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文学のボーダーライン
「新潮」4月特大号
特別定価950円
3月6日発売


 今月の巻頭作は辻仁成氏の長篇「刀」(六百枚)である。辻氏が小誌掲載の「海峡の光」で芥川賞を得たのは七年前。当時、「波」誌上で辻氏は受賞作執筆時の、ある特別な体験を語っている。「『書きなさい』と誰かに命じられているような不思議な感じでした」。いま同じ事態が、作者に再度生じた。自己の中の他者に憑かれた小説家の問題作である◎ミステリーの枠を超え、時代の病理から物語を紡ぎ続ける桐野夏生氏。その最新長篇『残虐記』(小社刊)を入り口に、現代の文学的想像力をめぐり、桐野氏と松浦理英子氏が対話する◎芥川賞が劇的に若年化し、純文学やミステリーといったボーダーラインを揺るがせる作品が相次ぐ今、小説はどこに向かうのか。近著『小説の未来』などで挑発的な議論を提示した加藤典洋氏が問う◎川上弘美氏の連作最新作ほか、車谷長吉、稲葉真弓各氏の短篇も充実。
(編集長・矢野優)
■年間講読料一〇八〇〇円(12冊 税・発送費込)