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現代米文学の父にしてユーモア溢れる冒険児マーク・トウェイン、最良の13編を新訳!

ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選―

マーク・トウェイン/著 、柴田元幸/訳

539円(税込)

本の仕様

発売日:2014/09/01

読み仮名 ジムスマイリーノトビガエルマークトウェインケッサクセン
シリーズ名 Star Classics 名作新訳コレクション
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-210612-9
C-CODE 0197
整理番号 ト-4-4
ジャンル 文芸作品、評論・文学研究
定価 539円
電子書籍 価格 539円
電子書籍 配信開始日 2016/03/18

現代アメリカ文学の父と謳われ、「トム・ソーヤー」「ハックルベリイ・フィン」の物語を生み出した冒険児マーク・トウェイン。その名を一躍世に知らしめた表題作「ジム・スマイリーの跳び蛙」をはじめ、生涯にわたって発表した短編小説、エッセイ、コラム記事の中から、トウェインの真骨頂である活気に溢れ、ユーモアと諷刺に満ちた作品を収録する。柴田元幸が厳選した13編の新訳!

著者プロフィール

マーク・トウェイン Twain,Mark

(1835-1910)アメリカのミズーリ州に生れ、ミシシッピー河畔で少年期を送る。『ミシシッピ河上の生活』『王子と乞食』『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリイ・フィンの冒険』等を発表し、19世紀のアメリカを代表する文学者となる。その自由奔放かつ正確な文章は後の作家に多大な影響を与えた。

柴田元幸 シバタ・モトユキ

1954(昭和29)年、東京生れ。米文学者・東京大学名誉教授。翻訳家。『生半可な學者』で講談社エッセイ賞受賞。『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞受賞。トマス・ピンチョン著『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞受賞。翻訳の業績により早稲田大学坪内逍遙大賞受賞。アメリカ現代作家を精力的に翻訳するほか、著書も多数。文芸誌「MONKEY」の責任編集を務める。

目次

石化人間
風邪を治すには
スミス対ジョーンズ事件の証拠
ジム・スマイリーの跳び蛙
ワシントン将軍の黒人従者――伝記的素描
私の農業新聞作り
経済学
本当の話――一語一句聞いたとおり
盗まれた白い象
失敗に終わった行軍の個人史
フェニモア・クーパーの文学的犯罪
物語の語り方
夢の恋人
訳者解説 柴田元幸

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年9月号より マーク・トウェインと名声

柴田元幸

ナサニエル・ホーソーン。ハーマン・メルヴィル。マーク・トウェイン。十九世紀アメリカ小説の三大重要人物である。いずれも文学史上に確固たる地位を有し、等しく揺るぎない名声を得ている。
とはいえ、生きているあいだ、名声とのつき合い方は、それぞれ違っていた。
まずホーソーン。長年、地元でひっそり知られる短篇集を出しているにとどまる作家だったのが、一八五〇年、初の長篇『緋文字』が売れて、全国的に名が広まった。その翌年、十四年前に出た第一短篇集の改訂新版を出し、その序文で、自分が「何年ものあいだ、アメリカで誰よりも無名の文人だった」ことをとうとうと述べている。どうも無名の方が性に合っているようで、名声はあまり心地よくなさそうだ。
次に、メルヴィル。南洋の人食い人種と暮らした体験に基づく、二十六歳で出した第一作『タイピー』(一八四六)で早くもそれなりの名声を得た。その後も海洋小説を書きつづけるが、実は一番「受けた」ところの体験談的要素はだんだん少なくなっていき、売れ行きもそれに比例して下降していく。それでも何とか売れ線を意識して書きつづけ、第六作『白鯨』(一八五一)も当初はそういう、かのエイハブ船長も出てこない、読みやすい鯨取り体験談ふうの一冊だったと思われるが、おそらくはホーソーンに出会ったことで、作品は一から構想し直され、書き直された。出来上がった作品の壮大な象徴性に反応した同時代読者はわずかだった。その後も知名度はますます下降し、一八九一年に没したときはほとんど忘れられた存在だった。
そして、マーク・トウェイン。ネヴァダの新聞記者として滑稽な報道文を書くことから出発し、ユーモア作家としての地位を着々と築いていった。世もいまや南北戦争後、大衆化の急速に進行する時代だった。旧態依然としたヨーロッパや、当時のアメリカの金権崇拝を皮肉った本なども出して、「マーク・トウェイン」の名声は次第に高まり、モジャモジャ頭に太い口ひげのルックスも全国的に知られ、やがては全身白のスーツもトレードマークに加わった。四十代に入って『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』などの名作を書き上げ、国民的作家としての地位は揺るぎないものとなった。
メルヴィルなどより、名声とのつき合いははるかにうまく行ったと言えるだろう。そもそも「マーク・トウェイン」という名からして筆名(「水深二尋」の意)である。本名はサミュエル・クレメンズ。もちろんクレメンズとトウェインの関係はつねに和気藹々としたものではなかったが、そうは言っても、マーク・トウェインという仮面を、サミュエル・クレメンズはおおむね上手に作り上げていった。こののち、トウェインと入れ替わるようにして、ジャック・ロンドンもまた、「ジャック・ロンドン」というキャラクターを上手に作り上げていく(そういえば二人ともゴールドラッシュでそれぞれカリフォルニア、クロンダイクに赴き、金は手に入れなかったが小説のネタはたっぷり手に入れた点も共通している)。世に理解されぬ孤高の英雄も立派だが、万人に愛されるキャラクターを作り上げた者たちにも独自の輝きがあるのがアメリカらしい。
あることないこと面白可笑しく書いていた新聞記者だったころ、誰もトウェインがアメリカを代表する文学者になるなんて思っていなかった。彼はただの文章コメディアンだった(まあそれをいえば、ホーソーンだってメルヴィルだって、一冊目から「将来は文豪」と思われたわけではないが)。そのただのコメディアンが書いた文章、これには独自ののびやかさ、大らかさがある。今回『ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選―』を編むにあたって、一番伝えたかったのもそうした面である。だから初期の、けっこう馬鹿っぽい(というか、ほとんど馬鹿そのものの)話を積極的に収めた。いっそ『マーク・トウェイン与太話選』『……ほら話選』と題してもいいんじゃないかと思ったくらいである。「こんな馬鹿話、つき合ってられるか」と思われる読者もいらっしゃるかもしれないが、「馬鹿話、案外いいじゃないか」と思われる方がより多いことを切に願っている。

(しばた・もとゆき 米文学者・翻訳家)

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