本・雑誌・ウェブ
ヒロインのけなげさ、哀れさ
「新潮」9月特大号
定価950円
8月7日発売


「放浪記」の成功は、その後の破天荒な人生のほんの序章にすぎなかったーー。巻頭は、大竹しのぶ扮する林芙美子が評判の、井上ひさし氏ひさびさの評伝劇「太鼓たたいて笛ふいて」。菊池寛、坂口安吾、小林秀雄、河上徹太郎、大岡昇平ら、華麗な男性遍歴の果てに自死した、「花影」のヒロイン葉子のモデル坂本ムツ子。彼女の何が男たちを虜にしたのか? 久世光彦氏「イタリイの乞食」は、長編小説「女神」の第一回。
 バース、ピンチョンと並ぶ現代アメリカ文学の巨星ドン・デリーロの特集は、新作「ボディ・アーティスト」の全訳と、巽孝之氏「アンダーグラウンドを読む」。その前衛的な作風は、作者が言語の力へ寄せる圧倒的な信頼を、逆説的に証明しています。
 ほかに、葉石 「私の台湾文学六十年」や川本三郎氏「庄野潤三論」など。足かけ六年に及んだ立花隆氏の連載「東大講義 人間の現在」は、今号で完結。
(編集長・前田速夫)
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)