信不信をえらばず
「新潮」5月号 定価900円 4月6日発売

構想十年、佐江文学の頂点ともいうべき鮮烈な長編が完成しました。一挙掲載の佐江衆一氏「わが屍は野に捨てよ 一遍遊行」三六○枚。一遍が遊行に伴った謎の女人は、超一が側室、超二が娘という設定からして衝撃的ですが、男女の愛欲に溺れ、領地争いから敵を殺めもした情念の人が、熊野で「信不信をえらばず、浄不浄をきらわず」というお告げに接したのを転機にして、不穏な中世をいかに生き、いかに死んでいったか。その円熟した筆致は、現代の闇に呻吟するわれわれを叱咤し、覚醒を促すがごとくです。
二大対談は小島信夫・堀江敏幸氏「われらが小説作法」と、養老孟司・斎藤孝氏「身体のニッポン」。島田雅彦氏「未刊の辞」は、新著『美しい魂』が刊行延期になった経緯と理由を述べ、岡谷公二氏「パラオ好日」一○○枚は、南島の土方久功と中島敦をめぐる評伝。新連載の渡辺保氏「遠くて近松物語」もお楽しみに。
(編集長・前田速夫)
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)
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