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砕け散るところを見せてあげる

竹宮ゆゆこ/著

693円(税込)

発売日:2016/05/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

死んだのは、二人。その死は、何を残すのか。

大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。

  • 映画化
    砕け散るところを見せてあげる(2021年4月公開)

書誌情報

読み仮名 クダケチルトコロヲミセテアゲル
シリーズ名 新潮文庫nex
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 320ページ
ISBN 978-4-10-180065-3
C-CODE 0193
整理番号 た-111-2
ジャンル キャラクター文芸、コミックス
定価 693円
電子書籍 価格 649円
電子書籍 配信開始日 2016/11/25

書評

王妃と青春と恋の「切実さ」

高頭佐和子

吉川トリコ『マリー・アントワネットの日記 Rose』 マリー・アントワネット。私、彼女のことなら結構詳しいです。あれは中学生の頃、麗しく気高い女近衛連隊長がベルサイユで活躍する人気漫画を読んでいた時のこと。自分の前世が二百数十年前のパリの町娘で、オーストリアからお輿入れしてきた美しい王太子妃に、憧れたりムカついたりしていたことを突然に思い出したんですよ。懐かしさのあまり、彼女についての本をいろいろ読んだり、映画を見たりしてきました。
 という話を人にすると、「この人大丈夫?」みたいな目で見られてしまうのですが、とにかく私はアントワネットさまウォッチャーの元パリジェンヌ(今は東京の書店員)なので、吉川トリコ氏の『マリー・アントワネットの日記 Rose/Bleu』を当然のように手にしました。悲劇の王妃なのにあまりにノリが軽すぎないか? と思いつつ読み始めたのですが、予想を超えて心にグサグサ刺さる日記でした。
 たった14歳でフランスの王太子に嫁ぐことになったマリー・アントワネットは、日記帳にマリアという名前をつけ、親友に心を打ち明けるように日々の出来事を綴ります。慣れないしきたりや、常に人目に晒されることに戸惑い苦しみ、夫とのうまくいかない関係や、なかなか生まれない跡継ぎに悩み、贅沢な装飾品や取り巻きとの遊びに散財し、ある男性との恋仲を噂され……。細かいエピソードも丁寧に描かれていて、史実にかなり忠実なのに、文体は炎上気味なギャルママのブログそのものです。ギャルだったことは一度もないのですが、気持ちわかるわ! と何度も心の中で叫び、友情と家族愛と恋心に、涙腺崩壊しました。そして、最後はなんだか勇気が出ちゃう素敵な日記でした。王妃さま。もし私が前世に戻れたなら、あなたを批判する人たちに「アントワネットさまはそんなに悪くないじゃん。ギロチンやりすぎ!」と大声で言ってやりたいです。革命下のパリでは、フルボッコにされちゃうでしょうけれど……。愛すべき悲劇の王妃に出会わせてくれた著者に、拍手を送りたいです。

最果タヒ『渦森今日子は宇宙に期待しない。』  愛すべき主人公と言えば、最果タヒ氏の『渦森今日子は宇宙に期待しない。』です。自意識過剰気味な青春を過ごしている女子(と元女子)の皆さんに、課題図書としてお勧めしたい一冊です。渦森今日子は、宇宙探偵部に所属する女子高生ですが、実は宇宙人で本名はメソッドD2。UFOが不時着して仕方がなく地球に暮らしているとか乗っ取りを企んでいるとかではなく、自分の意思でこの星に暮らしていて、仲の良い友達には秘密も打ち明け、自然な感じで受け入れられています。そんな彼女の日常は、ゆるく部活に参加したり、コンビニのアイスを食べたり、片思い中の友達に気を使ったり、進路に悩んだりという平凡なもの。とは言え宇宙人ですから、時々SFチックな出来事も起こります。
 設定はかなり不思議ですが、自分の居場所や行くべき方向に悩む渦森さんの青春は、微笑ましくて、なんだか懐かしくて、ちょっと切なくて、胸の奥が疼きました。実は宇宙人という特殊な秘密を、ナチュラルに受け入れて生きている渦森さんの物語を、自意識に押しつぶされてひたすら空回りしていたあの頃の私に、読ませてあげたいです。

竹宮ゆゆこ『砕け散るところを見せてあげる』  UFOが出てくる新潮文庫といえば、竹宮ゆゆこ氏の『砕け散るところを見せてあげる』について書かないわけにはいられません。竹宮氏の小説は新潮文庫nexから3作品が刊行されていますが、未読の方にまず手にしていただきたいのが大好きなこの1冊です。
 高校3年生の清澄は、1年生の女子・玻璃が、同級生から壮絶な嫌がらせをされているところを目撃してしまい、行きがかり上助けることになります。ほとんどしゃべらない彼女は、自分をかばってくれた清澄にも警戒心を解かず、そっと触れただけで大声をあげて逃げていく始末。それでも助けることをやめない清澄に玻璃は心を開き、前髪で覆われていた顔も見せるようになります。生きづらさと孤独に打ち勝とうとする玻璃の生命力は、少しずつ花が開いていくように美しく、心打たれずにはいられません。
 うまくいかないことは「全部UFOのせいだ」と言う彼女の発言の謎と、その後の二人の運命にハラハラしつつ、想像もしなかったやり方で物語を終結させた、著者の類まれな破壊力に驚愕していただきたいです。そしてぜひ、他の竹宮ゆゆこ作品もお楽しみください!

(たかとう・さわこ 書店員)
波 2019年9月号より

「してあげたい」に込められた想い

市川紗椰

 ある喫茶店で隣に座っていた、やたらと声が大きいカップルの会話をうっかり盗み聞き(というより、嫌でも耳に入ってくる音量だった)したときの話。彼氏の方が、床に置いてあった私の買い物袋を見て、彼女に「ごめんね、服とか全然買ってあげられなくて」と言った。彼女はなんてこともなく素直に「ううん、大丈夫だよ」と答え、その後、二人の他愛のない会話は続いた。二人が「ホームパーティー」のことを「ホムパ」と言っていたのが妙に気になるのは自分が歳取った証拠かな、と思案していたら、またあの引っかかる言い回しが聞こえてきた。お店を出る準備をしながら彼女に「家まで送ってあげる」と彼氏くん。席から立ち上がり、さらに「今日はいっぱい話聞いてあげられてよかったわ」と満足げに彼女に言う。シメには「今度水族館に連れてってあげる」。あげるあげるあげるあげる。もはや「妖怪〇〇してあげる」。善意の恩を着せ、良いことをした自分に浸る自意識の塊。結局のところ、細かい言葉使いを気にしてる私が一番、自意識過剰なんだろうけど。
「砕け散るところを見せてあげる」にも、タイトルから、「妖怪〇〇してあげる」がいる。作中でも、主人公の濱田清澄はときにその言い回しを口に出す。清澄は、女手一つで自分を育ててくれた母を早く楽にさせてあげたい(出たっ!)ため、地元の国立大学の受験勉強に励む高校三年生。彼は同じ学校の後輩、蔵本玻璃へのいじめを目撃し、彼女のことがほっとけなくなる。玻璃をいじめから救うヒーローになると誓った清澄は受験勉強の時間を割いてまで、玻璃を守っていく。
 二人の距離が近づくにつれ、「俺がいてやればよかったのに」など、「〇〇してあげる」と清澄は言う。でもその言葉の裏には、無力な玻璃を見下す自己満足ではなく、もろい自分への自己啓発があった。素直で単純そうな清澄は実は煩わしく、その真っ直ぐなのに捻くれた複雑な性格は物語を通して徐々に浮き彫りになっていく。そしてその真の複雑さを知るのは、物語が終わってから。憧れのヒーローになるために、清澄は自分にも、読者にも嘘をついていたのだ。となると、タイトルの「砕け散るところを見せてあげる」とは、一体誰の言葉なのか……。
 ヒロインの玻璃も複雑な性格の持ち主。竹宮作品ではお馴染みの暗い影の持ち主で、「とらドラ!」や「ゴールデンタイム」しかり、その影の正体を知れば知るほど、辛さが重く押しかけてくる。「とらドラ!」や「ゴールデンタイム」の華やかなヴィジュアルのヒロインたちと違って、玻璃は影をベールに包むことができず、闇の存在が剥き出し。現実世界では信じられないような闇だけど、最初からそういった暗い過去が垣間見えたせいか、読者として比較的受け入れやすい。さらに彼女の仕草や表情の描写には二次元で脳内再生しやすい軽快さがあって、内容の割には重苦しさがない。やっと出会えた玻璃の笑顔のインパクトも大きく、涙を堪えてうつむく最初の玻璃のイメージもすぐに上書きされる。そして玻璃と清澄のユーモア溢れる掛け合いもライトに味わえる。
 だからこそ、気が付かない内に、凄い場所に連れて行かれる。清澄のウィットに富んだツッコミを楽しんでいたと思いきや、不意打ちのように、青春物語は急変する。いつの間にか、想像を絶する展開に胸を突かれる。まるでひき逃げにあったよう。

「砕け散るところを見せてあげる」には、誰かのためになにかしてあげたい、というシンプルな欲求を必死に叶えようとする人たちがいる。清澄、クラスメートの田丸、尾崎姉妹……。できることの大小はあっても、想いは一緒かもしれない。何かしてあげたい。「誰かのために何かする」を超える、より距離の近い、「してあげたい」に込められた想い。人から人に、繋がっていく思い。
 人のためになにかしてあげたい気持ち。冒頭のカップルとは違う、切実な気持ち。妖怪なんて呼んで、ごめんなさい。

(いちかわ・さや モデル)
波 2016年6月号より

インタビュー/対談/エッセイ

誰かの「ヒーロー」でありたいから「UFO」を探し続ける

竹宮ゆゆこ中川大志

ヒーローとは何か。どんな存在か。映画「砕け散るところを見せてあげる」公開を記念し、主演を務めた中川大志と原作者・竹宮ゆゆこが、映画について、原作について、さらには自分の「UFO」について、縦横無尽に語り合った。

竹宮 映画を観て、いちばん最初に浮かんだのは「勝った!」という感情で、それはなぜかというと、劇中で中川さんが演じる濱田清澄というキャラクターが走っているシーンがあるんですが、ここがもう本当に「清澄」で、彼が文字の中の存在ではなく生きている人間として見事に受肉していて、だから「この勝負(=映画化)、もらったな」と思ったんです。

中川 嬉しいです。ありがとうございます。

竹宮 私は、コメディタッチで少しオタクっぽいノリの掛け合いを書くのが好きで、自分の小説でそうしたシーンをよく入れてしまうんですが、果たして実写だとどうなるのだろう、という疑問がありました。アニメでは良い形で映像化してもらえたものの、リアルの俳優さんが演じたとき、私の文章や会話文でうまくいくのかな? と。でも、それは完全に杞憂で、清澄と友人の田丸のやり取りはすごく面白くて、ずっと見ていたい、と思えて。そこに尾崎(姉)も加わって三人で話すシーンは最高で、永久にこのシーンをループしていたいな、と思いました。映画を観ながら、何度も笑ってしまって。

中川 今回、僕の中で一つテーマがあって、それは「何もしない」だったんです。余分なものをそぎ落とし、余計なことは何もしない。これを最初に監督ともお話しして。たとえば、台本を読んで、あるシーンには「笑わせたい」ってメッセージが込められているとするじゃないですか。そうした際、僕ら役者はもっといろいろなことをしがちなんですけど、今回は基本的に余計なことは考えずシンプルにやっていきました。ワンカットの長回しが多かったですし、テンポ感みたいなものは綺麗にはまり過ぎると逆に面白くなくなったりするので、かみ合っていないことも含めて、そのままでいこう、と。

竹宮 すごく自然な面白さがありました。

中川 教室の片隅って、あんな感じじゃないですか。毎日顔を合わせている同級生とのやり取りは、温度を上げるというより、ぼそぼそ喋っていることが多くて。

竹宮 素晴らしかったです。仲の良さもにじみ出ていて、クラスにいる男子の面白さって、これなんだろうな、と思いました。ちなみに、演じられて大変だったシーンはありますか。

中川 それはやはり……水系、ですね(笑)。

竹宮 ああ……水系。川とか沼とか、出てきますからね(汗)。

中川 実は、川のシーンは死んでもおかしくないぐらい流れが速くて、僕は水中で命綱をはって、そうしないと本当に流されてしまう勢いで、さらに、アクションチームの方々が僕が流されたとき受け止めてくれるよう、下流で待機していてくれました。

竹宮 伺いながら、ご本人がやるものなんだ……と驚いています。

中川 確かに、スタントさんがやることも多いのですが、結果的に僕は丸一日、川に入っていました(笑)。

竹宮 無事に帰還されて、本当によかった。よくぞご無事で。

中川 前々日ぐらいに大雨が降って、流れがとても速い日だったんです。実際のシーンの雨は撮影用に降らせているんですけど、流れはほんもので。

竹宮 リアル濁流(笑)。

中川 まさに(笑)。でも、あのシーンは流されている中でも何度も果敢に潜っていかないといけない。そして、止められるだけ息を止めて、上がって、また潜って、を繰り返す。本当に大変でした。車もぐちゃぐちゃにしましたし、とても大がかりなシーンだったと思います。

中川さんの「クロス」

中川 竹宮先生にお目にかかったら伺ってみたかったのですが、この『砕け散るところを見せてあげる』は、どういう経緯でご執筆されたのですか。

竹宮 私は小説を書くときはいつも悩むタイプで、一か月も二か月も悩んで、なかなか書き出せず、その果てにプロットを出すんですが、この作品だけは違って、「あっ、この話を書こう!」と、突然アイデアが降ってきたんです。物語がどーんと降りてきて、すぐにプロットを作って、担当さんに見せて。書きたくて書きたくて仕方がなくて。執筆中はこの話の続きが書きたくて朝目覚めるぐらいの気持ちで。そうやって書いた小説なので、実のところ、なんでこの話を書いたのか自分でもわからないんです(笑)。

中川 そんなことがあるんですね……。

竹宮 他の作品を書いた後は、出てくるキャラクターに関して「彼はこの後に……」とか「彼女が成長すると……」とか、続きを書くわけではないのに考えてしまうことがあるんですが、この作品に関してはそうしたことが一切なくて。書きたいことを全部書き尽くした、という納得感が自分の中にあります。異質な小説です。

中川 初めて本を手にしたとき、まずタイトルの『砕け散るところを見せてあげる』が目に入って、「どんな話なんだろう?」と思ったのを覚えています。

竹宮 一体、何をだよ? って感じですよね(笑)。

中川 「見せてあげる」って、基本的には自分ではない誰かが言っているわけじゃないですか。その時点で興味を掻き立てられて、いろいろ想像しながら読んだんですけど、まず日常のコメディの部分が絶妙ですよね。絶妙なゆるさと、絶妙な空気感。そして、そこから一気に、ガンッと話で落とされる。日常と非日常が隣り合わせになっていて、でもだから、ショッキングなシーンがあっても、それが唐突じゃない。自然な流れで、ひとつの世界で、学校での、町での出来事として、物語がある。そういうところが、僕は好きでした。

竹宮 ありがとうございます。中川さんが「絶妙」と言ってくれたまさにそれを、今回の映画で最高の形で演じてくださっていたと思います。特に、中川さんが「クロス」って言われるシーンがあるじゃないですか。どうでもいいギャグのシーン。元は自分で書いたものなのに、私はもう何度も何度も「うふふ……クロス」と笑ってしまいました。

僕は清澄に似ている

中川 僕は主人公の清澄にすごく共感できる部分があって、彼は玻璃を救う「ヒーロー」であろうとして全力で「UFO」に立ち向かうわけですが、僕自身、学生時代からずっと「その他大勢になりたくない」という気持ちがとても強くて、たとえ周りの流れに逆行していても別にいいや、というタイプでした。だから彼の心情はわかるし、実際に清澄のようなことができるかについては安易に言えないのですが、僕も人に世話を焼きたいタイプですし、杏奈ちゃんの玻璃には、守ってあげたい、きゅんとなる気持ちがあって。

竹宮 後半の玻璃の佇まいには、胸を締め付けられるようなところがあります。石井杏奈さん、素晴らしかった。中川さんは「清澄に似ている」ということですが、実際はどんな生徒だったのですか。

中川 「他と違っていたい」という感情は小学校の頃からありましたね。たとえば、運動会のダンスのようなもので、和太鼓を叩ける役が一人だけあると「やりたい!」と手を挙げて、全員をまとめる立場になったり、授業参観があれば司会を率先してやったり。たぶん、目立ちたがり屋だったんです(笑)。

竹宮 それはヒーローに通じる感情なんでしょうか。

中川 うーん、そうですね。とにかく、人と一緒が嫌だったんです。みんなが使っている筆箱、みんなが見ているアニメ、みんなが好きなキャラクター。そうやって人と被るのがとにかく嫌だった。逆に「あいつがやっているから、アレいいな」って言われたくて。

竹宮 流行に乗る人ではなくて、流行を作る人になりたかったんですね。

中川 そう、作る人。そうです。

私のUFOは

竹宮 さっき中川さんも触れてくださいましたが、この作品には「UFO」というものが象徴的に出てきます。中川さんにも「UFO」ってありますか。ちなみに私のUFOは「次は何を書くんだ?」とずっと囁いてくるんです。それは物理的な力としての締め切りとかと一緒に(笑)。

中川 僕のUFOですか……なんだろう(笑)。強いて言うなら「作品」ですかね。それは映画でもドラマでも、何でもそうなんですけど、良いと思っても全然届かなかったり、逆に自分としてはあまり納得がいっていないものが思いもよらず上手くいったり。現場にいる人もいろいろで。作品の全貌って、やっぱりわからないんですよね。さらにその中で演じる自分には、誰も答えを教えてくれない。得体が知れない。だから、自分で何かを見つけていくしかない。

竹宮 でも、中川さんは常にそれを、作品を、「やりたい」んですよね。

中川 やりたい。この映画を観た方が「UFOって何だろう?」と思うように、作品がどうやって生まれて、どこに飛んで、どのように着地するのか、僕を含めた誰にもわからない。もっと言えば、誰が乗っているかもわからない。その人たちとうまくいくかどうかも。でも、だからこそ、乗りたくなるし、知りたくなるんだと思います。

竹宮 きっと、中川さんのUFOは、中川さんが演技から離れると攻撃してきますね(笑)。「お前は次、何をやるんだ?」という質問(攻撃)を、絶えずしてくる。

中川 その問いがあるから、次も乗りたくなるのかもしれません。何より、楽しいですから、演じることが。

竹宮 それはもう、業……ですね。

中川 はい、業です(笑)。

竹宮 私にとっての小説も同じで、だからどんなに苦しくても、怖くても、書くのをやめられないのだと思います。今日はたくさんお話ができて、楽しい時間でした。ありがとうございました。

中川 ありがとうございました。

(たけみや・ゆゆこ 作家)
(なかがわ・たいし 俳優)
波 2021年5月号より

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著者プロフィール

竹宮ゆゆこ

タケミヤ・ユユコ

1978(昭和53)年、東京生れ。2004(平成16)年、「うさぎホームシック」でデビュー。シリーズ作品として「わたしたちの田村くん」「とらドラ!」「ゴールデンタイム」、長篇小説に『砕け散るところを見せてあげる』『知らない映画のサントラを聴く』『あなたはここで、息ができるの?』などがある。

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