
養老先生、病院へ行く
649円(税込)
発売日:2026/04/22
- 文庫
- 電子書籍あり
病院嫌いだった養老先生が、病院に!? 心筋梗塞、がん治療を通し、養老先生の考え方はどう変化したのか?
病院嫌いの養老先生が、26年ぶりに東大病院を受診!? 医療と距離を置いてきた養老先生だったが、今回の不調は今までとは様子が違った。教え子である中川先生に診察を頼むと、なんと心筋梗塞が見つかる。治療を通し、養老先生の医療観に変化は起きたのか? そして退院後には、愛猫・まるとの別れが待っていて……。4年後に養老先生に見つかったがんについて語った「文庫化特別対談」も収録。
はじめに 養老孟司
[第1章]養老先生、心筋梗塞から生還
病気はコロナだけじゃなかった 養老孟司
病気はコロナだけじゃなかった
26年ぶりに東大病院を受診
生死をさまよい、娑婆に戻ってきた
いつ死んでもおかしくなかった
情報化する現代医療の落とし穴
現代医療が扱うのは人工身体
差異を無視する統計データ
都市の中には意味のあるものしかない
過去の医療にはもう戻れない
データよりも身体の声を聞くことが大事
これからも医療とは距離をとって生きていく
[第2章]教え子医師が心筋梗塞を発見
養老先生、東大病院に入院 中川恵一
養老先生の新年会に呼ばれた理由
養老先生から病気の相談メールが来た
糖尿病かがんの可能性がある
検査では肺がんも疑われたが……
心電図で心筋梗塞を起こしていることが判明
心臓の太い血管が詰まりかけていた
胃がん、大腸がんのリスクも判明
軽度の肺気腫も見つかった
白内障の手術で目もよく見えるように
養老先生は強運を持っている?
養老先生が医療の考え方を変えた?
養老先生の本音が聞きたい
死を意識すると人生観が変わる
画一的な医療システムへの批判
[第3章]養老先生の病院嫌いの本当の理由
なぜ「医療」と距離をとるのか? 養老孟司
医学は1970年代から変わってきた
お金にならない学問も必要
自分の死は自分の問題ではない
ペットの医療に本人の意思はあるか?
さよなら、まる
老化を止めれば経済的な負担が減る
iPS細胞で若返り研究を
人口減少は悪いことばかりではない
[第4章]養老先生から学んだ医療の限界と可能性
なぜ病院に行くべきなのか? 中川恵一
養老先生、26年前の肺の検査
ヘルスリテラシーが低い日本人
がん検診は受けたほうがよい
見つけなくてよいがんもある
心筋梗塞も予防できる病気
コロナ禍の外出自粛でがんが増える?
コロナ禍でがんが早期発見できない
ワクチン未接種で子どもたちが危ない
新型コロナのワクチンは安全なのか?
健康で長生きするための条件とは
養老先生の愛猫、まるが死んだ
[第5章]現代医療の矛盾と人間的医療
養老先生、どうして病院に行くのが嫌なの? 養老孟司×中川恵一×ヤマザキマリ
病院に行くということは野良猫が家猫になること
老人を尊敬するイタリア、邪魔者扱いされる日本
猫は今まで何匹も飼った。犬や猿も飼ったことがある
麻酔が切れたら痛いはずなのに医者は薬を出す想像力がない
寿命が残り少なくなったらやり残したことに集中したい
ガイドラインに従わない医療は今の医者には絶対にできない
ピロリ菌の感染が激減し胃がんは絶滅危惧種になる?
臓器移植には反対していたが白内障の人工レンズはいい?
おわりに 中川恵一
[文庫化特別対談]その後の4年間を振り返る
養老先生が、がんになって感じたこと 養老孟司×中川恵一
心筋梗塞から4年後、肺にがんが見つかる
再発したがんと折り合いをつけて生きる
がん患者となって変わったことはあったのか?
参考文献
書誌情報
| 読み仮名 | ヨウロウセンセイビョウインヘイク |
|---|---|
| シリーズ名 | 新潮文庫 |
| 装幀 | 渡辺七奈/カバー写真、新潮社装幀室/デザイン |
| 発行形態 | 文庫、電子書籍 |
| 判型 | 新潮文庫 |
| 頁数 | 208ページ |
| ISBN | 978-4-10-130845-6 |
| C-CODE | 0147 |
| 整理番号 | よ-24-15 |
| ジャンル | 暮らし・健康・料理 |
| 定価 | 649円 |
| 電子書籍 価格 | 649円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2026/04/22 |
インタビュー/対談/エッセイ

養老先生、病院へ行く! 病院嫌いの養老先生が 26年ぶりに!?
中川 養老先生は東大医学部の教授だったのに、病院嫌いなことで有名ですよね。
養老 「現代の医療システム」に巻き込まれたくないからね。このシステムに巻き込まれたら最後、タバコをやめなさいとか、甘いものは控えなさいとか、自分の行動が制限されてしまうから。自由気ままな野良猫から、きゅうくつな家猫にされるようなもんですよ。
中川 そんな養老先生から、教え子であり東大病院に勤めていた私に受診の相談があったのは、2020年6月のことでした。
養老 その二週間ほど前から、なんだか調子が悪くてね。一年間で十五キロほど体重も落ちていたし。とくに受診直前の三日間はやたら眠くて、猫のように眠ってばかりだった。
中川 体重が急激に落ちているということだったので、糖尿病か、がんを疑いました。そして受診日当日には、CT、血液検査、心電図を行ったのですが……。
養老 検査が終わり、待合室で妻や秘書たちと「帰りには御茶ノ水の山の上ホテルで食事でもしようか」なんて話していたところ、中川さんが血相を変えてやってきた。
中川 心電図と血液検査の結果、心筋梗塞を起こしていることがわかったんです。循環器内科の先生にお願いして、緊急カテーテル検査をしました。同時にステント治療も行い、詰まっていた血管を広げ、ステントを挿入して血管が詰まらないようにしたんです。
養老 そのあとは、ICU(集中治療室)に二日間ほどいた。治療のときからICUにいるあいだ、お地蔵さんが並んでいるのが見えました。一体ずつ、こちらにむかってくるんだよね。意識がぼんやりしていたから幻覚だったんだけど、あのお地蔵さんは、もしかしたら阿弥陀様のお迎えだったのかもしれない。
中川 あのときは、本当に一刻を争う事態で、もし処置が数日遅れていたら、心臓の血管が完全に詰まっていたかもしれません。受診のタイミングとしてはギリギリだったと思います。
養老 治療後、中川さんから「医療に対する考え方が変わったのでは?」と聞かれたので「何も変わってはいない」と答えました(笑)。でも、二十六年ぶりに受診した東大病院の医師や看護師の対応がよかったのには感謝しています。ずいぶん変わりましたね。昔の東大病院の医師はもっと偉そうだった。
中川 その後、養老先生はほぼ三か月おきに東大病院で定期検診を受けられるようになりました。そして、2024年の4月に肺がんが見つかった。
養老 前の年くらいから肩こりがひどくなったんだよね。そのうち背中まで痛くなってきて「これはただの肩こりじゃねえや」と。
中川 がんだと判明したあと、養老先生から「肺の方はとくに完治は望んでいないので、テキトーにやってください」というメールをいただきましたが、いかにも先生らしいなと思いました。そして、まずは抗がん剤治療がスタートしました。
養老 あのときは、二週間後に北鎌倉の建長寺で「虫塚法要」が行われることになっていた。これまで標本をつくるためにたくさんの虫の命を奪ってきたから、その供養のために十年ほど前から始めたんだけど、この法要には何としても参加したかった。「リモート」でもいいのではともいわれたけど、亡くなったものたちへの供養がリモートっていうのは納得いかなくて。
中川 這ってでも行こうと思う、とおっしゃっていましたものね。退院は、虫塚法要の前日でした。抗がん剤治療は計四回行い、その後の放射線治療は、私自身が担当しました。
養老 放射線治療は外来ですんだから、入院よりは楽だったね。
中川 放射線の照射は一回あたり数分間なのですが、一日二回、朝と夕方だったので、いろいろご苦労をおかけしました。平日は毎日行い、これを三週間続けました。
養老 放射線治療が終わるころ、ようやく背中のつらい痛みが消えて、本当に助かったよ。
中川 その後の経過は順調だと思ったのですが、翌2025年の3月に、反対側の肺に異常が見つかり……。
養老 がんに再発はつきものだし、自分では完治したとは考えていなかったから。それに、がんは自分の細胞が変異したもので、いわば自分の一部。体内に「悪いものができた」というよりも「自分の子どもが悪さをしている」くらいに思いました。
中川 「がんと闘う」という人がよくいますが、養老先生の場合、「がんと折り合いをつける」というような姿勢を感じます。
養老 治療を通して、今まで知らなかったことが経験できるのはおもしろいよね。おもしろさを感じられるうちは、病院に行ってもいいと思う。
(ようろう・たけし 解剖学者)
(なかがわ・けいいち がん治療専門医)
著者プロフィール
養老孟司
ヨウロウ・タケシ
1937(昭和12)年、鎌倉生れ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。1989(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。新潮新書『バカの壁』は大ヒットし2003年のベストセラー第1位、また新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞した。『唯脳論』『かけがえのないもの』『手入れという思想』『バカの壁のそのまた向こう』『ヒトの壁』など著書多数。
中川恵一
ナカガワ・ケイイチ
1960(昭和35)年、東京生れ。東京大学医学部附属病院放射線治療部門特別顧問、がん治療専門医。国際医療福祉大学教授。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部放射線医学教室入局。2003(平成15)年~2014年、東大病院緩和ケア診療部長、2021(令和3)年~2026年、東京大学大学院医学系研究科特任教授。『医者にがんと言われたら最初に読む本』『人生を変える健康学 がんを学んで元気に100歳』など著書多数。



































