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世界一めげない男ロビンソン。無人島に28年。勇気と感動の冒険文学、待望の新訳。

ロビンソン・クルーソー

ダニエル・デフォー/著 、鈴木恵/訳

767円(税込)

本の仕様

発売日:2019/08/01

読み仮名 ロビンソンクルーソー
シリーズ名 Star Classics 名作新訳コレクション
装幀 Walter Paget/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-240131-6
C-CODE 0197
整理番号 テ-2-1
ジャンル 文学・評論
定価 767円

一六三二年、英国に生れた船乗りロビンソンは、難破して絶海の孤島に漂着した。ここから二十八年に及ぶ無人島生活が始まった――。不屈の精神で鳥や亀を獲り、野生の山羊を飼い慣らしてバターやチーズを作り、パンまでこしらえてしまう。ところが驚天動地の事態が……。めげない男ロビンソンを通して人間の真の強さを描き、世界中に勇気と感動を与えてきた、冒険文学の金字塔。待望の新訳。

著者プロフィール

ダニエル・デフォー Defoe,Daniel

(1660-1731)ロンドンに生れる。メリヤス商、煉瓦製造業、税務吏などの職を転々とした後、国教会を冷罵する論文を書いて投獄された。出獄後、雑誌を発行してジャーナリストとして活躍。1719年、59歳にして初めての小説『ロビンソン・クルーソー』を発表。大評判となり、以降、『疫病流行記』『ロクサーナ』等、数々の傑作を著した。

鈴木恵 スズキ・メグミ

1959年長野県生れ。早稲田大学文学部卒業。翻訳家。訳書にブルーエン『ロンドン・ブールヴァード』、A・アディガ『グローバリズム出づる処の殺人者より』、マックス・バリー『機械男』、アリエル・S・ウィンター『自堕落な凶器』、ギャビン・ライアル『深夜プラス1』、ジョー・ネスボ『その雪と血を』など。

目次

1 家を飛び出す
2 海賊につかまり、奴隷となる
3 ポルトガル船に救われる
4 無人島に漂着する
5 物資を運び、住まいを造る
6 日誌をつける
7 病にかかる
8 探検に行く
9 種を蒔く
10 島を縦断する
11 パンを作る
12 カヌーを造る
13 舟旅に出る
14 山羊を飼う
15 足跡を発見する
16 宴の跡を見つける
17 スペイン船が難破する
18 夢がかなう
19 フライデーを教育する
20 脱出の計画を立てる
21 捕虜を救い出す
22 反乱者たちがやってくる
23 船を奪還する
24 島をあとにする
25 ピレネー山脈を越える
訳者あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

ロビンソン・クルーソーの「時代精神」とは

出口治明

『ロビンソン・クルーソー』といえば、まず思い出すのは大塚久雄です。岩波新書の『社会科学の方法——ヴェーバーとマルクス』と『社会科学における人間』。この二冊の本で大塚さんが『ロビンソン・クルーソー』を論じて、非常に有名になった。僕もなるほどと腹に落ちた記憶があります。
 でも最初に読んだのは、講談社の『少年少女世界文学全集』全五十巻の一冊でした。小学校六年生か中学一年生でしたが、毎月配本されるのが待ち遠しいシリーズで、夢中になって読みましたね。

——無人島を舞台にした冒険物語ですが、最初の印象は?

 確かに冒険物語なんですが、僕の第一印象は、「えらいきっちりした人やな」と。例えば、無人島暮らしをするのに、彼は暦を作るんです。普通に考えたら、無人島では暦なんか必要ないじゃないですか。怠けものの僕だったら、食べて寝てのんべんだらりと暮らしますよ。ところが、この人はえらい働き者で毎日規則正しい生活をおくっている。禁欲的なまじめな人やなという印象でした。その疑問が大学に入って大塚さんの本を読んで、氷解したわけです。

——禁欲的というのはどういうことでしょう?

 要するにカルヴァン派の「予定説」です。カルヴァン派の時代精神が、ロビンソンに反映されているということだと思います。
 どういうことかといいますと、カルヴァンはご存じのように、宗教改革の指導者の一人です。もう一人はルター。この二人はかなり違います。平たく言うと、ルターは「聖書に帰れ」ということを主張した。聖書をキリスト教の基本として、ローマ教会に批判を加えたのです。
 当時、ローマ教会は「この世で善行を積めば天国に行ける。悪行をすると地獄に落ちるぞ」と教えていた。問題なのは、この場合の善行の象徴がお布施だったことです。善行か悪行かはローマ教会が判断するから、善行は即ちお布施を積めということだったわけです。
 これに対して、カルヴァンは凄かった。彼は、「天国に行けるかどうかは、人間が生まれる前に神様が決めている」と断言したのです。これがいわゆる「予定説」です。つまり、ローマ教会に行ってお布施を積んでも、何の意味もないということです。これは大変な爆弾でした。
 さらにもう一つ、大事なことがあるんです。
 それは、神様が天国行きを決めているなら、現世では何をしてもいいことになると肯定したことです。僕だったら、そんなら遊べばええやんと思いますが、カルヴァン派の人たちは違った。自分たちは神に選ばれた選良だから、天国に行くことは間違いない。だから、とことん働く。それが自分を選んでくれた神さまに叶う生き方だと考えるんですね。結果、非常に生真面目で、規則正しく、事業(金儲け)に邁進する人間が登場したのです。
 この点も、金儲けを基本的には悪と考えたローマ教会とは違う。カルヴァン派にとっては、働いて儲けることは悪でも何でもなく、神の財産だと考えるのです。何一つやましいことはないし、金儲けして何が悪いかということになる。その代わり、財産は社会全体のものだから分け与えないといけない。この根本精神は、資本主義にぴったりなんですね。

——作中でカルヴァン派の予定説だと思った箇所はありますか?

 例えば一四九頁。神について考えているくだりです。
「ごく自然に、すべてを創ったのは神だという答えが出てきた」
「神の創ったこの広い世界に起こることはすべて、神の知っていることであり、定めたことだということになる」
(傍点は出口氏による)
 これはカルヴァン派らしい考え方で、時代精神を見事に反映していると思いますね。勤勉で禁欲的で自信に満ち、自己と現状を肯定する新興階級。これが台頭するなかで、大英帝国が勃興していく。旧弊に囚われない自由で躍動的な時代です。
 ロビンソンが「蛮人」と遭遇したり、フライデーという黒人を啓蒙する場面、あるいは、物語の最後でまたしてもロビンソンが航海に乗り出して、冒険を始めるあたりにも、デフォー(1660-1731)が生きた時代精神というものが読み取れると思います。のちに産業革命が起きたとき、その主要な担い手はピューリタン(カルヴァン派)なんですが、ロビンソンは、まさに時代の典型を表しているんじゃないでしょうか。
 ちなみに、こうした現状礼賛型とは逆の典型が、スイフト(1667-1745)ですね。スイフトの『ガリヴァ旅行記』は時代に対する鋭い風刺に満ちています。
 三百年もの長い間、『ロビンソン・クルーソー』が読み継がれてきたのは、その時代の精神を知ることができる上に、ストーリーとしても面白くてわくわくするからでしょう。一人で無人島に流れ着くなんて、どう考えても面白い。人間は集団生活をするのが本性ですが、反対に孤独も求めます。つまり人間の普遍的願望を描いている。現代まで残っている古典が面白いのは、それぞれ確かな根拠があるんですよ。

(でぐち・はるあき APU〔立命館アジア太平洋大学〕学長)
波 2019年8月号より

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