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六○○○度の愛

「新潮」2月号
特別定価950円
1月7日発売


◎気鋭作家・鹿島田真希氏が長篇「六○○○度の愛」で見事な成長を遂げた。家族と愛(の不毛)をめぐるオブセッシブなまでの探求が長崎という空間の中で、一気に広がりを見せたのだ。四五年八月九日、長崎は六○○○度の熱線に覆われた。核反応直前まで存在していた多くが灰さえ残さず蒸発し消滅した。悲劇の土地の下に、痕跡さえ失った非存在のファントムが潜む。主人公は癒しがたい精神の傷を抱えて長崎を訪れ、一人の青年と出会う。二人は愛の可能と不可能の狭間で激しく引き裂かれるだろう。デュラス「ヒロシマ私の恋人」以降に書くことの困難を作家は敢えて引き受けた。いや、引き受けるしかなかったのだ。
◎二○世紀の最大の知の巨人ジャック・デリダが二○○四年十月に没した。生前より交流のあった柄谷行人、鵜飼哲、浅田彰氏の三氏にデリダが遺した諸問題をめぐり徹底的に討議していただいた。
(編集長・矢野優)