文学の事件 編集長・矢野優
「新潮」3月号 定価900円 2月7日発売 今年最初の仕事は1月6日、古井由吉氏と蓮實重彦氏に対話をしていただくことだった。同時期に同大学の同学部で学ばれ、以降、それぞれの形で文学を牽引されてきたお二人の、これが初対談である。当日、古井氏が小誌に執筆されてきた連作小説『辻』(1月刊)を緻密に読みこんできて下さった蓮實氏の第一声を聞いた瞬間、決定的な「事件」が生起したことを確信した。小説をいかに書き、いかに読むか。それ自体が近年の文学的事件であろう『辻』をめぐって始まった議論は文学の本質的かつ原理的な問題にまで深まった。 文学的事件――。たった今生まれたばかりの原稿が次の瞬間にも文学の光景を一変させるかもしれない、という希望を筆者陣と読者と共有すること。今年最初に記す本欄を遅まきながらの年頭の御挨拶としたい。 柳美里氏が久々の長篇『JR高田馬場駅戸山口』を発表する。 |