来たる人
1,870円(税込)
発売日:2024/04/25
- 新潮社図書編集室
だれがだれを招いているのか、だれがだれを拒んでいるのか。――未踏の地を切り開く小説。
車を傷つけられ、奪われた歯科医・加地。その周囲を取り巻き、重なり合う被害者と加害者。いったい、何が起こったのか。異なる立場の人物たちが結びつき、交わり合っていく。傷を負った者の視点から状況を眺め、未知の存在との関わりを探り、そして、そこに到来する事態とは? 「得体の知れぬエネルギーと不穏な蠢き」が小説世界に昇華する。太宰治賞受賞後、初の長編。
書誌情報
読み仮名 | キタルヒト |
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装幀 | iStock.com/カバー写真、_OSSA_/カバー写真、新潮社装幀室/装幀 |
発行形態 | 新潮社図書編集室 |
判型 | 四六判 |
頁数 | 344ページ |
ISBN | 978-4-10-910277-3 |
C-CODE | 0093 |
ジャンル | 文芸作品 |
定価 | 1,870円 |
論評
われわれはどこから来て、どこに向かうのか。
由井鮎彦の到達点にして、表現の未知なる未来がここにひらかれる。
安藤礼二
何者かに傷つけられ、何者かに奪われる車。それは悪意なのか恩寵なのか。
未知なるもの、〈あいつ〉に導かれ、未知なるもの、〈あいつ〉の出現を待ち望む。
空虚にして充溢する海。すべてを呑み込み、すべてをもたらす海。そこから漂着し、そこに堆積していく特異な「もの」たち。世界が始まり、世界が終わる場所。
類似し相違する分身にして鏡像たちがさまざまな場所を彷徨し、分離と結合を、対話と衝突を、敵対と協力を繰り返す。静寂に閉ざされた地下駐車場から、無限の響きを奏でる果てしのない浜辺へ。見るものが見られるものに変貌し、覗くことが隠れることに転換する。
(あんどう・れいじ 文芸評論家)
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著者プロフィール
由井鮎彦
ユイ・アユヒコ
東京都生まれ。『会えなかった人』で第27回太宰治賞、第9回絲山賞を受賞。著書に『後ろの国のサル/隣人たち』(新潮社図書編集室)がある。
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