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くるりのこと

くるり/著 、宇野維正/著

649円(税込)

発売日:2019/04/26

  • 文庫

唯一無二のロックバンド・くるり。彼らの軌跡がここにある。最新取材を加えた決定版!

くるり――1996年に京都で誕生し、日本の音楽シーンを変えた唯一無二のロック・バンド。岸田繁と佐藤征史の友情の始まり、結成、デビュー、出会いと別れ。バンドの変遷を辿りながら、経験した様々な出来事とその真相をメンバーが語り尽くした。世代を超えて愛され、20年を越える歳月に鍛えられた、彼らの軌跡がここにある。岸田、佐藤、ファンファンへの新たな取材を加えた、決定版。

目次
プロローグ 宇野維正
第一章 くるり、京都で生まれる
岸田が佐藤に出会うまで
佐藤が岸田に出会うまで
岸田と佐藤、楽器を始める
「バンドやらへんか?」
毒猿ペピヲ、始動
大学進学、もっくん登場
くるり、誕生の瞬間
『くるりの一回転』
京都コンプレックス
第二章 くるり、東京の街に出てくる
フジロック地獄紀行
「敬語を話せ」
契約とお金のこと
佐久間正英との出会い
『さよならストレンジャー』
高卒ルーキー
――くるりの人(1)高橋太郎
第三章 くるり、時代を駆け抜ける
98年の世代
『図鑑』
街鳴り
『TEAM ROCK』
「こいつしばく」
『THE WORLD IS MINE』
「くるりにはドラマーが2人いた方がいいよ」
――くるりの人(2)森信行
第四章 くるり、調子にのる
「俺に叩かせろ!」
『アンテナ』
時間かせぎ
『NIKKI』
チャラチャラ期
第五章 くるり、ウィーンに行く
「やっぱりくるりは繁と佐藤のバンドやから」
佐藤征史の狂気
『ワルツを踊れ』
第六章 くるり、京都に帰る
『魂のゆくえ』
ユーミンの伝言
『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』
くるり、5人でリスタート!?
――くるりの人(3)ファンファン
第七章 くるり、また3人になる
「石巻復興節」
『坩堝の電圧』
岸田、佐藤、ファンファン体制に
再上京、独立
『THE PIER』
くるりの逆襲
新章 くるりのネクストステージ
ファンファンの帰還
岸田、再び京都に帰る
新たなライフワーク
『ソングライン』
くるりのこれから
あとがきにかえて 岸田繁
インタビューのこと(文庫版あとがき) 岸田繁×宇野維正

書誌情報

読み仮名 クルリノコト
シリーズ名 新潮文庫
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
頁数 352ページ
ISBN 978-4-10-101371-8
C-CODE 0195
整理番号 く-54-1
ジャンル 芸能・エンターテインメント
定価 649円

書評

くるりへの伝言

松任谷由実

 2009年の12月、私とくるりは1枚のシングルをリリースしました。タイトルは「シャツを洗えば」。アパレルブランド、GAPのキャンペーンソングとして制作した、「くるりとユーミン」名義のコラボ作品です。
 くるりとの共演は、2005年にフジテレビの「松任谷由実のオールナイトニッポンTV」という特番に岸田君を招き、ギターの弾き語りで私の「12月の雨」を歌ってもらったのが最初。さらに2009年には、彼らのトリビュートアルバム「くるり鶏びゅ~と」で、今度は私が「春風」をカバーしています。
 前々から気になっていたくるりとの2度の共演を経て、次に舞い込んできたのがキャンペーンソングのお話でした。
 彼ら二人へのインタビューで構成された、この『くるりのこと』には、「ユーミンの伝言」というパートで、「シャツを洗えば」を共作する際のエピソードが描かれています。その中で、岸田君が「歌詞の書き方については徹底的に直された」と語っているのですが、あえて「徹底的に」したのには理由がありました。それは、せっかくのコラボなんだから、くるりと私でがっぷり四つに組んで曲作りをしたかったから。半分冗談ですが、岸田君を一人で放っておくと、電車の歌ばかり作ってしまいそうだし。
 まず、事前に岸田君が作っていた複数の候補曲から、一番キャッチーな曲を選びました。それは、メジャーで少し重めのシャッフル。そこに三人共作の歌詞をつけるんです。
 歌詞を書くときに二人へ伝えたのは、「抽象的なことよりもリアル、それも日常のリアルを切なく歌に落とし込んだら」ということでした。日常にこそ、書くべきことがあると。
 じゃあ、どんな日常のリアルを書けばいいのか、となったときに、私が実生活で凝っていた「洗濯」が思い浮かびました。当時、海外の洗剤を何種類も手に入れて、実際にそれで洗濯しては、その仕上がりを楽しんでいたんですね。そんなことを口にしたら、ふと、晴れた日に洗濯したシャツを男の子が干してるような、さわやかなイメージが頭に浮かんだんです。GAPと言えばシャツだし、それも洗いざらした白いシャツ。曲が少し重めなんだから、なおさら歌詞は爽快なものにしようって、話がまとまりました。
 オケのレコーディングをほぼ終えた頃、歌詞の仕上げは岸田君に頼みました。私がさらに注文をつけると、彼が「1時間下さい」と言うので、佐藤君としばらくスタジオの外をうろつくことに。タイミングを見計らって戻ると、さすが、ほんのわずかな時間で素晴らしい歌詞を完成させていました。
 逆に、私の方が徹底的に直されたのは、サビのオブリガート(助奏)を歌うときの、音符の付点の長さ。普段のレコーディングなら、気にならないような違いだったのですが、岸田君と佐藤君はかなりこだわっていたようです。その付点による撥ね方がくるりのグルーブなんだと理解して、私も徹底的にそれにつきあいました。
 そうしてリリースされた「シャツを洗えば」は、今でも私の大好きな曲。くるり以外にもコラボした作品はいくつもありますが、その中でも最上級に好きなんです。
 くるりの二人とそんな時間を過ごす中で、私が改めて気づいた彼らの魅力は、独特の浮遊感でした。それは特に、コードのルート音に留まらない演奏をする、佐藤君のメロディアスなベースに負うところが大きい。そこに、ヤスリのかかっていない無垢な岸田君のボーカルとギターが重なると、何ともいえない「あの雰囲気」が生まれるのだと思います。
 この『くるりのこと』を読んでみると、あの時の出来事を思い出すとともに、デビュー時からずっと変わらずに進化を続けている二人に驚かされます。ヒットが出ない、CDが売れない、と元気がないように見える日本の音楽シーンだけれど、「くるりがいるから大丈夫」と思えてくるんです。
 今年の11月、私は38作目のオリジナルアルバム「宇宙図書館」をリリースします。長いキャリアを重ねてもなお、ひとところに留まらず、私もまだ進化できると信じているし、それをこのアルバムで証明するつもりです。
 まだまだ、くるりの二人には負けられません。

(まつとうや・ゆみ シンガーソングライター)
波 2016年10月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

くるり

クルリ

1996(平成8)年9月、立命館大学の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成される。古今東西のさまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロック・バンド。岸田繁(ボーカル、ギター)、佐藤征史(ベース、ボーカル)、ファンファン(トランペット、キーボード、ボーカル)の3名で活動中。

くるり / QURULI (外部リンク)

宇野維正

ウノ・コレマサ

1970年、東京都生まれ。映画・音楽ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌の編集部を経て、2008年に独立。著書に『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)、『くるりのこと』(くるりとの共著、新潮文庫)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(レジーとの共著、ソル・メディア)がある。

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