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「こんなはずじゃなかった……」
年金だけでは暮らせない過酷な現実を描く衝撃のルポ。

老後破産―長寿という悪夢―

NHKスペシャル取材班/著

594円(税込)

本の仕様

発売日:2018/02/01

読み仮名 ロウゴハサンチョウジュトイウアクム
装幀 前田せいめい/カバー写真、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-128379-1
C-CODE 0195
整理番号 え-20-9
ジャンル 家庭医学・健康
定価 594円
電子書籍 価格 659円
電子書籍 配信開始日 2018/07/27

「預金が尽きる前に、死んでしまいたい」「こんなはずじゃなかった……」年金だけでは暮らせない。金が無いので病院にも行けない。食費は1日100円……。ごく普通の人生を送り、ある程度の預貯金もある。それでも、病気や怪我などの些細なきっかけで、老後の生活は崩壊してしまう。超高齢化社会を迎えた日本で、急増する「老後破産」の過酷な現実を、克明に描いた衝撃のノンフィクション。

著者プロフィール

目次

はじめに
序章「老後破産」の現実
第1章 都市部で急増する独居高齢者の「老後破産」
「年金だけでは暮らしていけない」/追いつめられていく日々
必死で働いてきても「報われない老後」/生活保護が受けられない?
独居高齢者の実状を把握する/「医者に行くお金もない……」
厚生年金のトリック/「生きていてもしょうがない」
貧しさを知られたくないために/生活保護支援の「壁」
「生きていて良かった」と思える明日へ/カラスが友だちという男性
~東京・港区の単身高齢者アンケートより~
広がる「老後破産」の実態/介護サービスを利用していない人が80%
正月をひとりで過ごす高齢者たち
第2章 夢を持てなくなった高齢者たち
介護サービスを切り詰めたい/使いたくても使えない介護保険
ひとりきりの老後/「外に出たい」/「こんな老後になるなんて」
ひとり息子と夫の死/都会の孤独/2か月に1度の楽しみ
避けられない「老後破産」/「家族機能」を前提とした介護保険制度
第3章‌ なぜ「老後破産」に陥るのか~社会保障制度の落とし穴
じわじわと追いつめられる「老後破産」の恐怖
「家」があっても生活保護は受けられる/「預金ゼロ」へのカウントダウン
医療負担が招く「老後破産」の悪夢/節約が招く“矛盾”
病気は「老後破産」の入り口/老後の「住まい」の選択肢
年金で暮らせる公営住宅の不足/「一生懸命に生きてきた結果が……」
SOSを発しないひとり暮らしの高齢者
「老後破産」で餓死寸前に陥った患者/病院から施設へ続く「漂流」
第4章 地方では見えにくい「老後破産」
「豊かな田舎暮らし」は本当か?/農村に広がる「老後破産」
サバイバルな自給自足の老後生活/食事は採ってきたもので
心臓に抱えた「爆弾」と医療負担
地方でも増え続ける独居高齢者~自治体調査より
第5章 急増する「老後破産」予備軍
見えにくい「老後破産」/親族の存在が遠ざけていた「支援」
他人の世話になることへの「罪悪感」
連鎖する「老後破産」/介護離職がきっかけ/病気で断たれた再就職への道
超節約術!/「病院にも行けない」
終章 拡大再生産される「老後破産」
おわりに
文庫版に寄せて
解説 藤森克彦

インタビュー/対談/エッセイ

「老後破産」は対岸の火事ではない

板垣淑子

「お金がなくて病院に行けない……」
 ひとり暮らしの高齢者を取材していると、こうした言葉をよく耳にする。食費や光熱費を切り詰めても余裕がなく、医療や介護といった「命に関わる費用」を節約しなければならない高齢者が今、増えているのだ。
 昨年9月に放送したNHKスペシャル『老人漂流社会~“老後破産”の現実~』では、こうした高齢者の実態をルポし、大きな反響を得た。
 厚生年金が月10万円で暮らしていた男性は、家賃6万円をひくと手元に残るのは4万円。公営住宅に引っ越す費用もなく、食べていくだけでやっとの暮らしを続けていた。男性は20年間勤めていた会社を辞め、飲食店を開いた。しかし、赤字続きで閉店。借金を返したら、手元にお金が残らなかった。仕事に邁進するあまり、結婚もしなかった男性には「頼れる家族」はなく、「頼るカネ」もなくなった。男性は口癖のようにこうつぶやく。
「こんな老後になるとは思わなかった……」
 超高齢社会を迎えた我が国で、急増している独居高齢者。600万人ほどが、自分の収入や貯蓄を頼りに暮らしている。
 単身高齢者の年金収入を分析すると、およそ200万人が「生活保護水準」を下回る額だということが分かった。貯蓄があるうちは、それを少しずつ使いながら生活費の赤字分を補えるが、なくなれば破産状態に陥る。結果、必要な医療さえ受けられず、追いつめられていく人が少なくない。本来であれば、生活保護で不足分を補填しながら暮らしていけるはずだが「墓に入るための貯金」など、手元にわずかでも貯蓄を残そうとすれば、生活保護は原則として受けられなくなる。そのため、自分の年金収入だけで暮らしていかなくてはならず、「老後破産」に陥ってしまうのだ。
 そして「老後破産」に陥った高齢者が同じように口にする言葉――。
「生きていてもしかたない。死んでしまいたい」
 番組のポスター制作の担当者にこの言葉を伝えると、ポスターに書き込むキャッチコピーが決まった。
「長寿という悪夢」
 長生きをするお年寄りが安心して暮らせないばかりか、長寿を呪いながら生きなければならない過酷な現実――それを伝えたかったのだ。
 今、老後に漠然とした不安を抱いている人は少なくない。しかし、本当に自分の親や身近な人が「老後破産」に陥りかねないことを想像できるだろうか。
「こんな老後になるとは思わなかった……」
 この言葉が再び耳に突き刺さってくる。当たり前に暮らしてきた人たちが「老後破産」に陥り、発する言葉だからだ。
 番組放送後、視聴者から届いた反響の多くは、同じように年金生活にゆとりがなく、苦しんでいるという声だった。
「年金4万円では暮らしていけず、生活保護を受けています。楽しみもなく、毎日、いつ死ねるのかと考えています」(80代女性)
「年金は毎月16万円もらっていますが、出費は16万円を超えるのです。それでも贅沢しているわけではありません。医療や介護を節約すれば、私の場合、死しかありません」(70代男性)
 さらに、驚いたのは「子どもと一緒に暮らしているが、それでも破産寸前だ」と訴える声が目立ったことだ。長引く不況、非正規労働の拡大などこの二十年余りのしわ寄せが高齢者を支えるはずの家族に打撃を与えているのだろう。
 こうした「親子共倒れ」とでもいえる新たな老後破産について、私たちはさらなる取材を続けている。今夏、続編を放送予定だ。
「老後破産」はもはや対岸の火事ではない。誰の未来にも起こり得る現実だ。老後にどう備えればいいのか――それを考えるためにも、まず現実を直視することから始めて欲しい。取材をまとめた『老後破産―長寿という悪夢―』に描かれた現実は、私たちのすぐそばで起きている日常なのだ。

(いたがき・よしこ NHKチーフプロデューサー)
波 2015年8月号より
単行本刊行時掲載

判型違い(書籍)

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