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そこでは猫がやさしく弔われ、星の形をした、あるものが手渡される。喪失を抱えるすべての人に捧げる連作小説。

猫をおくる

野中柊/著

1,870円(税込)

本の仕様

発売日:2019/07/18

読み仮名 ネコヲオクル
装幀 牧野千穂/装画、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 222ページ
ISBN 978-4-10-399906-5
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,870円

餌付けをしているわけでもないのに猫が寄りつき、「猫寺」と呼ばれていた都内の木蓮寺。若き住職の真道は高校教師だった藤井に声をかけ、猫を専門に扱う霊園を開設する。愛猫を看取ったばかりの瑞季、そして真道と藤井もまた誰にも明せない悲しみと孤独を抱えていた。猫と共に生き、猫に生かされてきた男女の祈りと再生の物語。

著者プロフィール

野中柊 ノナカ・ヒイラギ

1964年生まれ。立教大学卒業後、渡米。1991年、ニューヨーク州在住時に「ヨモギ・アイス」で海燕新人文学賞を受賞して作家デビュー。小説に『小春日和』『ダリア』『プリズム』『昼咲月見草』『あなたのそばで』『公園通りのクロエ』『波止場にて』など、エッセイ集に『きらめくジャンクフード』など、童話や絵本に『パンダのポンポン』シリーズ(既刊10巻)、『赤い実かがやく』『ヤマネコとウミネコ』『本屋さんのルビねこ』シリーズ(既刊2巻)など著書多数。また『お馬鹿さんなふたり』(レベッカ・ブラウン著)『すてきなおうち』(マーガレット・ワイズ・ブラウン著)などの翻訳も手がける。

書評

『猫をおくる』を読んだ日

谷川俊太郎

各種植物がひしめく庭に
どこから来たのか見知らぬ felis が
ストップモーションするのが見えた
内側から硝子戸をノックすると
視線が私に向く
思い邪なし(論語)の眼

猫という名
人間という名があるが
同じ生きもの同士
今というつかの間
互いに無名でいたいと思った

柊という植物に身をやつして
何気ない散文で
内心の沈黙を裏打ちしているヒト
猫が好きなんですね

私が知り合った猫は多くない
私を批判し続けたクロ
雑巾いろのフネ
いつも独り言を言っていたミーニャ
スヌーピーの仇敵ファーロン

「猫のアタマは
言葉じゃないものでいっぱいだ
私のアタマは
言葉がないとからっぽだ」
これは論語ではない私の四行

「どんな猫でも詩になるのさ」
と書いたのは海の向こうの詩人だが
猫が詩の側にいるとすれば
我々人間はおおむね散文の側にいる
それは私たちが言葉に頼って生きているから

猫の声は言葉ではなく音楽に属しているので
詩にはなっても散文にならない
柊さんは現世に生きる人間を描きながら
少しずつそこからはみ出して いのちの
時を超えた宇宙へと滲んでいく気配がある

本を閉じて玄米茶とそばせんべい
本の中の人たちがまだそこにいるのがわかる
窓からの風が快い

(たにかわ・しゅんたろう 詩人)
波 2019年8月号より
単行本刊行時掲載

目次

スノーノイズ
ゴールデンレコード
黒白の猫
星降る夜
ブランケット
いくたびも

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