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文学との「対話」
編集長・矢野優
「新潮」5月号
特別定価1000円
4月7日発売



◎「十八歳で『恋をしに行く』を読み、私は感動した」。そう記す仏文学者・作家の出口裕弘氏が、敗戦直後から今に至る60年間もの作家との〈対話〉を遂に結晶化させた。「坂口安吾 百歳の異端児」(310枚)。本作は氏の『太宰治 変身譚』、『三島由紀夫・昭和の迷宮』に連なる独創的な作家論であり、驚くほどの大胆さで偉大なるアウトサイダーの肖像画を描く。今年生誕百年を迎えた安吾と21世紀に出会うための最高のガイドとなるだろう。文学と〈対話〉することは、このように可能なのだ◎気鋭・日和聡子氏の初長篇「火の旅」も、やはり長い時を介した文学との〈対話〉だ。現代を生きる若い女性、光子は、梅崎春生の名作「幻化」(昭和40年)に導かれ、鹿児島に旅立つ。梅崎の、「幻化」の登場人物達の、そして光子の、重層的に絡まりあう旅の物語◎ピンチョン以降の米文学を牽引するR・パワーズの刺激的な村上春樹論を掲載する。
(編集長・矢野 優)