タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-
737円(税込)
発売日:2024/09/30
- 文庫
- 電子書籍あり
名だたる文豪たちが描く耽美と幻想の玉手匣。あなたの常識を揺さぶる十の怪作集。
ああおいしい。姫君の喉もたべてやりましょう――。おぞましい遊戯に耽る男と女(坂口安吾「桜の森の満開の下」)。大怪我を負った夫に堕ちてゆく妻(江戸川乱歩「芋虫」)。幼き兄妹が罪深き愛故に望む裁き(夢野久作「瓶詰地獄」)。泉鏡花、谷崎潤一郎、小栗虫太郎、太宰治ほか名だたる文豪たちによる、良識や想像力を越えた10の怪作。物語は今、あなたの網膜に焼き付き、忘却を拒む。
坂口安吾 桜の森の満開の下
芥川龍之介 影
江戸川乱歩 芋虫
泉鏡花 浮舟
折口信夫 身毒丸
小栗虫太郎 白蟻
谷崎潤一郎 刺青
夢野久作 瓶詰地獄
太宰治 駈込み訴え
夏目漱石 夢十夜
書誌情報
読み仮名 | タナトスノシュウシュウバコタンビゲンソウサクヒンシュウ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮文庫nex |
装幀 | 丑山雨/カバー装画、川谷康久(川谷デザイン)/カバーデザイン、川谷デザイン/フォーマットデザイン |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
判型 | 新潮文庫 |
頁数 | 352ページ |
ISBN | 978-4-10-180294-7 |
C-CODE | 0193 |
整理番号 | しー21ー111 |
ジャンル | 文芸作品 |
定価 | 737円 |
電子書籍 価格 | 737円 |
電子書籍 配信開始日 | 2024/09/30 |
著者プロフィール
芥川龍之介
アクタガワ・リュウノスケ
(1892-1927)東京生れ。東京帝大英文科卒。在学中から創作を始め、短編「鼻」が夏目漱石の激賞を受ける。その後今昔物語などから材を取った王朝もの「羅生門」「芋粥」「藪の中」、中国の説話によった童話「杜子春」などを次々と発表、大正文壇の寵児となる。西欧の短編小説の手法・様式を完全に身に付け、東西の文献資料に材を仰ぎながら、自身の主題を見事に小説化した傑作を多数発表。1925(大正14)年頃より体調がすぐれず、「唯ぼんやりした不安」のなか、薬物自殺。「歯車」「或阿呆の一生」などの遺稿が遺された。
泉鏡花
イズミ・キョウカ
(1873-1939)金沢生れ。本名・鏡太郎。北陸英和学校中退。1890(明治23)年上京、翌年より尾崎紅葉に師事。1895年発表の「夜行巡査」「外科室」が“観念小説”の呼称を得て新進作家としての地歩を確立。以後、「照葉狂言」「高野聖」「婦系図」「歌行燈」、戯曲「天守物語」等、浪漫的・神秘的作風に転じ、明治・大正・昭和を通じて独自の境地を開いた。絶筆「縷紅新草」も三島由紀夫の絶賛を受ける。生誕百年の1973(昭和48)年には金沢市により泉鏡花文学賞が創設された。
江戸川乱歩
エドガワ・ランポ
(1894-1965)本名平井太郎。三重県名張市生れ。早稲田大学政経学部卒。日本における本格推理、ホラー小説の草分け。貿易会社勤務を始め、古本商、新聞記者など様々な職業をへた後、1923(大正12)年雑誌「新青年」に「二銭銅貨」を発表して作家に。主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。1947(昭和22)年探偵作家クラブ(後の日本推理作家協会)の初代会長となり、1954年江戸川乱歩賞を設け、1957年からは雑誌「宝石」の編集にたずさわるなど、新人作家の育成に力をつくした。
小栗虫太郎
オグリ・ムシタロウ
(1901-1946)東京生れ。1933(昭和8)年、『完全犯罪』を発表し、本格的に創作活動に入る。翌年発表の大作『黒死館殺人事件』が脚光を浴びる。主な著書に『人外魔境』『二十世紀鉄仮面』『悪霊』(絶筆)などがある。
折口信夫
オリクチ・シノブ
(1887-1953)大阪生れ。民俗学者、国文学者。詩人・歌人としても活躍。柳田国男の弟子として民俗学の基礎を築く。1928(昭和3)年、雑誌「民俗芸術」を創刊。小説に『死者の書』、ほかに『口訳万葉集』などの作品がある。
坂口安吾
サカグチ・アンゴ
(1906-1955)新潟市生れ。1919(大正8)年県立新潟中学校に入学。1922年、東京の私立豊山中学校に編入。1926年東洋大学文学部印度哲学倫理学科に入学。アテネ・フランセに通い、ヴォルテールなどを愛読。1930(昭和5)年同校卒業後、同人誌「言葉」を創刊。1931年に「青い馬」に発表した短編「風博士」が牧野信一に激賞され、新進作家として認められる。少年時代から探偵小説を愛好し、戦争中は仲間と犯人当てに興じた。戦後、『堕落論』『白痴』などで新文学の旗手として脚光を浴びる。
太宰治
ダザイ・オサム
(1909-1948)青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
谷崎潤一郎
タニザキ・ジュンイチロウ
(1886-1965)東京・日本橋生れ。東大国文科中退。在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。当初は西欧的なスタイルを好んだが、関東大震災を機に関西へ移り住んだこともあって、次第に純日本的なものへの指向を強め、伝統的な日本語による美しい文体を確立するに至る。1949(昭和24)年、文化勲章受章。主な作品に『痴人の愛』『春琴抄』『卍』『細雪』『陰翳礼讃』など。
夏目漱石
ナツメ・ソウセキ
(1867-1916)1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。
夢野久作
ユメノ・キュウサク
(1889-1936)福岡県生れ。本名は杉山泰道(たいどう)。慶應義塾大学中退。陸軍少尉、禅僧などを経て、1926(大正15)年、雑誌「新青年」に投稿した「あやかしの鼓」が入選、37歳で探偵小説作家としてデビュー。夢野久作とは、夢想家という意の福岡の方言であり、父が「あやかしの鼓」を評して付けた。1935(昭和10)年、構想から十年以上の歳月をかけた大作、『ドグラ・マグラ』を上梓、後に高い評価を受け代表作となる。他、「少女地獄」「瓶詰地獄」「押絵の奇蹟」など、怪奇幻想小説の奇才と讃えられるも、47歳で逝去。