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野球の記録で話したい

広尾晃/著

1,034円(税込)

発売日:2025/04/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

●佐々木朗希の「約束された未来」●メジャーで活躍できる日本選手の特徴●出身校別ベストナインを決定! あらゆるデータを駆使して、野球を遊び尽くす。

なぜ金田正一は空前絶後の通算400勝を達成できたのか。王貞治の本塁打ではない「異次元の記録」とは。日米の実力格差を「数値化」するとどれくらいになるのか──。通算記録、シーズン記録だけでなく、守備記録から二軍の記録、果ては「出身学校別」「名前別」ベストナインまで、ありとあらゆるデータを駆使して野球を遊び尽くす。大人気ブログ「野球の記録で話したい」運営者によるマニア垂涎の一冊。

目次

はじめに 「野球の記録で話したい」で15年

第1章 アンタッチャブルな記録たち

1-1 通算記録のアンタッチャブル
世界に冠たる王貞治の868本塁打
“天皇”金田正一の400勝
「安打製造機」張本勲の3085安打
「自然体」福本豊の1065盗塁

1-2 シーズン記録のアンタッチャブル
惜しい! 稲尾和久の42勝
天才の証、江夏豊の401奪三振
双葉より芳し、イチローの210安打
コラム・ワンポイントリリーフ(1) もう! なぜ走った?

第2章 ベストナインで遊ぼう

2-1 「名前」のベストナイン
真面目派の「田中ベストナイン」
質実剛健「佐藤ベストナイン」
豪傑揃いの「山本ベストナイン」
スピード感なら「鈴木ベストナイン」

2-2 出身高校別ベストナイン
プロ野球に選手を輩出した高校ベスト20
すごすぎるだろ! 「PL学園高校ベストナイン」
戦前から今まで「横浜高校ベストナイン」
個性派揃い「中京大中京ベストナイン」
渋い名手なら「広陵高校ベストナイン」

2-3 出身大学別ベストナイン
東京六大学ベストナイン
一世風靡した「明治大学ベストナイン」
各チームの大黒柱が揃う「法政大学ベストナイン」
シャープな印象の「早稲田大学ベストナイン」
花形選手が多い「慶應義塾大学ベストナイン」
やっぱり長嶋世代「立教大学ベストナイン」
やっぱりエリート「東京大学ベストナイン」
コラム・ワンポイントリリーフ(2) あと一つ、走ってもらいたかった!

第3章 守備記録の面白さ

3-1 守備記録「今と昔」
3-2 外野守備は「何」を見るか
3-3 「一番すごい二遊間」はどのコンビなのか?
コラム・ワンポイントリリーフ(3) いちばん若いプロ野球選手は?

第4章 打撃記録をめぐるあんな話、こんな話

4-1 「NPB通算打率」をめぐるもやもや
4-2 「4割打者」がどれほど難しいか!
4-3 TBAから見えてくる打者の本当の実力
コラム・ワンポイントリリーフ(4) 「名球会」惜しい打者たち

第5章 「ファーム」もう一つのプロ野球の世界

5-1 二軍の打撃成績
5-2 二軍の投手成績
5-3 レジェンドたちのファーム成績
コラム・ワンポイントリリーフ(5) 川相昌弘の「通算犠打数世界一」は大記録なのか?

第6章 記録で実感する「日米格差」

6-1 スタットキャストから見えるMLB打者のランキング
6-2 打者、投手はMLBでどれだけ「小型化」するのか
6-3 メジャーで通用する投手、しない投手
コラム・ワンポイントリリーフ(6) 「名球会」惜しい投手たち

おわりに 「野球記録」の楽しみ方

書誌情報

読み仮名 ヤキュウノキロクデハナシタイ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-611086-3
C-CODE 0275
整理番号 1086
ジャンル 実用・暮らし・スポーツ、スポーツ・アウトドア
定価 1,034円
電子書籍 価格 1,034円
電子書籍 配信開始日 2025/04/17

蘊蓄倉庫

あと一つ走っていれば……

 日本のプロ野球で盗塁成功率をランキングするときには、通常「通算盗塁数200以上」の選手が対象となります。現在、トップは現役の西川遙輝(ヤクルト)で、盗塁342に盗塁死66、盗塁成功率は0.838となっています。
 でも、この西川の数字を覆していたであろう「惜しい選手」がいます。イチローです。イチローの日本での盗塁数は199個で、盗塁成功率は0.858。成功率は西川を遙かに抜いています。もしあと一つだけでも盗塁を決めてからメジャーに行っていたら、イチローのすごさを示す記録がもう一つ増えていたことでしょう。

掲載:2025年4月25日

担当編集者のひとこと

稲尾の42勝

 著者の広尾さんは、著書と同名の「野球の記録で話したい」というブログを運営されています。「野球の記録で話す」ことは趣味にして仕事であり、「いちばんスキなこと」。本書は、そんな広尾さんが「これは面白い。知って欲しい」と考えた野球の記録を集めまくった本です。

 掲載された「記録」には、金田正一の400勝、王貞治の868本塁打といった「通算記録」の詳しい分析もあれば、江夏豊の401奪三振、イチローの210安打といった「シーズン記録」の分析もあります。
 詳しい記述は本書に譲りますが、私が「うへ~」と驚いた事実をひとつ。42勝をあげた1961年の稲尾和久の成績です。この年の稲尾は、投球回が404回(!)もありました。今どきの先発では、その半分の200回を投げる投手も皆無。しかも、この年の稲尾は先発で30試合.258.1回、救援でも48試合145.2回も投げています。これ、先発でも救援でも、規定投球回数に達してしまっているのです。防御率は先発で1.67、救援で1.73で、合算して1.69。ちなみに勝利数は先発で24勝、救援で18勝です。
 つまり、この年の稲尾は、先発だけでも救援だけでも現代のプロ野球なら最多勝と最優秀防御率のタイトルを確実に取っていた、ということになります。いや~、凄すぎる! と同時に、野球というスポーツの変質が、こんな記録が雄弁に物語ってくれていることも分かるのです。

 私のようなオールドファッションの野球好きのおっさんには、こういう記録話がツボなのですが、会社で企画説明をしていたときに、本書の中で関係者の食いつきが良かったのが「ベストナイン」企画。これは、「名前別」「甲子園常連の出身校別」「東京六大学の出身校別」のベストナインを決めるというお遊びです。

 例えば、「山本」でベストナインを組んでみると、投手は通算200勝超えの山本昌(中日)、外野には山本浩二(広島)や山本和範(ダイエー)などが配される。「鈴木」なら、投手は通算300勝超えの鈴木啓示(近鉄)で、外野には鈴木尚典(横浜)、鈴木誠也(広島)、イチロー(オリックス)の「首位打者トリオ」が並ぶといった具合。名前別ベストテンは、田中、佐藤、鈴木、山本で組んでいますが、眺めていると「山本っぽさ」「田中っぽさ」といったものが浮き上がってくるから不思議です。
 六大学や甲子園常連校のベストナインも、眺めているとやはり「校風」というものが感じられる。ちなみにこのお遊びを通じて、広尾さんは「法政大学の山本」は無条件に強打者である、という経験則を発見しています。

 その他にも、二軍記録、守備記録、日米の「実力格差」の数値化など、いずれも「へぇ~」と言いたくなる記録が目白押し。特に、日本での成績からメジャーでの活躍の「程度」を推測する分析などは、納得感があります。
 というような内容ですので、野球好きの方が読めば絶対に何かしら「刺さる」ネタがあると思いますが、野球に興味のない方は読んでもしょうがないので手に取らないでください(笑)。球場にいって、売り子のお嬢さんからビールを買って、調子よくなってきたところで同行者に思わず自慢げに語りたくなるような話を集めた本、と言ったら伝わるでしょうか(設定が微妙すぎるかな?)。

 野球ファンの皆様、どうぞご贔屓に。

2025/04/25

著者プロフィール

広尾晃

ヒロオ・コウ

1959年大阪府生まれ。スポーツライター。立命館大学卒業後、広告制作会社、旅行雑誌編集長などを経てライターに。ブログ「野球の記録で話したい」を運営。著書に『巨人軍の巨人 馬場正平』『データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか』などがある。

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