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今月の表紙は、大家さんと僕。

波 2019年8月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2019/07/29

発売日 2019/07/29
JANコード 4910068230898
定価 102円(税込)
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【トマス・ハリス『カリ・モーラ』(新潮文庫)刊行記念特集】
[インタビュー]トマス・ハリス/猟奇の観察者
三橋 曉/老獪かつ若々しいハリスの最新作

野中 柊『猫をおくる』
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百田尚樹『夏の騎士』
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畠中 恵『てんげんつう』
末國善己/思わず胸が熱くなるほど若だんなの成長が感じられるシリーズ第十八弾

橋本 治『もう少し浄瑠璃を読もう』
内田 樹/「説明家橋本治」の真骨頂

高樹のぶ子『格闘』
小池真理子/瑞々しい焦れったさ

梨木香歩『やがて満ちてくる光の』
河田 桟/存在の軌跡を伝える航行灯

周 燕飛『貧困専業主婦』
藤田孝典/専業主婦の新しい実態

池田清彦『もうすぐいなくなります―絶滅の生物学―』
養老孟司/「絶滅」という物語

ウラジーミル・ナボコフ、沼野充義/訳 、小西昌隆/訳『ナボコフ・コレクション 賜物 父の蝶』
野中 柊/遥か彼方の

古川日出男『グスコーブドリの太陽系―宮沢賢治リサイタル&リミックス―』
柴田元幸/立ちどまらないことの値打ち

嶽本野ばら『純潔』
嶽本野ばら/平成に起きたこの国での本当の革命

鈴木成宗『発酵野郎!―世界一のビールを野生酵母でつくる―』
野田幾子/鈴木社長の“発酵人生”は挫折と再生の物語

山室寛之『1988年のパ・リーグ』
山田雅人/まだドラマが隠れている「10・19」

今村翔吾『八本目の槍』
細谷正充/“戦国”の新たな主役は、三成だ!

宮木あや子『手のひらの楽園』
森 ハヤシ/おじさんでも、飛んでいける楽園

フクチマミ/著 、大竹のり子/監修『マンガで読む 子育てのお金まるっとBOOK』
フクチマミ/マンガで読む 子育てのお金まるっとBOOK

萩尾望都『新装版 斎王夢語』
担当編集者/刊行秘話とデザイン画発掘!

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
[インタビュー]ブレイディみかこ/元・底辺中学校で出会うリアルな「世界」

【伊与原 新『月まで三キロ』新田次郎文学賞受賞記念対談】
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【今月の新潮文庫】
私の好きな新潮文庫 大矢博子/“嵐”を呼ぶ物語
 和田 竜『忍びの国
 越谷オサム『陽だまりの彼女
 高橋秀実『「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー

ダニエル・デフォー、鈴木恵/訳『ロビンソン・クルーソー』
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【コラム】
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片山恭一『世界の中心でAIをさけぶ』(新潮新書)
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新潮別冊「平成の名小説」
佐久間文子/長くて短い平成時代の文学

【連載】
ブレイディみかこ/ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 第20回
バリー・ユアグロー 柴田元幸 訳/オヤジギャグの華 第4回
保阪正康/昭和史の陰影 第8回
土井善晴/おいしく、生きる。 第10回
会田弘継/「内なる日本」をたどって 第2回
はらだみずき/やがて訪れる春のために 第8話
伊藤比呂美/URASHIMA 第15回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第113回
川本三郎/荷風の昭和 第15回
曽野綾子/人間の義務について 第7回

編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙は、大家さんと僕。

◎十年ぶりに立川志の輔師匠の「牡丹灯籠」を聞き(見?)ました。やっぱり凄い!
◎三遊亭円朝が明治初期にこしらえた「牡丹灯籠」は「全部ると三十時間かかる」(志の輔さん)長い噺。これを実に巧みな手(どんな手か、ぜひ実際の高座をご覧下さい)を使って、三時間ほどで演じ切ります。
◎圧巻は「全篇の主人公と呼んでいい」という伴蔵の人物造形。このウダツの上がらない中年男が少しずつ悪に染まっていくのですが、〈幽霊に「お札をはがす代りに百両くれ」と言う〉〈女房お峰の口封じをする〉といった〈決意〉をする時の心理描写が、犀利で繊細で迫真性に富んで、鳥肌もの。この描写で人物像に厚みが出、いわば悪役としてので、女房を殺した後で某チンピラ(しかし重要な役)に啖呵を切って追い返す場面も説得力を持ちます。ここは正岡いるるが「少うし悪党振りがよ過ぎやしないか」と疑問を呈した箇所ですが、志の輔さんの演じ方だと違和感がない。
◎志の輔さんの師匠立川談志家元も、なぜ魚屋のお上さんが「夢よ」と亭主を騙したか、なぜ長兵衛が五十両を文七にあげるのか、なぜ亀坊が久しぶりに再会した父親から五十銭を貰おうと思うのか等々、〈決意〉の心理を語るのが巧みでした。家元が妬むくらいの志の輔さんの描写力に、これが〈芸の伝承〉だなあと感動したのです。
◎徒弟制度などない小説の世界では、そんな伝承の例をなかなか思いつきません。ただ、阿川弘之さんに「」という短篇があって、これは師である志賀直哉が書いた「小僧の神様」への見事なアンサー・ソング。自我への拘りや文章の勁さも師譲りだし、何より〈芸〉を感じさせる名品です。
▽次号の刊行は八月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。