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メディアはなぜ左傾化するのか―産経記者受難記―

三枝玄太郎/著

924円(税込)

発売日:2024/05/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

「正義のため」って本当? 揉めた、焦った、抜いた、抜かれた……現場を這いずり回った受難の日々。

事件記者になりたい一心で産経新聞に入社した著者は、現場での同業者たちに違和感を抱くようになる。なぜ彼らは特定の勢力や団体に甘いのか。左派メディアは、事実よりもイデオロギーを優先していないか。ある時は警察と大喧嘩をし、ある時は誤報に冷や汗をかき、ある時は記者クラブで顰蹙を買い、そしてある時は「産経は右翼」という偏見と闘い……現場を這いずり回った一人の記者の可笑しくも生々しい受難の記録。

目次
まえがき
1 「会社を辞めろ」と言われた日
2 心情左翼なのに産経新聞に入ってしまった
3 NHKも新聞も殺人犯の言い分を垂れ流していた
4 古参の刑事が語る「冤罪論」を聞く
5 記者クラブで顰蹙を買う日々を過ごす
6 被告人の親族に怒鳴られる
7 殺人鬼の無罪を信じた共同通信の記者に驚いた
8 記者クラブの掟を破って朝日記者の嫌がらせに遭う
9 人権派記者は警視庁には来ない
10 警察幹部の目の前で取材メモを踏みつけた
11 取材協力者のおばさんはひたすら怪しかった
12 歴史教科書を巡るマッチポンプに呆れる
13 「沈黙の艦隊」の担当で幻聴に悩まされる
14 住民運動の主は後ろ暗かった
15 民主党の政治とカネにメディアは甘かった
16 左派と右派の対立は激化していった
17 マッド三枝、沖縄を行く
あとがき

書誌情報

読み仮名 メディアハナゼサケイカスルノカサンケイキシャジュナンキ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-611044-3
C-CODE 0236
整理番号 1044
ジャンル マスメディア、ビジネス・経済、産業研究
定価 924円
電子書籍 価格 924円
電子書籍 配信開始日 2024/05/17

インタビュー/対談/エッセイ

川口市「クルド人問題」から見える左派メディアの「病」

三枝玄太郎

 埼玉県警川口署は3月7日、不同意性交の疑いで、トルコ国籍の自称解体工の男(20)を逮捕した。東京都内に住む女子中学生に性的暴行をした容疑だ。これを伝えた地元紙には、事件の概要が掲載されている。しかし、男がクルド人であるとはどこにも書かれていない。
 川口市では1990年代以降、トルコから移住してきたクルド人と地元住民との間に軋轢が生じている。僕がちょっと取材しただけでも、地元の声として、ゴミ問題、公園の使用方法、若い女性に声をかけるなどの迷惑行為、危険な運転などを深刻に受け止めているという話が聞こえてきた。
 だが、産経新聞グループや読売新聞以外のメディアはこうした負の側面に目を向けず、彼らクルド人がいかにトルコ政府から抑圧され、虐げられているかという側面ばかり取り上げる。ちなみに前述の事件について、産経新聞では、男はトルコ生まれ日本育ちの在日クルド人で、事実上の「移民2世」だった、と報じている。
 昨年6月、川口市議会は「一部外国人による犯罪の取り締まり強化」を国や県などに求める意見書を可決した。市議の大半がクルド人を念頭に置いて議論をしていた、とこれも産経新聞は伝えている。しかし他のメディアはほぼ無視だ。朝日新聞はご丁寧にも読者投稿欄「声」で、こうした議会の動きは「ヘイトにお墨付きを与えるようなものだ」という意見を紹介している。
 むろん、一部右翼系団体のようにわざわざ埼玉まで出かけて行って「出ていけ」とデモをするのは賛成できない。だが、地元住民の声を伝えるような報道まで「ヘイト」と片付けていいのだろうか。事件や騒動の背景にあるかもしれない当事者の属性を伝えない。それでは事実に立脚した報道からかけ離れる一方ではないか。
 平成の初頭、「北朝鮮が日本人を拉致したらしい」と言おうものなら、「偏向している」「ありえない」と言われるのが常だった。現在ならば、間違いなく「北朝鮮及び朝鮮人民に対するヘイトスピーチだ」とレッテルを貼られることだろう。
 左派メディアは、イデオロギーの邪魔になるものは、極力、国民の目に触れさせない、という「ドグマ(教義)」を持っているように見える。
 僕は産経新聞の記者として約30年間、現場で取材をしてきた。その記録をまとめたのが『メディアはなぜ左傾化するのか―産経記者受難記―』だ。
「右翼記者」「右翼新聞」などと他社の記者に言われて口論になったことは一度や二度ではない。しかし、僕はイデオロギーを優先して記事を書くべきではないと思っていた。ひたすら他社を出し抜いて、特ダネを書くことに注力してきたつもりだ(ただし、本書にも書いた通り、しくじりのほうが多かったかもしれない)。報道機関の果たすべき役割は、右だろうが左だろうが、事実の前に謙虚になることではないか、と思うのだ。

(さいぐさ・げんたろう フリーライター・元産経新聞記者)

波 2024年6月号より

蘊蓄倉庫

新聞記者たちが「市民団体」好きな理由

「右翼団体」という表現は目にするものの、「左翼団体」とは書かれずに「市民団体」と書かれるのはおかしい、といった声はよく目にします。おかしいかどうかはさておき、市民団体のアピールが記事化されることは珍しくありません。これについて「メディアも左翼だからだ」といった分析もあります。元産経新聞記者の三枝玄太郎氏によれば、そういう背景もあるにせよ、もっと身も蓋もない理由もあるのだ、とのこと。
 地方の支局にいると、記者クラブに「市民団体」によるレクチャーや記者会見が頻繁に行われるのだそうです。これに出席して記事にすると紙面が埋まる。ありがたい。そんな理由から、各社にとって「バックが何であろうとわざわざ記者会見を開き、レクをやってくれる団体はありがたい存在だった」というのです。
 こうしたエピソードがふんだんの『メディアはなぜ左傾化するのか―産経記者受難記―』は、現場にこだわり続けた記者でしかかけない、可笑しくも生々しいレポートとなっています。

掲載:2024年5月24日

担当編集者のひとこと

その「左寄り」には理由がある

 日本の、メディアの、若者の「右傾化」を心配する人がいます。一方で、日本の、メディアの、若者の「左傾化」を心配する人もいます。
「〇〇政権以降、一気に戦前に回帰している」と言う人もいれば、「隣国の工作により、左傾化が進んでいる」と言う人もいます。
 どちらの意見も、そうなっているにはシリアスな背景があるのだという認識があるようです。実際にそういう面もあるのでしょうが、一方でもっと身も蓋もない事情、バカらしい理由もある。問題は、本来、事実を追求する立場の記者が最初から偏っていることがある点かもしれません。『メディアはなぜ左傾化するのか―産経記者受難記―』(三枝玄太郎著)で著者の新人時代のエピソードとして、他社の同期の記者のことが紹介されています。出会った時からどこかで会ったことがあるような気がするその男性は、著者の学生時代、同じキャンパスで教授を吊るし上げていた運動家だった、というのです。この記者とはその後、意外な場所で再開することになるのですが――。
 本書は「右翼新聞」「右翼記者」などと罵られながら、ひたすら現場で格闘した記者の受難の記録です。学者や評論家の論考とは一線を画した可笑しくも生々しい現場からの報告からは、メディアを考えるうえで重要な視点を必ず得られることでしょう。

2024/05/24

著者プロフィール

三枝玄太郎

サイグサ・ゲンタロウ

1967(昭和42)年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1991年、産経新聞社入社。警視庁、国税庁、国土交通省などを担当。2019年に退職し、フリーライターに。著書に『十九歳の無念 須藤正和さんリンチ殺人事件』など。

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