筒井康隆「メタパラの七・五人」
新潮 2015年3月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2015/02/06 |
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JANコード | 4910049010358 |
定価 | 特別定価998円(税込) |
柴田元幸・訳
文学の伝承/大江健三郎×古井由吉
・宮尾登美子さんの思い出/加賀乙彦
・宮尾さんの性根/津村節子
第二十九回・ホイアン再訪
第一二六回・見えない切手
・旅する夏芙蓉――中上健次に捧げるトレーラー/やなぎみわ
・間のわるさ、進化論、人文学/吉川浩満
・よるのまんなか/青葉市子
・矢作俊彦『フィルムノワール/黒色影片』/青山真治
・阿部和重+伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』/市川真人
・山田詠美『賢者の愛』/谷崎由依
・中村文則『教団X』/町田 康
編集長から
古井由吉の〈現在〉
◎筒井康隆氏の最新作「メタパラの七・五人」(本号掲載)には驚かされた。たゆまぬ創作を通じて小説の根源にある〈虚構性〉を探求してきた筒井氏の新展開と言うべきではないか。メタパラとはメタフィクション+パラフィクション(批評家・佐々木敦氏による概念)のこと。登場人物たちは自らが〈虚構内存在〉であることを意識しつつ、奇妙な家族劇を演ずる。時制は歪み、死者は死者のまま登場し、現実の作者の地声が響く。この特異な世界に魅入られるうち、読者は虚構の見えざる手によって思いもしない世界に連れていかれるだろう◎自らの軌跡を『大江健三郎自選短篇』と『古井由吉自撰作品』により検証して間もない大江氏と古井氏に語り合っていただいた(「文学の伝承」)。古典が私たちに与えてくれるもの。現代文学の古典から切断された局部性。書き続けるしかないことの業。この世界の最先端の場所である〈現在〉を歩み続ける二人の文学者から手渡されたものは重い。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。