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中動態の世界─意志と責任の考古学─

國分功一郎/著

990円(税込)

発売日:2025/03/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

『暇と退屈の倫理学』國分功一郎、文庫最新刊! 本当の自由を求める新たな時代の哲学書。

誰かを好きになる。これは能動か受動か。好きになろうとしたのでもなければ、好きになるよう強いられたのでもない。自分で「する」と人に「される」しか認めない言葉は、こんなありふれた日常事を説明することすらできない。その外部を探求すべく、著者は歴史からひっそりと姿を消した“中動態”に注目する。人間の不自由さを見つめ、本当の自由を求める哲学書。時代を画する責任論を新たに収録。

  • 受賞
    第16回 小林秀雄賞
目次

プロローグ――ある対話

第1章 能動と受動をめぐる諸問題
1「私が何ごとかをなす」とはどういうことか
2「私が歩く」と「私のもとで歩行が実現されている」は何が違うのか
3 意志と責任は突然現れる
4 太陽がどうしても近くにあるように感じられる――スピノザ
5 文法の世界へ

第2章 中動態という古名
1「中動」という名称の問題
2 アリストテレス『カテゴリー論』における中動態
3 ストア派文法理論における中動態
4 文法の起源としてのトラクス『文法の技法』
5 エネルゲイアとパトスをめぐる翻訳の問題
6 パトスは「私は打たれる」だけではない
7 メソテースをめぐる翻訳の問題――四つの例
8 奇妙な起源

第3章 中動態の意味論
1 中動態に注目する諸研究――第三項という神秘化
2 中動態の一般的定義――なぜ奇妙な説明になるのか?
3 中動態を定義するために超越論的であること
4 バンヴェニストによる中動態の定義
5 中動態の一般的な定義との関係
6 受動態、能動態との関係
7「中動態」という古名を使い続けること

第4章 言語と思考
1 ギリシア世界に意志の概念はなかった
2 ある論争から
3『カテゴリー論』読解への貢献――デリダの批判(a)に対して
4 思考の可能性の条件としての言語――デリダの批判(b)に対して
5 哲学と言語――デリダの批判(c)に対して

第5章 意志と選択
1 アレントの意志論
2 アリストテレスの「プロアイレシス」
3 プロアイレシスは意志ではない
4 意志と選択の違いとは何か?
5 意志をめぐるアレントの不可解な選択
6 カツアゲの問題
7「する」と「させる」の境界
8 権力関係における「能動性」
9 アレントと一致の問題
10 非自発的同意の概念
11 アレントにおける政治、意志、自発性

第6章 言語の歴史
1 動詞は遅れて生じた
2 動詞の起源としての非人称構文
3 中動態の抵抗と新表現の開発
4 出来事の描写から行為の帰属へ
5 日本語と中動態
6 自動詞と受動態
7「自然の勢い」としての中動態
8 中動態をめぐる憶測
9 抑圧されたものの回帰

第7章 中動態、放下、出来事――ハイデッガー、ドゥルーズ
1 ハイデッガーと意志
2 ハイデッガーの意志批判
3「放下 Gelassenheit」
4 ドゥルーズ『意味の論理学』――その古典的問題設定
5 出来事の言語、動詞的哲学
6 動詞は名詞に先行するか?

第8章 中動態と自由の哲学――スピノザ
1 スピノザの書いた文法書『ヘブライ語文法綱要』
2 動詞の七つめの形態――文法論
3 内在原因、表現、中動態――存在論(1)
4 変状の二つの地位――存在論(2)
5 変状の中動態的プロセス――倫理学(1)
6 スピノザにおける能動と受動――倫理学(2)
7 能動と受動の度合い――倫理学(3)
8 自由について

第9章 ビリーたちの物語
1 メルヴィルの遺作
2 キリスト、アダム
3 ねたみの謎
4 歴史
5 彼らはいったい誰なのか?
6 中動態の世界に生きる


あとがき

文庫版補遺 なぜ免責が引責を可能にするのか――責任と帰責性

書誌情報

読み仮名 チュウドウタイノセカイイシトセキニンノコウコガク
シリーズ名 新潮文庫
装幀 福岡南央子/カバー装幀
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 528ページ
ISBN 978-4-10-103542-0
C-CODE 0110
整理番号 こ-73-2
ジャンル 哲学・思想、思想・社会
定価 990円
電子書籍 価格 990円
電子書籍 配信開始日 2025/03/28

著者プロフィール

國分功一郎

コクブン・コウイチロウ

1974(昭和49)年生れ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2025(令和7)年3月現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は哲学。2017(平成29)年、『中動態の世界』で小林秀雄賞を受賞。著書に『暇と退屈の倫理学』、『ドゥルーズの哲学原理』、『近代政治哲学』、『スピノザ──読む人の肖像』、『目的への抵抗』、『手段からの解放』、『〈責任〉の生成──中動態と当事者研究』(熊谷晋一郎と共著)ほか。

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