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映画はやっぱりあれだろう!

 映画はねぇ、ぼく、映画館は子供同士で行っちゃダメって言われてた。中学生までダメだった。札幌って「街」が1カ所しかないでしょ。東京だと渋谷だとか新宿だとかいろいろあるけれど、札幌は1カ所。その街に行くっていうのは、すなわち不良のやること、みたいな(笑)。だから映画館も親としか行けない。最初に行ったのは「タッチ」の映画版かな。「背番号のないエース」っていうサブタイトルのやつ。
 ジャッキー・チェンの映画も好きだった。とくに「五福星」って作品。子供ながらに「なんじゃこりゃ~!」って感じだった。あれ、うちの近くの公民館での上映会で観たんだよねえ。子供心にすごいおもしろさだった。
 大人になって、自分で映画館に行くようになって観た中でおもしろいと思ったのは、「ダイ・ハード」「ターミネーター2」「スピード」というあたり。アクションが多いな。うん、でも、以前は映画館で観たいのはアクションばっかりだった。その他はビデオでいいとか、そういうセコい考えがあった(笑)。大画面で観たいのは迫力系でしょう、っていう。
 だけどねえ、映画に関しては忘れられない作品がある。大泣きしたやつがね。「鉄道員(ぽっぽや)」ですよお(笑)。「水曜どうでしょう」の北欧の旅で、その帰りの機中で観た。あの北欧って、ぼくらにとって最悪の旅だったことに加えて、エールフランスのダブルブッキングのせいで日本にすぐ帰れないなんて状況になった。早く帰りたい、帰らなきゃいけないのに1週間ほどフランスで待ってろと。ふざけるな!(笑)もう、ほんとに目の前が真っ暗になってどうしていいかわかんなくて、そんときにディレクターの藤村さんが「ここじゃ話にならない!」って、エールフランスの提携先のJALのオフィスに駆け込んでなんとかしてくれた。その機内で上映されたのが「鉄道員」。実は帰りの機内でこの映画が上映されるっていうのは行きのときからわかってて、つらい北欧の旅の間、これを観ることを心の支えにしてたんだよ。「ようやく日本に帰れる!」「鉄道員が観れるんだ!」って、ほんとに涙が出そうな状況で観たから、上映中はぼろぼろぼろぼろ涙が落ちて止まらない。横の席の藤村さんを見たら、やっぱりぼろぼろ泣いてるくせに、横のおれが嗚咽を漏らしそうになってるのに気づいたら、あの野郎、急におもしろがりやがって、おれのほうを見てげらげら笑い始めて。「泣いてるなあ、大泉君!」って、写真撮りだしてさ。迷惑だっつーの。うっとうしい!「おれももう泣きそうだと思ったら、大泉君、横でもっと泣いてんだもん!」だって。くそ。でもあれは思い出に残る映画での号泣だったなあ。あれ以上のシチュエーションで映画を観ることはもうないんじゃないかな。