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死ぬのは、やはり僕です。平成の終わり、恋と革命に萌えた若き命。作家生命を賭けた大長編。

純潔

嶽本野ばら/著

3,190円(税込)

本の仕様

発売日:2019/07/29

読み仮名 ジュンケツ
装幀 松田行正+日向麻梨子/造本
雑誌から生まれた本 新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 508ページ
ISBN 978-4-10-466006-3
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 3,190円

東日本大震災の翌年、僕は京都から上京した。君は大学のキャンパスで独り本当の幸せと政治闘争を訴え、浮きまくっていた。啄木の短歌を諳んじるような純朴な僕はアニメ研究会に引きずり込まれ、ヲタの洗礼を受けつつ、君に惹かれ、身を投じていく。「新潮」掲載から改稿四年余、時代閉塞と生きにくさを打破する政治恋愛小説。

著者プロフィール

嶽本野ばら タケモト・ノバラ

京都府生まれ。2000年『ミシン』で小説家デビュー。『エミリー』と『ロリヰタ。』が三島由紀夫賞候補に、『下妻物語』が映画化(中島哲也監督)され、好評を博した。著書に『シシリエンヌ』『タイマ』『傲慢な婚活』『落花生』などがある。

インタビュー/対談/エッセイ

平成に起きたこの国での本当の革命

嶽本野ばら

 レジスタンスと似て非なる言葉にプロテスタントが、ある。前者は反抗・抵抗であるが後者は抗議の意味を持つ。
 今回僕が上梓した『純潔』は2013年に脱稿していたものを紆余曲折の後、単行本化したものなので近未来である筈が、もう一つの近過去という設定になってしまった。
 なので読者の違和感を考慮し、あとがきを追加することにしたのだけれども、当然、脱稿当時と令和元年、現在の間に起こった出来事を振り返らなければならなくなった。そしてISILよりも自分を驚かせたのは今は上皇となった一二五代天皇の退位表明であったと書いたのですが、意図がイマイチ伝わらない疑念が生じてきたので、この場を借りて記しておきたいと思います。
 何故、天皇は自ら退位の意思を伝えたのか? 高齢故に職務を全うするのが難しくなった――。そうじゃないだろう。僕は想像する。天皇は激怒した結果、捨て身でプロテスタントを行ったのではなかろうか……?
 貴方自身が天皇である場合をシミュレーションしてみればいい。戸籍や苗字すらない、国家の純然たる象徴として機能することのみを義務付けられた人間が、どれだけ個人的な意見や心情の開示の制約を受けるのかを。政治的な発言は一切、認められない。ロッテリアよりマクドナルドが好きだともいえず、メルカリの匿名売買すら慎まなければならない。平和を願うとはいえようと、戦争をする国はよくない――と口にするのは許されない。そのような人間が政治に異議を唱えようとする場合、何が可能か?
 いいですか、彼は社会への意趣返しの表明として新幹線の中で灯油を被り、焼死してみせることすらやれないのですよ。恐らく自殺そのものは天皇にとって最大の禁忌だろうし、仮にやったとして秘密裏に処理されるでしょう。なにせ国家の象徴とはいえ戸籍すらない人間です。隠蔽はとても容易い筈です。そこで天皇は考えた。自分の抗議を伝達する唯一の方法は退位の表明しかないと。
 低所得者の現状なり超過労働の現状を天皇が把握することはありません。当然です。それでも、限定された世界の中からではあれども、彼は日本の政の中枢を見続けてきた。
 彼は、自らの退位に拠り現政権に対し、貴方達は国民の為に命を張っているのか? を問うたのです。幼い頃から私が眼にしてきた政治家達は、私利私欲に走ることもしたし、間違った判断もした。しかし歴代の内閣は命を賭して任務に就いてきた。これはリーダーシップを託された者の最低限の礼節だろう。私は今の貴方達に全責任を負おうとする気概を見出せない。象徴である私は何の権限も持たないが、その脆弱な姿勢に対し激しく抗議をする!
 政治の中枢に携わる人間をもっとも近くで、しかし利害関係なくその人となりをフラットに観察してきたのは、天皇だけかもしれません。
 僕は天皇制の廃止を望むのだけれども、このようなプロテスタントに出た上皇個人に対しては強いシンパシーを感じるし、この人の代の元号を共に生きられて良かったと思います。少なくとも私の代にこの国が戦争をしなかったことに安堵している――と前の誕生日に際して彼はいいました。僕が書いたのは、天皇の称号の分譲に拠ってこの国の中に独立自治の国家を成立させるという危険思想の革命軍の物語ですが、実は一番、読んで感激をしてくれるのは上皇かもしれない……とすら思う。
 今年のゴールデンウィーク後半、MILKに行く為に原宿に寄ったのだけれど、原宿駅周辺にとんでもない人混みが出来ていた。新元号になったから明治神宮へという観光客の群れだ。今回の退位に対し平成への黙祷を捧げることはあれど、どうして物見遊山がやれるのだ? この愚かな国民のことを想ってくれた上皇の孤独な抗議に僕は何時いつまでも敬意を表そう。
 心に誓い、この日、MILKで買ったのはフラワープリントのTシャツでした。上皇よ、何時か一緒に蜜蝋のキャンドル、作ろうぜ。ハゼ釣りに行こうぜ。あんたのおかげで未来は少しよくなる筈さ。あんたは最高のエンペラーだったよ、ラブ&ピース!

(たけもと・のばら 小説家)
波 2019年8月号より
単行本刊行時掲載

イベント/書店情報

『純潔』思想・作品リスト

嶽本野ばら『純潔』には、思想、文学、そしてオタクカルチャーに関する夥しい言及が存在する。読者の一助とするため、言及されている思想及び作品リストをここに一挙公開する。なお、人物名・作品名の表記に関しては、一般的もしくは正式な表記に従っており、必ずしも『純潔』作中の表記に従っていないことをお断りしておく。

思想・政治運動

共産主義
史的唯物論
弁証法
資本主義
リバタリアニズム
国粋主義
プラグマティズム
尊王攘夷
トロツキズム
アナーキズム
反原発集会
三里塚闘争
ラッダイト運動
イスラム教
天皇制

思想家

シャルル・フーリエ
アルトゥル・ショーペンハウアー(『幸福について』)
カール・マルクス(『資本論』)
マルクス+エンゲルス(『共産党宣言』)
ジャン=ジャック・ルソー(『人間不平等起源論』『社会契約論』)
ジョン・スチュアート・ミル(『自由論』)
毛沢東
レフ・トロツキー
マルティン・ハイデガー
ウラジーミル・レーニン
ルネ・デカルト
イマヌエル・カント
フランシス・ベーコン
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル
フリードリヒ・ニーチェ
セーレン・キェルケゴール
ジークムント・フロイト
カール・グスタフ・ユング
ジェームズ・ラブロック
マハトマ・ガンジー
マーティン・ルーサー・キング
ラルフ・アバナシー
ロバート・ノージック
河上肇(『貧乏物語』)
田中正造
井上日召
吉田松陰

文学

石川啄木
ドストエフスキー(『悪霊』『未成年』『白痴』『罪と罰』)
種田山頭火
オスカー・ワイルド(『幸福な王子』)
宮沢賢治(『銀河鉄道の夜』「雨ニモマケズ」)
与謝野鉄幹
相田みつを
三島由紀夫
森鷗外
芥川龍之介

アニメ

『魔法少女まどか☆マギカ』シャフト
『涼宮ハルヒの憂鬱』京都アニメーション
『魔法少女リリカルなのは』セブン・アークス
『STEINS:GATE』WHITE FOX
『NARUTO -ナルト-』ぴえろ
『けいおん!』京都アニメーション
『AKB0048』サテライト
『新世紀エヴァンゲリオン』ガイナックス
『ドラえもん』日本テレビ動画、シンエイ動画
『アクセル・ワールド』サンライズ
『ガールズ&パンツァー』アクタス
『侵略!イカ娘』ディオメディア
『探偵オペラ ミルキィホームズ』J.C.STAFF
『ストライクウィッチーズ』GONZO
『らき☆すた』京都アニメーション
『テニスの王子様』トランス・アーツ
『フランダースの犬』ズイヨー映像、日本アニメーション
『宇宙戦艦ヤマト』オフィス・アカデミー
『黄金バット』第一動画
『けろっこデメタン』タツノコプロ
『Fate/Zero』ufotable
『それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』ティーアップ、J.C.STAFF

ゲーム

『テトリス』テトリス・ホールディング
『どうぶつの森』任天堂
『Kanon』Key
『AIR』Key
『D.C. 〜ダ・カーポ〜』CIRCUS
『ひぐらしのなく頃に』07th Expansion
『ラブプラス』コナミデジタルエンタテインメント
『モンスターハンター』カプコン
『放課後女装☆ネットアイドル~皆の為の性ペット~』おとこの娘倶楽部
『おとラブ~女装美少年限定!~』おとこの娘倶楽部
『FINAL BREAKER』

メディアミックス

『シスター・プリンセス』(公野櫻子・著『シスター・プリンセス——お兄ちゃん大好き〈8〉鈴凛』)
『遊☆戯☆王』(高橋和希・著『遊☆戯☆王』)

アイドル

フレンチ・キス(AKB48)『でもでもの涙』
乃木坂46『おいでシャンプー』

映画・雑誌、その他

映画『大魔神』
テレビ番組『ウルトラマン』
テレビドラマ『桃太郎侍』
『ラジオライフ』三才ブックス
『週刊プレイボーイ』集英社
一澤信三郎帆布
コミックマーケット

リスト作成:川本直(文芸評論家)

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