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日々の生活にちりばめられた星屑のような輝きを、掬い上げることができたなら――。

そら いろいろ

小澤征良/著

1,320円(税込)

本の仕様

発売日:2008/02/29

読み仮名 ソライロイロ
雑誌から生まれた本 から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 159ページ
ISBN 978-4-10-306551-7
C-CODE 0095
ジャンル エッセー・随筆
定価 1,320円

あの日見上げた空の色、路傍で摘んだ花の蜜のほのかな甘さ、見知らぬ人からもらった笑顔……。たとえありきたりに見える毎日にだって、ともすれば見過ごしてしまうほど小さいけれど、かけがえのない喜びがたくさん隠れている。私たちの身近にこぼれ落ちている「幸福の種」を、みずみずしく柔らかな感性で拾い集めたエッセイ集。

著者プロフィール

小澤征良 オザワ・セイラ

米国サンフランシスコ生まれ。上智大学比較文化学部卒業後、メトロポリタン歌劇場首席演出家デイヴィッド・ニース氏につき、オペラ演出を学ぶ。2002年『おわらない夏』(集英社)でデビュー。著書に小説『蒼いみち』(講談社)『しずかの朝』(新潮社)、エッセイ集『思い出のむこうへ』(筑摩書房)『そら いろいろ』(新潮社)など、訳書に『アブディーの冒険物語』(集英社)などがある。近刊アンソロジー『いつも一緒に』(新潮文庫)『君と過ごす季節』(ポプラ文庫)に寄稿。

書評

波 2008年3月号より 拝啓 小澤征良さま

松田哲夫

征良さん、こんにちは。すっかりご無沙汰が続いてしまい、申し訳ありません。
その間、折々に発表されるエッセイを拝読し、元気に飛び回っていらっしゃる様子を想像していました。このたび上梓されましたエッセイ集『そら いろいろ』も、早速、読ませていただきました。
征良さんの文章に触れるたびに、最初の本『おわらない夏』を読んだ時の新鮮な感動が蘇ってきます。この本は、征良さんの少女時代の思い出の記でしたが、まず、のびのびと綴られた文章に魅了されました。みずみずしい感覚が捉えた、夏の間だけ活況を呈する町タングルウッド。その姿をくっきりと描き出し、色鮮やかな風景の中に、ぼくたちを連れていってくれました。そこには、その華やぎとは対照的に、征良さんを襲う喘息発作の苦しさも綴られていました。「水から引き上げられた魚のようだ」という表現を読んで、ぼくも息苦しくなったことを覚えています。
この本が刊行された年の年末、「王様のブランチ」の「BOOK大賞新人賞」に征良さんを勝手に選ばせていただきました。賞状をお渡しするときに、初めてお目にかかりましたね。第一印象は、スラリと姿勢のいい方だなというものでした。しばらく話していると、クリクリと動く大きな瞳が印象的で、大人の落ち着きと少女の好奇心をあわせもつ、魅力的な女性だということがわかりました。
これを機会に、エッセイ集『思い出のむこうへ』をまとめさせていただくことになりましたね。雑誌などに掲載されていた文章には荒削りなところもありましたが、若々しさと勢いが感じられました。そして、これまで誰も書いたことのないような個性的な表現も見受けられました。征良さんは、目と耳の感覚が優れている人なんだな、と思いました。
気がつくと、それから四年経ってしまいました。征良さんの新著『そら いろいろ』を読んでいると、ご家族、ご友人など、前著に登場した人たちのその後が書かれていて、旧知の友に再会したような喜びがあります。
そして、その文章が、さらに洗練されているのが印象的でした。例えば、書名にもなっている「空」を表現する繊細な言葉たちは、一つ一つ、胸に染み渡ってきました。
「(室内プールに浮かびながら……)頭上の大きな窓ガラスには夏を迎えようとしている青空が広がり、ところどころにオモチャみたいな白い雲が、やはり、ぽかんと浮いている。」
「(愛犬ブチカと散歩しながら……)水平線にぽわん、と漂う夕焼けは薄い橙色になり、夜になろうとしている深い蒼空に消えてゆく。」
「(スペインの空港に着いたとき……)夜遅く到着すると、藍色を深くした空には大きく輝く星が一つ、ぽこんと浮かんでいた。」
色彩や形状を細かく描写する文章のなかに、「ぽかん」「ぽわん」「ぽこん」という擬態語が、そっと添えられています。空を見上げて、ぼんやりと眺めている征良さんの姿が彷彿としてくるではありませんか。
そうそう、征良さんに賞を贈ったころ、ある賞の受賞パーティでお父さん(小澤征爾さん)にお目にかかりました。ぼくが名乗ると、抱きつかんばかりに近づいてきて、真剣な眼差しで、「征良は、ちゃんと文章を書いていけるだろうか。もっともっと基礎訓練が必要なのでは」と問いかけてこられました。
その時、ぼくは慌てて「大丈夫です。征良さんは、自分なりの言葉と表現を持っています。原稿は書いていなかったかもしれませんが、日記や手紙などを書き続けていたことが基礎訓練になっています」と答えさせてもらいました。新しいエッセイ集を読ませていただいて、このときのぼくの答は間違っていなかった、と改めて思いました。
征良さんがこれから書かれる原稿が、ますます楽しみです。ぼくにできることがあれば、微力ながらお手伝いさせていただきます。くれぐれも健康にだけは気をつけて下さい。


(まつだ・てつお 編集者)

目次

そら いろいろ
消えない風景
プール
時間のながれ
自由
はっきりしない時間にて
深い山のなかで
大切な時間
向き合う、ということ
パーフェクトであること
まち
うつくしい星で
II
本屋さん
いまを生きる
まっすぐゆく!
チューンナップ
歌舞伎
スポーツマン魂
美味しい時間
思い出のザンザーラ
こころの脱ガサツ!
小さな事が作る大きな変化
小鹿田焼
“選ぶ”ということ
III
オーケストラ
表現するということ
ただいまリハーサル中
キャラバン in 岩手
音の波に揺れる
タングルウッド
赤い靴下をはいて
冬のはじまりは文化祭
Happy Music!
ロシアでおもう
トリビュート
IV
出会いって……
え。いいの?
昨日から明日へ
繋がりのなかで
偶然と必然のこと
たった一人の人として
Pura Vida
ゆるめる贅沢
ダライ・ラマいわく……
掬う
心のなかの自然~オオカミに出会う旅
あとがき

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