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恐竜はどのように鳴いたのか。樹上に巣を作ったのか。笑えて学べる絶品科学エッセイ!

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る

川上和人/著

724円(税込)

本の仕様

発売日:2018/07/01

読み仮名 チョウルイガクシャムボウニモキョウリュウヲカタル
装幀 北澤平祐/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-121511-2
C-CODE 0145
整理番号 か-84-1
ジャンル 生物・バイオテクノロジー
定価 724円

鳥類学者はおおいに恐竜を語っていいのだ。ティラノサウルス、アパトサウルス、地上に君臨した恐竜の子孫こそ鳥なのだから。ということで、本邦が誇る現生鳥類研究者の化石時代への大航海が始まる。どんな色でどのように鳴いたのか。樹上に巣を作るものはいたのか。鳥類の進化を辿り、恐竜の生態を復元する、野心的試み。抱腹絶倒しつつ知的興奮を存分に味わえる、とびきりの科学エッセイ。

著者プロフィール

川上和人 カワカミ・カズト

1973(昭和48)年大阪府生れ。農学博士。国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所主任研究員。東京大学農学部林学科卒、同大学院農学生命科学研究科中退。著書に『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』『美しい鳥 へンテコな鳥』『そもそも島に進化あり』などがある。図鑑の監修も多く手がけている。2017(平成29)年に上梓した『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』がベストセラーとなり、読書界の注目を集める。

書評

無謀なる鳥類学者は超優秀? それとも……

仲野徹

 この本のタイトルを見たとき、心底驚いた。まともな研究者は、基本的に専門外の領域に口出ししない、という不文律がある。それが、大胆にも鳥類学者が恐竜を語るというのだ。
 こういうことをする輩は、とてつもなく優秀かアホかのどちらかと相場は決まっている。「世のなかには2種類の人間がいる。恐竜学者と鳥類学者だ」。冒頭にある意味不明な文章を読んだだけで、とりあえずアホの可能性が高そうである。
 タイトルには「無謀にも」と断ってあるから、それなりの謙虚さを漂わせているふうではある。しかし、「矛盾には気づかぬふりをし」、「包括的な大いなる愛をもって」、「ほころびに目をつぶり無批判に」、「協力的読法」で読んでほしいと懇願するとは何事だ。本を書く人は誰もがそう思っている。何を隠そう私もそうだ。しかし、こういうことは、恥ずかしいから書かへんのが普通やろ。
「はじめに」を読み終わったあたりで、早くも読者は二通りに分かれるだろう。「なんやこの川上いう奴は、川上どころか研究者の風上にも置かれへんから、読んだらへん」派と、「むっちゃおもろそうでワクワクしてきたわ」派、である。私は心ある生命科学者であるから、当然前者であるべきだ。しかし、それ以前に心優しきおっさんであるから、粛々と読み進めることに。
「恐竜のことはわからないことだらけなのだから、鳥から類推するしかない」というのが、本書の基本的スタンスである。おぉ、そういわれたら、確かにそうだ。恐竜学がいかに進歩しようとも、生きた恐竜がいる訳ではない。生態や羽毛の色など、鳥研究の方がはるかにデータは多い。
 かといって「この大前提に賛成できない読者は、庭で飼育しているヤギにこの書籍を食べさせた末に、ヤギ乳でも飲み、健康増進に邁進すればよい」という言いぐさはなかろうが。だいたい、読者のうちに庭でヤギを飼ってる人がどれだけおるっちゅうねん。
 罠にはめられたような気もするが、うちにもヤギはおらんので、さらに読み進めるしかなかった。ただし、ええ加減なことを書いとるんとちゃうやろうなぁと、「協力的読法」の対極にある、川上氏が忌み嫌う「批判的読法」をとりながら。
 このあたりで、はっきり言わねばなるまい。この本、悔しいことに、えらくおもろい。それだけでなく、内容的にもしっかりしている。恐竜とはどんな生物であったか、恐竜と鳥の類似点と相違点、そして、恐竜(の一部)がどのようにして鳥へと進化したかが、学問的かつ楽しく紹介されていく。圧巻は「無謀にも鳥から恐竜を考える」と題された第3章である。鳥類学の成果から、恐竜がどのような色であったか、どのような生態であったか、などが奔放に考察されている。
 しかし、ちょっと気になることもある。鳥類学者の割に恐竜に詳しすぎるんとちゃうんか。ちゃんと鳥類研究してるんか、一応は国立研究開発法人の主任研究員やのに。まぁ、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(新潮社)を読む限りは大丈夫そうであるから、まけておくことにしよう。こんな全鳥類を敵にまわすようなタイトルの本を書いている川上氏だが、その鳥類愛は人一倍であることが全編を通じて感じ取れる。やや偏愛気味なので、鳥類にとっては迷惑だろうという気がしないでもないほどだ。
 この本の最大の魅力は、極めて緻密な科学的考察と、川上氏の独創的(あるいは独断的)な解釈がうまく組み合わされているところにある。前者だけでは無味乾燥になってしまうし、後者だけではトンデモ本になりかねない。悔しいが、そのあたりの塩梅が絶妙なのである。
 たとえば、シソチョウが飛べたかどうかについての考察をひとしきり鋭く解説した後で「あの格好で飛べなかったら詐欺だ。科学的論拠はさておき、私はシソチョウは飛べたと直感的に信じている」と断言する。
 さらに、「うん、我ながらじつに科学的でないが、ときには直感も大切な判断材料であることをご理解いただきたい」と続く。こういった強烈かつ極めて高度な「ひとりボケツッコミ」が随所で繰り広げられている。おもろすぎるやんか。
 最後に、優秀かアホか問題についての結論を出さねばなるまい。どうやら、川上氏はとてつもなく優秀にしてアホな鳥類学者のようである。まぁ、あくまでも直感ですけど。

(なかの・とおる 大阪大学大学院教授、生命科学)
波 2018年7月号より

目次

はじめに 鳥類学者は羽毛恐竜の夢を見るか
序章◉恐竜が世界に産声をあげる
Section1 恐竜とはどんな生物か
Section2 恐竜学の夜明け、そして…
第1章◉恐竜はやがて鳥になった
Section1 生物の「種」とはなにかを考える
Section2 恐竜の種、鳥類の種
Section3 恐竜が鳥になった日
Section4 羽毛恐竜の主張
第2章◉鳥は大空の覇者となった
Section1 鳥たらしめるもの
Section2 羽毛恐竜は飛べるとは限らない
Section3 二足歩行が鳥を空に誘った
Section4 シソチョウ化石のメッセージ
Section5 鳥は翼竜の空を飛ぶ
Section6 尻尾はどこから来て、どこに行くのか
Section7 くちばしの物語は、飛翔からはじまる
第3章◉無謀にも鳥から恐竜を考える
Section1 恐竜生活プロファイリング
Section2 白色恐竜への道
Section3 翼竜は茶色でも極彩色でもない
Section4 カモノハシリュウは管弦楽がお好き
Section5 強い恐竜にも毒がある
Section6 恐竜はパンのみに生きるにあらず
Section7 獣脚類は渡り鳥の夢を見るか
Section8 古地球の歩き方
Section9 恐竜はいかにして木の上に巣を作るのか
Section10 家族の肖像
Section11 肉食恐竜は夜に恋をする
第4章◉恐竜は無邪気に生態系を構築する
Section1 世界は恐竜で回っている
Section2 恐竜の前に道はなく、恐竜の後ろに道はできる
Section3 そして誰もいなくなった
あとがき 鳥類学者は羽毛恐竜の夢を見たか?
文庫版あとがき、あるいは鳥がもたらす予期せぬ奇跡
解説 小林快次
主な参考文献・恐竜博図録

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