「文學雜誌」の領域 「新潮」8月号
定価900円 7月7日発売 ◎小誌創刊から間もない明治40年頃から30余年間にわたって編集の中核を担った中村武羅夫の回顧的随筆「文壇と新潮」(昭和21年12月号)を折りに触れて読み返す。たとえば文芸誌が小説以外の領域といかにかかわるかという点について、「狹い文壇意識に囚はれることなく、出來るだけ思想・文化の範圍を擴げるやうに苦心はしたつもりである」とあるのを読むと、ああそうだよなあと思う◎今号では音楽家の細野晴臣氏と中沢新一氏の対話「これからはじまる音楽のために」を紹介する。数十年間の音楽活動を経て、深く広い視座から〈創造〉を語る細野氏の言葉は刺激的だ◎もちろん中村武羅夫が言うように、「飽くまで文學雜誌としての性格は堅持」するつもりだ。先の三島由紀夫賞で議論を呼んだ西村賢太氏の最新力作「暗渠の宿」(110枚)ほかの創作、中原昌也氏が名匠に体当たりした「古井由吉氏にズバリ訊く」などを掲載する。 (編集長・矢野 優) |