そろそろ覚悟をきめなければならない。「覚悟」とはあきらめることであり、「明らかに究める」こと。希望でも、絶望でもなく、事実を真正面から受けとめることである。これから数十年は続くであろう下山の時代のなかで、国家にも、人の絆にも頼ることなく、人はどのように自分の人生と向き合えばいいのか。たとえこの先が地獄であっても、だれもが生き生きした人生を歩めるように、人間存在の根底から語られる全七章。

発行形態 : 新潮新書 頁数 : 191ページ ISBN : 978-4-10-610287-5
C-CODE : 0210 整理番号 : 287 発売日 : 2008/11/17

836円(定価)

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覚悟するということ――序に代えて

第一章 時代を見すえる
時代は地獄に近づいている。資本主義が断末魔の叫びをあげ、あらゆることが下降していくなか、「命の実感」が薄らいでいる。

第三章 下山の哲学を持つ
権利とは、何かを保障されることではない。安心・安全はありえない。下りゆく現代、自分を見つめる「哲学」が必要ではないか。

第五章 他力の風にまかせること
人間は、生と死のあいだで引き裂かれた存在である。不条理で、ままならない日々を生きるために、「他力」という意味を知る。

最終章 人間の覚悟
いかに生きるか、ではなく、生きて在ること。そのことにこそ価値がある。その思いが、私たちの唯一にして不滅の光明である。
第二章 人生は憂鬱である
どこの国でも、いつの時代であっても、だれの内にも棲みつづけているもの。人が生まれながらに抱えた「悲苦」を見つめなおす。

第四章 日本人に洋魂は持てない
神はあるのか。罪とは何か――。その答えは、洋の東西で根本的にちがう。二十一世紀にこそ生かされるべき日本人の心性とは。

第六章 老いとは熟成である
アンチ・エイジングはあり得ない。だが、老いることは人間が熟成してゆく過程なのだ。「玄なる世界」で豊かに変わる関係性を知る。
五木寛之 イツキ・ヒロユキ

1932(昭和7)年、福岡県生れ。1947年に北朝鮮より引き揚げ。早稲田大学文学部ロシア文学科に学ぶ。1966年「さらばモスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、1967年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、1976年『青春の門』で吉川英治文学賞を受賞。著書は『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『風の王国』『風に吹かれて』『親鸞』『大河の一滴』『他力』『孤独のすすめ』『マサカの時代』『こころの散歩』『背進の思想』『捨てない生きかた』など多数。バック『かもめのジョナサン』など訳書もある。

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