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「球形」の時空
「新潮」3月号
定価900円
2月7日発売


 ハンブルクを拠点に、日本語とドイツ語の両国語で作家活動を続ける多和田葉子氏から「球形時間」一挙三百枚が届きました。プラットホームに尻をついて化粧する、いまどきの女子高生サヤの鋭敏で、挑戦的な、意識と行動を通して、現代が隠蔽する神話的世界を鮮やかに開示した意欲作。授賞式に現れなかった大物、鈴木弘樹氏の新潮新人賞受賞第一作「雨」は、風俗産業に新興宗教のいかがわしさを重ね合わせ、緒方圭子氏「ヴァージン・ロード」は、三十代の独身女性の生と性を平然と晒して、負けずに問題を投げかけます。
 昨年十一月、アメリカの人気女性作家レベッカ・ブラウンが来日した折、彼女のファンで訳書もある野中柊さんと対談をしてもらった。新作「ナポレオンの死」(柴田元幸訳)と合わせ、お楽しみください。
 エッセイは吉村昭氏「資料の処分」など。宮本輝氏の自伝的長編第四部「天の夜曲」は今号で完結の予定。
(編集長・前田速夫)
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)