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今月の表紙の筆蹟は乃南アサさん

波 2015年8月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2015/07/28

発売日 2015/07/28
JANコード 4910068230850
定価 102円(税込)


乃南アサ『水曜日の凱歌』
井上理津子/RAAを知っていますか

青木冨貴子『GHQと戦った女 沢田美喜』
尾崎真理子/三菱財閥の令嬢がなぜ?に答える

藤原章生『湯川博士、原爆投下を知っていたのですか―“最後の弟子”森一久の被爆と原子力人生―』
竹田圭吾/「原子力村」の深奥から届いた黙示録

[吉村昭『吉村昭 昭和の戦争1 開戦前夜に』 吉村昭を読む]
保阪正康/真実は細部に宿る

新潮社山崎プロジェクト室・編『山崎豊子 スペシャル・ガイドブック―不屈の取材、迫真の人間ドラマ、情熱の作家人生!―』
矢代新一郎/新発見! 山崎豊子の戦中日記、創作ノート

細谷雄一『戦後史の解放I 歴史認識とは何か―日露戦争からアジア太平洋戦争まで―』(新潮選書)
佐藤卓己/「世界の中の日本」にむけた現代史

村上春樹著/フジモトマサル絵『村上さんのところ』
内田 樹/切れるほどの身銭を持たざる人へ

[海堂 尊『スカラムーシュ・ムーン』刊行記念特別エッセイ]
海堂 尊/『スカラムーシュ・ムーン』を書き終えて

西村賢太『痴者の食卓』
富岡幸一郎/憤怒する「私」の力

上田岳弘『私の恋人』
江南亜美子/「私」を遥かに超えるなにか

ジェイ・ルービン著/柴田元幸・平塚隼介訳『日々の光』
村上春樹/ジェイ・ルービンのこと

リチャード・パワーズ著/木原善彦訳『オルフェオ』
小野正嗣/魂を揺さぶる「情」の人

[畠中 恵『なりたい』刊行記念インタビュー
柴田ゆう/ともに歩いて14年

帚木蓬生『悲素』
宇田川拓也/毒薬と医学の相克を描いた新たな代表作

長江俊和『掲載禁止』
長江俊和/発表されない五つの短編/『掲載禁止』の理由

前川裕『イン・ザ・ダーク』
細谷正充/暗闇を抉る“エグミス”の真骨頂

須賀しのぶ『神のとげ  Ⅰ・Ⅱ』(新潮文庫)
大矢博子/ふたつの信念の物語

NHKスペシャル取材班『老後破産―長寿という悪夢―』
板垣淑子/「老後破産」は対岸の火事ではない

トム・ラス著/牧野 洋訳『座らない!―成果を出し続ける人の健康習慣―』
石川善樹/働く世代のための「最善」の健康法

清水 潔『騙されてたまるか―調査報道の裏側―』
清水 潔/真偽を見抜く力

大塚柳太郎『ヒトはこうして増えてきた―20万年の人口変遷史―』
鬼頭 宏/人類の壮大な歴史をたどり、未来を読む


【コラム】
とんぼの本 編集室だより

考える人―遠い「ごちそう」と近くの「ごちそう」

梨木香歩『西の魔女が死んだ』
原 幹恵/映画になった新潮文庫

三橋曉の海外エンタ三つ巴

【連載】
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第5回
橘 玲/残酷すぎる真実 第6回
津村記久子/やりなおし世界文学 第15回
ドリアン助川/ニューヨーク・サン・ソウル 第9回
石原千秋/漱石と日本の近代 第26回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第65回
森 まゆみ/子規の音 第19回
A・A・ミルン作、阿川佐和子訳/ウィニー・ザ・プーと魔法の冒険 第5回
末盛千枝子/父と母の娘 第17回
堀本裕樹、穂村弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第24回
木皿 泉/カゲロボ日記 第16回
津村節子/時のなごり 第47回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

今月の表紙の筆蹟は乃南アサさん

◇今月の表紙の筆蹟は乃南アサさんです。一九四五年八月十五日、水曜日。新刊の『水曜日の凱歌』はその日に十四歳の誕生日を迎えた少女・鈴子の視線で、「終戦」から始まった新たな女性の戦いの日々を描く力作長篇です。寡婦の母親が英語に堪能だったことが、鈴子の人生を激変させます。新たな生活の場として母子が移り住んだのは、東京の大森海岸。殺風景な建物の中で、鈴子は一枚の書類を目にします。特殊慰安施設協会設立宣誓式――そこは「性の防波堤」として進駐軍兵士の相手をする女性たちの寮でした。日本の男は、もう日本の女を守れない。物語は十四歳でその現実に直面した鈴子が混乱と不安の中、懸命に自らの生きる道を見出そうとしていく姿を情感溢れる筆で描き出していきます。戦後史の中で語られることの少ない題材に挑んだまさに渾身の意欲作です。表紙のイラストは、その彼女の胸中が見事に表現された影山徹氏の単行本装画を、アングルを若干変えて使わせていただきました。
◇第一五三回芥川賞が発表されました。今期は人気芸人の又吉直樹氏のデビュー作『火花』が候補作にノミネートされて一層の注目を集めましたが、最近刊行された『芥川賞の謎を解く 全選評完全読破』(鵜飼哲夫著、文春新書)の中にこんな一文があります。「芥川賞の事件は、候補作品とその選評が、『新しい文学』という未踏の目標を求めて目には見えない格闘をすることによって生まれるのだと思う」。ベテラン文芸記者が物した本書は、賞を切望した太宰治が選考委員に懇願した「芥川賞事件」から、物議を醸した最近の石原慎太郎氏の選評まで、選考をめぐる「事件」を描いた昭和平成文学史的な趣もある読み物です。文中には様々な選評の文章が手際よく紹介されていますが、そこから伝わってくるのは称賛、酷評のいずれにせよ妥協なき表現が放つ魅力です。選評とはまさに作家の「真剣勝負した戦いの報告」なのでしょう。先般の三島由紀夫賞の選考でも「破壊的な勇気と諦念」(辻原登氏)など峻烈な言葉で評された受賞作『火花』がいかなる報告を受けるのか、興味が尽きません。

◇新潮社ホームページ、リニューアル!
http://www.shinchosha.co.jp/
◎新シリーズ「村上柴田翻訳堂」刊行中。
http://www.shinchosha.co.jp/murakamishibata/

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。