ジャッジかスカウトか 編集長・矢野優
「新潮」11月号 特別定価950円 10月7日発売 ◎若い作家のための文学賞選考者は、ジャッジ(審判)であるべきか、スカウトであるべきか。以前、ある大ベテラン作家がそう語って下さった。大飛球でもラインを外れればファールを宣告するジャッジと、空振りであれスイングの鋭さを買うスカウト。無論、ジャッジならではの寛容さがあれば、スカウトの非情な厳しさもある。そんなことを思いつつ、第37回新潮新人賞選考会に立会い、委員の方々の真摯な議論に今年もまた感動した◎二千作近い応募作から選ばれた田中慎弥氏(32歳)の小説「冷たい水の羊」(評論部門は受賞作なし)は、「いじめられる者」の精神を独自のレンズで凝視し続け、「いじめ」の既成イメージを奇妙な感触を持つ未知の概念に変形しようと試みる。ぜひ御一読いただきたい◎6時間にわたり大江健三郎氏に「文学のこと」をうかがった(聞き手・尾崎真理子氏)。この刺激的な体験を読者と分かち合いたく、思い切って紙幅を割いた。 |