本・雑誌・ウェブ
欲望が、欲望を
「新潮」12月号
定価900円
11月6日発売


◎書き手と編集者は創造をめぐり欲望を交換する。駆け引きする。だが編集者が一番幸福なのは、書き手が「この物語を書きたい」「この主題について批評したい」という剥き出しの思いをぶつけてくれる瞬間だろう◎今回、特集〈日本←→現在←→文学〉として掲載する五つの批評作品はいずれもテキストとの出会いが評者に喚起した欲望の産物だ。渡部直己氏「今日の天皇小説」、中沢けい氏「虚無と距離」、田中和生氏「『スターバックス』のリアリズム」、坪内祐三氏「福田章二論・続」、そして椹木野衣氏の田口賢司論◎もちろん小説家は批評されるばかりでない。平野啓一郎氏「『フェカンにて』」(150枚)、生田紗代氏「十八階ビジョン」(100枚)の力作中篇ほか、小島信夫、清水アリカ、長嶋有、中原昌也、日和聡子、古井由吉の各氏がもっとも新たな創作で私達を挑発し、私達の読むことの欲望はまた書き手たちに送り返される。それが文芸誌という空間だ。
(編集長・矢野優)