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そろそろ小説書こうか

編集長・矢野優
「新潮」7月号
特別定価950円
6月7日発売



◎以前、小誌にて古井由吉、高橋源一郎、島田雅彦の三氏に語り合っていただいた。そこでの古井氏の発言「50歳過ぎてから新しいものを書き始めるたびに、そろそろ小説書こうかと思うのよね。今まで全然書いてないような気になるのよ」を思い出しつつ、今号掲載の氏の短篇「半日の花」を読んだ。著者と同じく60代後半の主人公が桜並木を歩きながら、三十数年前の友人(青垣)との花見を思い出す。「青垣にたいして、この何十年、ほとんど何も思わなかった自分は、死んでいたにひとしい。その青垣にも今は死なれた」。この、冥界から浮かび上がってくる言葉を私は“新しい”と思う。◎平野啓一郎氏が同時発表する「異邦人#6‐4」他の三篇にも、そのスタイルの実験の底に、若い小説家ならではの“新しいもの”への意志が漲っている◎第18回三島由紀夫賞が鹿島田真希氏の「六○○○度の愛」に決定。受賞直後の著者と笙野頼子氏の対話を掲載する。