日本の外で 編集長・矢野優
「新潮」4月号 特別定価950円 3月7日発売 ◎参った! それが今回紹介するチェーホフの本邦初訳作品(短篇11篇)を最初に読んだ時の印象。週刊誌や新聞に精力的に書いていた医学生時代の作品だ。文学の未来は19世紀末モスクワに始まった? そう思われるほど、小説の可能性がラジカルに試され、そして抜群に面白いのだ。現代文学の〈今〉を提示する小誌に120年の時を経て、「驚異の新人」が登場する◎新企画「Soaked in Asia(アジアに浸る)」は、高樹のぶ子氏が九州大学をベースに開始した運動との共同作業だ。現代フィリピンを代表する作家ブリヤンテス氏を現地に訪ね、作品の舞台を共に歩き、高樹氏が感受したことすべてが創作に結実する。二人の文学者の、響きあう二作品を掲載。今後五年間、アジアの十の国をパートナーにこの試みは継続される◎中上紀氏「ニナンサン」(百枚)は、書き手が対峙せざるをえない切実な〈私〉を、韓国を舞台に見事に飛翔させた。 (編集長・矢野 優) |