューヨーク、ワシントン、ソウルなどで在外勤務。2012年、外務省国際法局長から内閣官房副長官補(外政担当)に転じる。2014年から新設の国家安全保障局次長も兼務。2019年に退官。著書に『歴史の教訓――「失敗の本質」と国家戦略』などがある。

佐々木豊成

ササキ・トヨナリ

1953年佐賀県生まれ。元財務官僚。1976年に東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。主計局主計官、金融庁銀行第一課長、大臣官房審議官、国税庁次長、理財局長などを歴任。2010年、財務総合政策研究所長から内閣官房副長官補(内政担当)に転じる。2013年、内閣官房TPP政府対策本部国内調整総括官。2016年に退官。

曽我豪

ソガ・タケシ

1962年三重県生まれ。朝日新聞東京本社政治部編集委員。1985年に東京大学法学部を卒業後、朝日新聞社に入社。熊本支局、西部本社を経て、1989年に東京本社政治部に異動し、総理番、梶山静六自民党幹事長番などを担当。『週刊朝日』『論座』編集部勤務などを経て、2011~2014年に朝日新聞政治部長。2015~2019年、東京大学大学院法学政治学研究科客員教授。

高見澤將林

タカミザワ・ノブシゲ

1955年長野県生まれ。東京大学公共政策大学院客員教授、元防衛官僚。1978年に東京大学法学部を卒業後、防衛庁(現防衛省)に入庁。防衛局運用課長、防衛局防衛政策課長、運用企画局長、防衛政策局長などを歴任。防衛研究所長の後、2013年に内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)。2014年から新設の国家安全保障局次長、2015年から内閣サイバーセキュリティセンター長を兼務。2016年に退官後、ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部大使に就任(2020年まで)。

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